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  <title type="text">藤棚</title>
  <subtitle type="html">種運命のシンレイ・レイシン他、過去に書いたSSのログです。</subtitle>
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  <updated>2013-03-30T13:21:50+09:00</updated>
  <author><name>藤</name></author>
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    <published>2013-04-07T09:51:20+09:00</published> 
    <updated>2013-04-07T09:51:20+09:00</updated> 
    <category term="シン＆レイ" label="シン＆レイ" />
    <title>たとえば、こんな未来　【if  ～ アスカ隊長とバレル隊長】</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
静まり返ったブリーフィングルーム内に、壇上に立ち、訓練内容の説明をするレイの落ち着いた声だけが響き渡る。<br />
シンは、後ろ側の出入口付近に腕を組んで立ち、レイの淡々とした説明を、背筋を伸ばして熱心に聞く、パイロットスーツ姿の部下達の背中を見渡した。<br />
今日は、アスカ隊とバレル隊の着任１年未満の、通称『ヒヨコ』達によるモビルスーツ合同訓練だった。各部隊、「赤」４名、「緑」４名ずつの計１６名で、４班に分かれての模擬戦闘訓練となる。ルールは簡単だった──ペイント弾を装備したザクウォーリアへ搭乗し、撃たれた者は離脱する。制限時間内に、多く残っていた隊の勝ち。負けた隊は、ペイントで汚れた機体の清掃という罰が下る。<br />
「──説明は以上だ。質問は？」<br />
資料から目を離し、レイは無表情のまま、緊張するヒヨコ達へ鋭い視線を向けた。一瞬だけ、ブリーフィングルーム内の温度が下がったような気がして、シンはひっそりと苦笑いを浮かべた。<br />
「質問がないなら、直ちに演習場へ移動せよ」<br />
資料を小脇に抱え、レイがブリーフィングルームから出たその瞬間に、ヒヨコ達は、はああ、と大きく息を吐く。先程とはうって変った、彼らの弛緩した背中を見て、シンは思わず吹き出した。<br />
「お前らさ、そんなにビビるなよ。あいつ、ああ見えて、結構繊細だからな。今のが聞こえてたら、傷つくぞ──たぶん」<br />
シンは、苦笑いを浮かべたまま言う。<br />
緊張から解放されたヒヨコ達の間から、微かな笑い声が洩れた。<br />
<br />
演習場の司令室にレイと二人で籠り、モニターディスプレイに映されたモビルスーツの配置と戦況を確認する。<br />
第２班、４機対４機の訓練で、残存勢力は、バレル隊４機、アスカ隊１機で負けは明白だった。第１班も、既に大敗を喫していた。<br />
「──ああッ！イライラする」<br />
シンはブーツの踵で床を蹴る。<br />
「お前の隊は、チームワークがなっていない。個人の潜在能力は高いが、各々が勝手な動きをする。まあ、トップの性格と指導力の差というやつか。順当な結果だな。……シン、どこへ行く？」<br />
「便所」<br />
シンは一言だけ返して、司令室を出た。その足でモビルスーツの待機場へ向かい、一番手前のザクウォーリアへ向かって手招きをする。既に機体に乗り込んでいたパイロットは、コクピットハッチを開け、ウインチのワイヤーで地面へ降りて、ヘルメットを取り、シンに向かって敬礼した。<br />
「代われ」<br />
「はい？」<br />
「オレが出る」<br />
呆気にとられている部下をその場に残して、シンは、軍服のままザクウォーリアへ乗り込んだ。計器類をざっと確認し、ベルトを締め、第４班に紛れて待機する。<br />
第２班に続き、第３班も、アスカ隊の最後の１機が撃たれて、負けた。<br />
「３分で片付けてやる」<br />
呟いて、シンは、スタートの合図と同時に、スロットルを全開にして高速レンジに入れた。<br />
合図と共に凄まじいスピードで移動する１４番機をモニターして、レイは目を細める。<br />
『１４番機……あの動き──シン！お前！何をしている！』<br />
レイからの通信を聞き、演習場の、１４番機以外の全てのザクウォーリアの動きが鈍った。<br />
「何のことでありますかー？」<br />
言いながら、シンは尚も高速移動を続け、脚が完全に止まっている敵方の一機に照準を合わせた。<br />
「はい、１機撃墜」<br />
コクピットハッチが赤く染まったのを確認して、シンは、レーダーで機影を捕捉する。<br />
残り３機に囲まれ、射程圏内ギリギリのラインから、３機同時に狙撃してくるのを察知して、シンはスラスターを噴射させ、急激上昇してそれを回避──隙ができた３機へ向けて、ペイント弾を発射した。<br />
「チッ、１機外したか」<br />
シンは舌打ちをして、銃弾を回避した最後の１機の行方を捜す。<br />
『──本当に、同じ機体？』<br />
残った１機のパイロットの独り言が通信に乗ってコクピットへ届いた。<br />
「あと１機……──ッ！後ろ！？」<br />
機影に気付き、シンは即座に振り返る。遅かった──シンが奥歯を強く噛んだその瞬間に、コクピット内のモニターの画面が真っ赤に染まった。<br />
残りの１機から発射された２発のペイント弾は、１４番機のメインカメラとコクピットの位置を直撃していた。<br />
「この──」<br />
『シンッ！ビームトマホークを抜くな！部下を死なせる気かッ！この、馬鹿がッ！』<br />
１４番機の不穏な動きを逸早く察知したレイが、声を荒げる。<br />
シンの機体が動きを止めたことを確認し、レイはひとつ溜息をついた。<br />
『シン、お前の負けだ。速やかに離脱せよ』<br />
先程とはうって変わった、レイの静かな声がコクピット内に響き、シンは舌打ちをした。<br />
「──了解」<br />
シンは大げさに息を吐き、<br />
「覚えてろよ」<br />
低く呟いて、ザクウォーリアのモノアイを、立ち尽くす勝利者へ向けた。<br />
<br />
ブリーフィングルームへ戻り、壇上に立ったレイは、眉間に皺を寄せて大きな溜息をつく。<br />
「馬鹿な闖入者のせいで状況が混乱したが、死人が出なかったのは幸いだった」<br />
レイは『馬鹿』を強調し、鋭い光を放つ青い双眸を、後ろ側の出入り口付近に立つシンへ向けた。<br />
「ところで──１４番機を墜としたのは、誰だ？」<br />
レイは、背筋を伸ばして真っ直ぐに前を見るヒヨコ達の顔を見渡した。<br />
「……じ…自分であります」<br />
真ん中の席に座っていた茶髪のヒヨコが、恐る恐る手を上げる。<br />
「そうか──ザフトのスーパーエースを撃墜した気分は、どうだ？」<br />
レイは、ふっと頬を緩め、口元に笑みを浮かべながら問うた。<br />
「はいッ、サイコーであります！」<br />
喜びを滲ませた声を上げる彼の背中を眺めて、シンは苦笑いした。<br />
「バレル隊は、ここで解散。各々の任に戻れ。アスカ隊は機体の清掃──もちろん、隊長もだ。わかったか？」<br />
「はいはい」<br />
ヒヨコ達が返事をするよりも早く、シンが口を開く。<br />
「返事は、一度だ」<br />
「りょーかーい」<br />
シンが首の後ろを揉みほぐしながら力の抜けた返事をすると、ヒヨコ達の間に微かな笑い声が洩れた。<br />
<br />
ヒヨコ達が去ったブリーフィングルームに、静けさが訪れる。<br />
「確か、あいつだったな」<br />
レイは、資料の片付けをしながらぽつりと呟いた。<br />
「何が？」<br />
「着任してすぐに……伝説のエースパイロットの部隊に配属されて嬉しいと言っていたのを聞いた。第一志望はアスカ隊だったらしいがな」<br />
「何でまた、オレ？」<br />
「さあな、動きが派手だからじゃないか？」<br />
「はぁ？意味わかんねえ──でも…伝説のエース、ねぇ……」<br />
シンは天井を仰ぎ、はあ、と息を吐いた。<br />
「大切なもの、全部守れなかったのに、伝説だなんて……」<br />
「全部……無茶を言うな──だが、お前はそう言って、本当にすべてを守ろうとする……それが、お前の強さか」<br />
「何言ってんだ？」<br />
「別に。思ったことを口にしたまでだ」<br />
レイは肩を聳やかし、唇の端っこで笑う。<br />
「……しかし、アイツの操縦の仕方がお前と似ているということに気付いてはいたが……うかうかしていると、追い越されるな」<br />
レイは顎に手を当て、微かに眉をひそめて呟いた。<br />
「ああ、それ、オレも思った。銃弾を回避してから、オレの後ろに回り込むのがすごく速くて、正直、驚いた……まあ、赤だから当然なのかもしれないけどな」<br />
着任１年未満のヒヨッコだと油断していたとはいえ、もしもあれが実戦だったなら、確実に死んでいただろう。シンは、先程の屈辱を思い出し、小さく舌打ちをした。<br />
「それより、レイ、明日非番だろ？飲みに行かないか？」<br />
「ああ、構わない。しばらく会えなくなるからな」<br />
「なんで？」<br />
「明後日から半年間、バレル隊は、マハムール基地勤務だ」<br />
「聞いてねぇぞ」<br />
「言っていないから、当然だろう」<br />
レイは、しれっとした表情で答える。<br />
「ああそうでした。お前はそういう奴だったよ。友達がいのない奴ってよく言われるだろ」<br />
「何を、今さら──」<br />
レイは頬を緩めて、薄く開いた唇の隙間から、ふっと息を吐いて笑う。<br />
「じゃ、罰ゲームが終わったら連絡する」<br />
シンはすれ違いざまに、同じ高さのレイの肩に、わざと自分の肩をぶつけた。<br />
「わかった」<br />
言いながらレイは振り返り、仕返しに、シンの太腿の裏をブーツの硬い爪先で蹴り上げる。<br />
「痛えなっ！何すんだよ」<br />
「先に手を出したのはお前だ」<br />
レイは資料の束を小脇に抱えて、シンを一瞥し、微かに笑いながら背中を向けて立ち去った。<br />
<br />
モビルスーツ格納庫には、ところどころ赤く染まったザクウォーリアが１６機、整然と並んでいた。見渡して、シンが搭乗した１４番機が一番汚れていることに気付き、舌打ちした。<br />
「隊長！」<br />
ヒヨコ達が背筋を伸ばし、敬礼する。シンは軽く手を上げて、それに応えた。<br />
「引っかき回して、悪かったな」<br />
シンは、訓練中に機体を奪ってしまった隊員に詫びる。<br />
「いえ。伝説のエースパイロットの操縦技術と、バレル隊長の意外な一面が見られて、トクした気分であります」<br />
「意外？……ああ、『シンッ！ビームトマホークを抜くな！部下を死なせる気かッ！この、馬鹿がッ！』ってやつか──今の、似てたろ？」<br />
ヒヨコ達は腹を抱えて大笑いしながら、大きく頷いた。中には、脱力して、コンクリートの床に座り込んで肩を震わせている奴もいる。<br />
「見た目ほど、レイは、クールでも無関心でもないってことさ──よし！ちゃっちゃと終わらせて帰るぞ！」<br />
シンが声を張ると、<br />
「うっす！」<br />
ヒヨコ達は、デッキブラシを高く掲げ、威勢の良い返事をする。<br />
シンは上着とブーツを脱ぎ捨て、スラックスを膝まで捲り上げた。デッキブラシと高圧力のホースを握ってモビルスーツ整備用昇降機に乗り、上昇しながら、下の方で作業の準備をするヒヨコ達へ向かって水を撒き散らす。<br />
慌てふためいて散り散りに逃げまどうヒヨコ達を見下ろし、シンは大笑いしながら、さらに水圧を上げ、しつこく彼らを追いたてた。 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
了[2008/3/6]<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
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    <published>2013-03-30T19:54:32+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:54:32+09:00</updated> 
    <category term="シンレイ" label="シンレイ" />
    <title>花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ③　※R18※</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
「──レイ」<br />
　求めて止まなかったシンのぬくもりが覆い被さり、抜き差ししていた指を抜いたレイは、彼の首に腕を絡め、頬と頬を擦り寄せた。<br />
「ナマでしてもいい？」<br />
　熱く湿った息が耳朶に絡み付き、レイは、シンの頬に顔を寄せたまま、小刻みに首を縦に振った。<br />
「レイが、すごくいやらしいから……ちょっと早いかもしれない」<br />
「いいから……もう、焦らさないで…くれ」<br />
　切羽詰まった声を上げ、大きく開いた足をシンの細腰に絡める。僅かにシンの腰が浮き、彼のものの先端が後ろの腔へ押し付けられたのとほとんど同時に、一気に貫かれ、悲鳴に似た声を口から迸らせたレイは、侵入した彼の根元をきゅうきゅうと締め付けて、頂点へ昇りつめた。<br />
　下腹を痙攣させ、体内に残しておくのは危険な毒を吐き出したレイは、互いの腹の間に散った熱い粘液を擦り付けるように体を密着させて、更なる快楽を求めて腰を揺らす。<br />
　シーツと背中の隙間に腕を差し入れ、レイの背中を強く抱き締めたシンは、ずっと押し殺し続けてきた衝動をぶつけるかのように腰を振り、レイの体を激しく揺さぶった。<br />
乱暴に抜き差しを繰り返され、二本の指よりも大きなシンの熱を咥えこんだ入口が引き攣れて、痛い。そう訴えたなら、彼は詫びて、すぐに慎重な動きへシフトさせるだろう。<br />
このままでいい……このままが、いい──突き上げられるたびに、レイの開き放しの口から、女のような喘ぎが洩れる。<br />
「……気持ち、いい？……レイ……」<br />
　耳元で問われ、レイは小刻みに頷きながら、シンの首を抱く腕に力をこめ、荒い息と艶めいた喘ぎとともに彼の名前を何度も呼んだ。<br />
寸分の狂いなく、弱い場所を突いてくるシンの動きに翻弄される、体。繋がり、擦れ合う部分を中心に、シンに与えられる熱と快楽が、全身に波紋のように広がっていく。先ほど、欲望を吐き出したばかりの体の芯が疼き、再び、ゆっくりと首を擡げはじめた。<br />
「──レイ」<br />
　シンの低い声が、荒い息とともに耳朶に絡み付き、レイの首の後ろがさっと粟立つ。<br />
視覚を奪われているせいだろうか……彼の息も声も、いつもより近くに感じる。しかし、シンの存在をどれほど近くに感じていても、決してひとつにはなれない。ふたりを隔てるこの肌が熱に溶け、ひとつになることが出来たなら、たとえこの身が消えてなくなったとしても、ずっと、彼とともに生きていけるのに……。<br />
「……シン……っ……」<br />
　シンの首を抱く腕に力をこめて、しだいに汗ばんでいく体を密着させ、彼の頬と口の端に唇を付け、キスをせがむ。こちらの望みを察知したシンは、僅かに顔をずらし、彼を突き動かす衝動のままに噛み付くようなキスをして、唾液にまみれた熱いぬめりを絡め合った。<br />
「……ん、ふ…うっ……ぁ…っ……あぁ…っ──シ、ン…っ……」<br />
　絡み、擦れて熱を持っていく唇と、シンのものを咥えこんだ部分から洩れる、いやらしく潤んだ水の音、そして、激しい動きを繰り返すシンと、彼にしがみつく自分の重さを支えるベッドの軋みが、ふたりきりの空間に溶けて、消えていく。<br />
　どれだけ深く繋がっていたとしても、熱に溺れたとしても、彼の体内へ溶けていくことは出来ない─ふたつに分かれているこの身体が、もどかしくて仕方がなかった。<br />
　いちばん感じる場所をしつこく抉られて、レイは、口内を蹂躙するシンの熱いぬめりに吸い付きながら、彼の細腰に強く脚を絡め、再び頂点へと駆け上がっていく体をがくがくと震わせた。<br />
「あ…っ……もう……イ、く……」<br />
　重ね合った唇の隙間から、荒い息とともに声を洩らすシンの汗ばんだ背中を抱きしめ、レイは小刻みに頷く。<br />
「……っ……中、に……出して……、くれ……。シ、ン……いき、たい──一緒に……いきたい」<br />
　絡めた舌と、背中を抱く腕を解き、レイは、僅かに浮き上がっていた背中をシーツに付け、視覚を奪っていた布きれを外した。<br />
達する寸前の、快楽に熟んだ瞳をこちらへ向けたシンは、上体を起こし、レイの両足を肩に担ぎ、再び、ゆっくりと、体を前へ倒していく。ロープで菱の模様を描かれた胸に膝を寄せられ、結合した部分が上を向いて、爆発寸前のシンのものが更に奥へと埋まり、レイは息を詰めた。<br />
　レイの弱点に当たるように互いの体の角度を合わせ、上から下へ、激しく抽迭されて、顎を上げたレイは、艶やかで甘い喘ぎを洩らしながらかぶりを振った。「もっと」と、うわごとのように繰り返しながら、シンの肩に縋り付き、彼の肌に指を食い込ませる。<br />
　汗にまみれた肌の表面がざわめき、シンの熱の塊が体内の弱い場所を抉るたびに、反射的に背中と声が跳ねた。<br />
　断続的に押し寄せてくる快楽の波にのまれ、息が出来ない。己のものがはち切れんばかりに膨らんだその瞬間に、腹の奥から迫り上がってきた、灼けてどろりとしたものが、管の中を走り、先端から迸る。<br />
（──いく…っ……）<br />
　シンの肩に縋り付く手に、更に力をこめて、レイは、極限まで反らした背中を硬直させ、射精寸前のシンのものの根元をきゅうきゅうと締め付けながら、灼けた粘液を腹の上に散らした。<br />
　その後、息を詰め、腰を三度強く打ち付けたシンは、結合部に下腹を擦り付け、低い声で呻く。シンの、欲望の塊の根元がびくんびくんと脈打ち、熱い粘液が体内へ注ぎ込まれた。<br />
　シンの肩からずり落ちた手を、脱力した体の脇に投げ出して、レイは薄く目を開けた。脈動とともに吐き出される微かな熱を内壁で感じながら、ぎゅっと目を瞑って呻くシンの顔をぼんやりと眺める。すべてを放出して目を開けたシンと視線がぶつかり合い、彼は、恥ずかしそうに口元を歪めた。<br />
　シンはゆっくりと腰を引いて埋めていたものを抜き、体液で濡れそぼったそれと、レイの腹に散った欲望の残滓をティッシュペーパーで丁寧に拭った。<br />
「……レイ…起きられる？……ロープ、解いてやるよ」<br />
　レイは、差し伸べられた手を取り、シンの肩を支えにして上体を起こす。正面から抱きしめるように、レイの背後に腕を回したシンは、手探りでロープを解きはじめた。<br />
「……こんなことに付き合ってくれて、サンキュ。……肌が擦れて、少し赤くなってるな……ごめん」<br />
「……痛みはないから……気にするな」<br />
　ようやく拘束を解かれたレイは、シンの肩に頬を寄せて、呟く。<br />
「レイ、思いっきり感じてたな」<br />
「……恥ずかしいくらいにな……」<br />
　ベッドの端に無造作に置かれたロープへ視線を落としながら、レイは、ふうっと息を吐いて笑った。<br />
「きれいだった……すごく」<br />
　そう言ったシンの腕が背中に回り、強く抱きしめられて、こめかみに柔らかな感触が落ちてくる。<br />
すべてが終わった後に降ってくるキスは、とても優しくて、その前の行為が性急で、衝動的であればあるほどに、とろけてしまいそうになる。<br />
僅かに顔をずらしたレイは、こめかみと頬に触れていたシンの唇を正面から受け止めた。ちゅっ、ちゅっと軽い音を響かせ、唇を押し付け合うだけのキスをして、視線を重ね、小さく吹き出すように笑う。<br />
「もう、二時を過ぎてしまったが……明日は、大丈夫なのか？」<br />
　尋ねると、<br />
「明日は非番だよ。レイが暇なら、観光でも、一日中ベッドの中でも、何でも付き合うよ」<br />
　シンは、レイの頬を撫でながら答えて、にいっと笑った。その、少年の頃と変わらない笑顔を見つめて、頬を緩めたレイは、シンの首筋に鼻先を寄せ、軽く歯を立てた。<br />
「明日のことは、後で決めよう。……今は─」<br />
　レイの頬に触れているシンの手を掴み、まだ完全には萎えていない下腹部へ誘導する。<br />
「──もう少しだけ、相手をしてくれないか？」<br />
　こんなふうに彼を誘ったことは、今まで、一度もなかったけれど、たまには、己の欲望に忠実になるのも良いかもしれない。<br />
「じゃあ、さ。レイ……もっと、チュウしてよ。そうしたら、すぐに、オレのも復活するから……」<br />
　レイは小さく頷き、己のそれで、シンの柔らかな唇をそっと包み込んだ。互いの舌先を絡め合いながら、だらりとうなだれているシンのものを軽く掴み、ゆるやかに扱く。<br />
　唇の隙間から洩れる息に熱がこもり、シンのものが手の中で首を擡げはじめた。<br />
しばらくの間扱き続け、後ろの腔を貫くことが出来るくらいに硬く勃ち上がったのを確かめて、レイは、触れ合っていた唇と肌をそっと離し、ヘッドボードへ手を伸ばした。<br />
　照明のスイッチを操作し、室内を皎々と照らす明かりを消して、サイドテーブルの上に置かれたランプを灯す。<br />
淡く、柔らかな光の中で、レイは、乱れて波打つシーツの上に両手と両膝を付いて四つ這いになり、首をよじる。後ろにいるシンへ視線を送りながら、お尻の小高い部分を撫で、そっと割り開くと、彼は大きく目を見開いて、ごくりと喉を鳴らした。<br />
こんな恥ずかしい行動に出てしまったことを、後で思い返して身悶えしてしまうかもしれないが、すべてを縄酔いのせいにして、明日になったら忘れてしまえば良い。どれほど酒に酔ったとしても、記憶をなくしたことなどただの一度もなかったけれど……。<br />
　膝立ちでこちらへ歩み寄ってきたシンは、レイの腰に両手を添え、突き出されたお尻の小高い部分にキスをして、硬く勃ち上がった彼のものの先端を、露わになった窄まりに押し当て、柔らかくなっている襞々を一気に押し広げた。<br />
「──あ…っ……」<br />
　反らした背中を硬直させ、体内に打ち込まれる楔と同じリズムで、薄く開いた唇から甘ったるい喘ぎを洩らす。内壁が擦れ、そこから生まれた熱が、腿の内側と背中を伝って全身へ巡っていくのを感じる。<br />
　上体を支える腕が小刻みに震えはじめ、レイは肘を曲げ、上半身をゆっくりと沈めて、シーツに付けた肘で上体を支えた。<br />
　体内に吐き出された精液が潤滑油となり、内壁の粘膜に包まれたシンのものをスムーズ滑らせて、結合した部分から、いやらしく潤んだ水の音が洩れ出る。しだいに荒くなっていく息とともに色を滲ませた声を洩らしながら、繋がり、擦れ合っている部分から体液が滴り落ちていくさまを、薄く開けた目に映した。<br />
　体の芯をちりちりと焦がす熱。それを発散させたいという衝動に駆られて、ぴんと立ち上がった股間のものに手を伸ばす。硬直したそれを握り、添うように手を滑らせたレイは、ぎゅっと目を瞑り、声を上げて、いやらしく腰をくねらせた。<br />
「……レイ。……繋がってるところ、丸見えになってる……」<br />
「きれいだよ」「レイ……」「……レイ」──背後から降りそそぐシンの声があたまの中に大きく響き、まだタンクの中に残っている熱い粘液が、腹の奥で蠢く。<br />
手を滑らせる速さと、シンの腰を進める速さとをどちらからともなく一致させ、レイは、しだいに熱く昂ぶっていく体を捩った。<br />
シンに背中を向けていることで、感じている顔を見られる気恥ずかしさから解放されたレイは、縛られたまま抱かれていた時よりもあられもない喘ぎ声を上げて、腰を揺らす。断続的に押し寄せてくる快楽の波に飲み込まれて、溺れてしまいそうだ。<br />
「……シン──」<br />
　繰り返し名前を呼びながら、己の手で、限界ぎりぎりまで自分を追い詰めていく。手の中にある熱の塊が更に大きく膨れ上がったその瞬間に、腹の中で蠢いていたものが出口を求めて迫り上がってくるのがわかった。<br />
「ああ…っ……シ、ン…っ」<br />
　レイは叫び、下腹を震わせて、灼けた粘液を迸らせた。<br />
シーツを汚してしまう──真っ白になった頭の隅っこで働いた僅かな理性。脈動とともに吐き出される精液を受け止めようとすべらせた手で、鈴口を包み込む。<br />
レイは、受け止めきれなかった白い粘液が指の隙間から滴り落ちていくさまをぼんやりと眺め、細く息を吐いて、腰を高く突き出したまま、快楽の余韻に震える体を弛緩させた。<br />
枕に頬を埋め、開き放しの口から甘い喘ぎを洩らし、高く突き上げた腰を支えているシンの手をぎゅっと握り、彼が打ち付ける熱と衝動をむさぼった。<br />
断続的に与えられる快楽に体が震え、気が遠くなる。<br />
「もっと……俺を、壊せ……」<br />
呟いて、再び、体内へ注ぎ込まれる熱と脈動を後ろに感じながら、レイは目を閉じた。<br />
「好きだよ……レイ」<br />
　汗ばんだ背中に、柔らかな感触が落ちてくる。<br />
「……知っている」<br />
　薄く目を開けたレイは、掠れ声で答えて、はあっと大きく息を吐き、気怠い体をゆるりと起こした。<br />
シーツにお尻を付けて座るシンと向かい合い、己の白く濁った粘液がべったりと付着した手で、彼の肩を掴む。シンは、嫌がる素振りも見せず、レイの瞳を真っ直ぐにとらえて、顔をかたむけた。<br />
　膝立ちになったレイの内腿を、体内から零れ出たシンの白濁液が伝う。彼に見せつけるように脚を開くと、<br />
「……やらしいな……」<br />
　そう呟いて、だらしなく頬を緩めたシンの体の中心が、また、少しずつ膨らんでいくのがわかった。<br />
膝立ちでシンの傍へ歩み寄ったレイは、彼の頭を胸に抱き、頭頂部と額にキスをする。前方へ投げ出された彼の脚を跨いでゆっくりと腰を沈め、彼の太腿にお尻をつけて、再び勃ち上がりかけた彼のものにそっと触れた。<br />
　少しだけ下の方にあるシンの目を覗き込むように顔をかたむけ、レイは、口元を緩める。<br />
「……夜は長いぞ……シン」<br />
　呟いて、もう一度、額に口を付けると、シンは小さく吹き出すように笑い、顎を上げて、レイの唇に軽くキスをした。<br />
「俺を…壊してくれ。……明日、立てなくなっても、構わないから……」<br />
シンの首に腕を絡め、鼻のあたまを擦り寄せて、囁く。<br />
「あー……今ので理性が吹っ飛んだ……。今まで出来なかったこと、してもいい？……レイって、あんまり、こういうこと好きじゃなさそうだと思ってたから、ちょっと遠慮してたんだ。……朝まで、滅茶苦茶に抱くよ。……いい？」<br />
　背中を抱くシンの手が、熱い。レイは、返事をする代わりに、シンの唇をそっと口に含み、潤んだ水音を響かせて解放した。<br />
小刻みに、触れるだけのキスを繰り返しながら、薄く目を開ける。<br />
熱にとろける視線が重なったその瞬間に、ふたりは頬を緩めて、遠く離れていた時間を取り戻そうとするかのように、互いの体をしっかりと抱きしめ合う。<br />
シンは、レイの首筋に頬を擦り寄せ、唇をあてて軽く吸った。彼の唇と舌が鎖骨の形をなぞり、胸元を這う。胸の尖端を舌先でくすぐられ、レイは、シンの頭をそっと抱きよせた。<br />
つんと尖り、敏感になった部分を起点にして、くすぐったさと気持ちよさとが綯い交ぜになったさざ波が、肌をざわめかせる。<br />
レイは、両手を後ろに付き、背中を反らせて、腰の位置を前へずらす。勃ち上がり、天井を仰いでいるシンのものの根元に後ろの窄まりを擦り付け、彼を挑発するように腰を揺らした。<br />
胸の突起を丁寧に愛撫していた舌の動きが、しだいに荒々しいものになり、肌に歯を立てられて、レイは掠れた声を上げる。<br />
乱暴な手付きで体をひっくり返され、シーツの冷たい感触に身をゆだねながら、レイは目を閉じて、痛みを伴う愛撫に打ち震える背中と腰を浮かせた。<br />
<br />
<br />
了【milk chodolate（２００９／２／１　out）　寄稿】<br />
<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/34</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://shinnreylog.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E8%8A%B1%E8%A1%A3%E3%81%AC%E3%81%90%E3%82%84%E3%81%BE%E3%81%A4%E3%81%AF%E3%82%8B%E7%B4%90%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%84%E3%82%8D%E2%91%A1%E3%80%80%E2%80%BBr18%E2%80%BB" />
    <published>2013-03-30T19:47:28+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:47:28+09:00</updated> 
    <category term="シンレイ" label="シンレイ" />
    <title>花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ②　※R18※</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
足元のマットレスが沈み、シンの重さが近付いてくる。<br />
レイは薄く目を開けて、口の端に溜まった唾液を舌の先で拭った。ほんの僅かな隙に、うたた寝をしてしまっていたようだ。レイはゆっくりと起き上がり、タオルの下で、まだ熱が燻っている股間を隠すように腰を引いた。<br />
「始めようか。……膝立ちになってくれる？」<br />
　シンに言われるがままに、レイは、彼と向かい合い、マットレスの上に膝立ちになった。<br />
　シンは、傍らのロープを解き、二つ折りにしたそれの折り返しから二十五センチほど下に結び目を作り、出来上がった輪をレイの首に掛けた。<br />
「……どうするんだ？」<br />
　鎖骨のあたりからウエストまでの間に、二つの結び目の瘤を、二十センチほどの間隔で作っていくシンの手元を覗きこみながら、レイは、問うた。<br />
「上半身を、菱形の模様を作るように縛っていく……あと、手首と足首も縛りたいから、脚を思いきり広げてもいい？」<br />
「……この、皎々とした明かりの下で、か？」<br />
「眩しいなら、目隠ししてやるよ」<br />
「そうじゃない。……明かりの下で見られるのが恥ずかしいと言っている」<br />
「わかってる。でも、今日は譲らない」<br />
　そう言い切ったシンは、下を向いたレイの顔を覗き込み、睨むような視線を向けてくる。レイは、細く息を吐きながら、内心に舌打ちをした。その沈黙を了承と取ったのか、シンは嬉しそうに目を細め、口元を綻ばせた。<br />
（この顔には、弱いな……）<br />
　レイは小刻みに首を縦に振り、シンの長めの前髪に触れ、梳き上げて、露わになった彼の額に唇を付けた。<br />
　レイの唇に、触れるだけのキスを返した後、シンは、ウエストの位置でもう一つ結び目を作り、二本のロープを左右二手に分けて、背後へ回していった。背後で交差させたロープを、きゅっときつく締められて、レイは、「あっ」と、微かな声を上げ、肩を震わせた。<br />
交差させたロープを、また、前の方へ戻し、臍の前で結ばれた瘤と、そのすぐ上の結び目を繋ぐ二本の縦縄の真ん中にロープを通し、左右に引き分けて、肌の上に菱形の模様を作り出していく。<br />
再び、後ろへ回したロープを締め上げられて、レイは、しだいに熱が籠もっていく吐息を、ゆっくりと体内へ押し戻した。<br />
「こんなこと……どこで憶えてきたんだ？」<br />
「内緒」<br />
　そう答えて笑ったシンは、レイの肌の上に浮かび上がっていく菱形へ向けた目を細め、「きれいだよ」と、レイに聞かせるともなしに呟く。<br />
熱を帯びたシンの声が耳の奥にべったりと張り付き、体内で鳴り響く鼓動以外のすべての音が、綺麗に排除されていくのを、レイは感じていた。身じろぎするたびに、肌とロープの触れ合った部分が軋み、薄くひらいた唇の隙間から、微かな声が洩れる。<br />
　三つの菱形を作り終えたシンは、レイを正面から抱きしめるような体勢で、菱が崩れないように、レイの背後でロープをしっかりと結んだ。<br />
きゅうきゅうと体を締め上げられるたびに、レイはぴくりと体を震わせ、腹の奥底から這い上がってくる熱く湿った息を飲み込む。ロープが触れて軋む部分から、今までに感じたことのない奇妙な熱が体内へ侵入し、体の中心で燻りはじめていた。<br />
シンは、レイの背後に回り込み、背中で纏めたロープを引き上げ、首の輪っかに通したそれを、レイの首が絞まらない程度に強く引き下げて、背中で留めた。<br />
「痛くない？」<br />
　シンの息が耳朶に絡み付いてくる。レイは肩を聳やかし、僅かに身を引いて、「ああ」と掠れ声で答え、頷いた。<br />
「脚を投げ出して座ってくれる？」<br />
　シンに促されるまま、レイは、腰に巻いたタオルが解けないよう慎重に、マットレスにお尻を付けて、両足を前へ投げ出した。<br />
「脚……開いて」<br />
　耳元で響くシンの声に背中を震わせたレイは、はあっと息を吐いて、曲げた膝を抱き、徐々に脚を開いていく。<br />
レイの斜め後ろに膝を付いたシンは、レイの腕を軽く引っ張り、両の手首と足首を、片方ずつ、丁寧に細い布きれを使って縛りつけた。<br />
　最後に残った布きれで視界を遮られたレイは、目を瞑り、背後にあるシンの気配に寄り掛かるように、体を後ろへ倒した。意識が遠のいていくような、ふわふわと浮き上がるような感覚に身をゆだね、シンの胸の温もりを背中で感じながら、レイは首をひねり、彼の顎に鼻先を擦り寄せた。<br />
視覚を奪われたことで、残された感覚が、しだいに研ぎ澄まされてゆくのがわかる。レイは、知っているものよりも濃い、シンの肌の匂いを鼻腔に満たし、体内に充満する湿り気とともにゆっくりと吐き出した。<br />
顎に触れたシンの手の動きに抗うことなく首と体をよじり、彼の胸に深く身をゆだねたレイの唇の端に柔らかいものがあたる。レイは、シンを誘うように、薄く開いた唇の隙間から舌の先を覗かせた。<br />
「縄酔い……しちゃった？」<br />
　縄酔い？──聞き慣れない言葉に、レイは首をかしげた。<br />
「体を縛っている縄の感触と、縛られている自分に、うっとりして感じちゃうことがあるんだって。それが、縄酔い……いつも襟ひとつ乱さないレイのこんな姿、見られるとは思わなかった」<br />
シンが口を動かすたびに、柔らかな感触が微かに触れ合う。ぴちゃり、と濡れた音とともに彼の口内へと絡め取られた舌を、自分では、もう、押さえることの出来ない衝動のままに彼のぬめりへと絡め付け、唇の隙間から甘い息を吐く。<br />
こちらの口内を思うさま弄んだ、愛しい温もりが遠ざかっていく。名残惜しさに、「あっ」と、吐息まじりの声を上げて、レイは、シンの首筋に額を擦り寄せた。<br />
「凄く……感じてるんだな、レイ。……アソコ、どうなってるのか、見てみたい」<br />
　言いながら、頬に触れたシンの唇が、顎のラインをなぞり、首筋を這う。シンの腕に支えられた体がゆっくりと後ろに倒れ、冷えたシーツが背中に触れた。<br />
　緊縛され、横たわる体の脇を移動するシンの動きに合わせて、マットレスが沈み、軋む。<br />
無理矢理開かれたまま閉じることさえままならない脚─腰に巻いたタオルの上から、股間の熱を確かめられて、レイは、「あっ」と小さな声を洩らした。<br />
　ふいに抱え上げられた腰が浮き、何が起こったのかを理解する前に、腰の下に枕が差し入れられる。腰骨の出っ張りに引っ掛けていたタオルの結び目が解け、天井からの皎々とした明かりの下に、恥ずかしい部分をさらけ出したレイは、熱が集中していく顔を背けて、下の唇をきゅっと噛みしめる。<br />
「すっげぇ…いっぱい、先走りが洩れてる──」<br />
　感嘆の声を上げたシンは、レイの膝の裏に手を入れて、ぐっと前へ押した。膝が胸に寄せられ、シャワールームでの愛撫によって淫靡な色を点した蕾が天井を仰ぐ。<br />
「──思ってた通り、すごく綺麗な色だな……。ずっと……レイのココ、明るいところで見てみたかったんだ。乳首も、アソコも……ココも、すっげぇ綺麗なピンク色……」<br />
　上を向いたお尻の割れ目に熱く湿った吐息がかかり、レイの背中がびくりと跳ねた。<br />
「あ…っ……ぃや、だ……」<br />
自分でも驚くほどに鼻にかかった甘ったるい声が、腹の底へ沈めてきた熱い吐息とともに溢れ出る。シンのぬめりがお尻の割れ目を這い、レイは、反らした背中を硬直させた。<br />
「ん、っ……あ…あっ……はぁ…っ……」<br />
　後ろの腔を舐め回す放縦な舌の動きに翻弄され、淫らに揺れる、腰。<br />
「もっと……」と言いかけたレイは、震える息を噛み殺し、口をつぐんだ。たとえ、この身を縛る縄の軋みに酔っていたとしても、そんなこと、口に出せるはずもない。<br />
「レイのココ……ヒクヒクしてきた」<br />
シンの指先が、ひくつく襞々を丸く押し広げるように撫でていく。眉根を寄せたレイは、顎を上げ、小刻みに息を吐き出しながらかぶりを振った。開き放しの唇の隙間から洩れ出る声はどこまでも甘く、艶やかだ。<br />
「レイ……欲しい？オレが、欲しいんだろ？……ねぇ、言ってよ、レイ。……クダサイ…って。オレが欲しい、って……言えよ、レイ」<br />
　欲望を押し殺した低い声が、足元で響く。厚みのある舌で、ひくつく後ろの腔から蟻の門渡りを舐め上げられて、レイは、「ひっ……」と短い悲鳴を洩らした。シンは鼻先に垂れ下がった袋を口に含み、舌の先で転がす。くすぐったさに身を捩ったレイは、「欲しい」と口の中で呟き、シンの気配がする方へ顔を向けた。<br />
「欲しい？」<br />
　目隠しの向こうで、シンが笑ったのがわかる。<br />
「ああ……」<br />
　乾いた唇を潤すように舌でなぞり、小さく頷くと、シンは、「ふうん」と気のない返事をして、再び、足の間に顔を埋めた。<br />
「……シン…？」<br />
「何？」<br />
「──て……」<br />
「何？聞こえないよ、レイ」<br />
「……れて。……入れて…くれ……シン。……焦らすな」<br />
　入れて──普段のセックスでは決して口にしない言葉──吐き出したその瞬間に、屈辱に打ち拉がれるどころか、体の芯がさらに熱を持ち、硬く膨れ上がっていくのを感じる。<br />
レイは、シンが与える快楽と熱に熟んだ目を、目隠しの向こうへ向けて、彼のシルエットを探した。<br />
　高々と持ち上げられていた腰を枕の上へ降ろされて、レイはほっと息を吐いた。<br />
右の手首と足首とを緊縛していた布きれが解かれ、自由に動かせるようになった手で、シンの気配を探し、指の先に触れた彼の肌を撫でる。互いの掌が重なり合い、指を祈りの形に絡めた。いつの間に、こんなに分厚い手になったのだろう？　レイは、シンの手をぎゅっと握り、彼の体を引き寄せた。<br />
シンは、レイに拘束されていない方の手で、左手首と左足首を緊縛している布きれを解いた。<br />
顔の両脇のマットレスが沈み、シンの影で目の前が翳る。目隠しの布越しに、柔らかな感触が瞼の上に落ちてきて、レイはそっと目を閉じた。<br />
「……お前は今、どんな顔をしている？」<br />
　軽い音を響かせながら、顔中にキスをするシンに、問う。<br />
「どんなふうにレイをいじめてやろうかって…すごく……凶悪な顔をしてる、かもしれない」<br />
「……見て…みたい……」<br />
「だめだよ」<br />
「……なぜ？」<br />
「恥ずかしいから。……レイだって、何も見えない方が燃えるだろ？」<br />
「……そんなことは……」<br />
「嘘つき。……普段、『入れて』なんて絶対に言わないくせに」<br />
　絡め合っていた指の先にキスをして、体を起こしたシンは、解いた手をレイの足の間へ誘導した。<br />
蓋を回し開けるような微かな響きが耳を掠めたその瞬間に、お尻の割れ目に冷たいローションをたっぷりと擦り付けられて、レイはびくりと体を震わせた。<br />
「自分で広げてくれる？」<br />
　シンの言葉に、息を呑む。<br />
「……いつも一人でやってること、オレに見せてよ」<br />
「……そんなことは……しない」<br />
「そうなのか？じゃあ、初めての経験だな。……きっと、クセになるよ」<br />
　シンは、レイの閉じかけていた太腿の内側に唇を付けながら膝に触れ、再び、脚を大きく開かせる。レイは細く息を吐き、ぎゅっと目を瞑って、躊躇いながら足の間へ手を伸ばした。<br />
　ぬるりとしたお尻の割れ目を中指でなぞり、恐る恐る、後ろの腔の襞々に指の腹を這わせ、丸く撫でる。<br />
シンと離れて暮らすようになってから、彼を想い、昂ぶっていく体を鎮めるために、硬くそそり立つ己のものを手で慰めることは今までに何度か経験していたが、後ろに指を這わせたことなど、一度もなかった。<br />
　レイは、下の唇を噛み、手に力をこめて、中指の先をつぷりと体内へ侵入させた。そっとかき回し、体温と同じ熱さになったローションを馴染ませるように、入口の内側を指の腹でそっとなぞると、えもいわれぬくすぐったさが、ぞくぞくと体の奥の方を震わせる。<br />
慎重に中指の根元まで挿入し、腹側の内壁を擦り上げると、ふいに、小さなしこりのようなものに指先が触れ、その瞬間に、レイは顎を上げ、「あっ」と、掠れた甘い声を上げた。<br />
（……そういうこと…だったのか……）<br />
　体内のしこりを指の腹で撫でながら、レイは、唇の端を微かに上げた。指を使って責めるときも、欲望の塊を挿入したあとも、シンは、寸分違わず同じ場所を擦り上げてくる。そのことがずっと不思議で仕方がなかったのだが、自身の体内に初めて触れて、彼は、この『しるし』を頼りに責めていたのだとようやく理解することが出来た。<br />
　レイは、熱く湿った息を小刻みに吐き出しながら、体内に埋めた中指の抜き差しを繰り返す。自身に与え続けていたくすぐったさが、しだいに快楽へと変わり、太腿の内側から足先までがじんと痺れ、徐々に膝が閉じていった。<br />
「あぁ…っ……」<br />
　ぴったりと閉じた両膝の、裏側に手を差し入れられたレイは、声を上げ、大きく開かれた脚の間にシンの視線を感じて、腰を捩った。身じろぎするたびに、上半身を拘束するロープが軋み、レイは、また、掠れた声を洩らす。<br />
　シンに見られている─そう意識するだけで、鼓動が早くなり、腹の奥からせり上がってくる息は熱と湿り気を帯びていく。<br />
（シン……）<br />
　口の中で呟いたレイは、右の中指を体内へ埋めたまま、左手を伸ばし、膝の裏に差し入れられたシンの手を強く握った。<br />
（……シン）<br />
　柔らかくて温かい粘膜を擦り上げていた中指を体内からそっと抜き、お尻の割れ目を濡らすローションを馴染ませた人差し指と中指の二本の指先で、もう充分に解れている襞々を、シンに見せつけるように、丸く撫でた。薄く開いた唇の隙間から細く息を吐き、二本の指を体内へ埋めて、ゆっくりと抜き差しをすると、しんとした室内に、濡れた皮膚と粘膜とが擦れ合ういやらしい水音が微かに響いては溶けていく。<br />
「……シン──」<br />
　口の中で呟くだけだった彼の名前が、切ない響きを伴って唇の隙間から溢れ出る。<br />
「…っ……あっ……シン……シ、ン……」<br />
　レイは目一杯脚を開き、記憶の中の、後ろの腔を出入りする熱い塊の感触を繰り返し反芻しながら、自身の、最も感じる場所を擦り上げ、腰をくねらせた。<br />
「ぁ…あっ。……ん、ぁっ……は…っ」<br />
　肉体は拘束されているのに、心だけは、どんどん自由になっていく。このまま続けていたら、指の動きだけで頂点へ達してしまうかもしれない。けれど、それだけでは、きっと、物足りない。<br />
「──シ、ン……来て、くれ……頼む…から……もう、焦らす…な……」<br />
　欲しい──シンのものが、欲しくて堪らない。<br />
「あ…っ……シ、ン……、シ…ン」<br />
　シンの熱を求めてひくつく後ろの腔の入口に、体内に埋めている指の二番目の関節を滅茶苦茶に擦りつけて、甘ったるい声を上げ、体を震わせながら、彼の手をさらに強い力で握った。<br />
<br />
【つづく】<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
  </entry>
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    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/33</id>
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    <published>2013-03-30T19:41:16+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:41:16+09:00</updated> 
    <category term="シンレイ" label="シンレイ" />
    <title>花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ①　※R18※</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
シンは、戦争が終わってからずっと、失意の底にいた俺の傍にいてくれた──何も聞かずに、自身の足で立ち上がることが出来るようになるまで、ずっと。<br />
初めて、シンとベッドを共にした夜のことは、耳朶に絡みつく生々しい息遣いと共に、鮮明に思い出すことが出来る。<br />
どちらかが明確な欲望をもって誘ったわけではなかった。ふいに絡めた視線に熱が籠もり、互いに驚くほど自然にキスをして、成長半ばの痩せた体をまさぐり合った。<br />
シンに示したほんの少しの抵抗は、『イメージトレーニングの賜物』の──と、後に彼が言っていた──優しいキスと愛撫によって解され、はじめての痛みとともに、彼と、硬く反り返った彼のものを受け入れた。<br />
それ以来、シンの優しさと衝動に縋り付くように肌を重ね、共に白い軍服に袖を通した後も、二人で休日を合わせては一日中抱き合っていた。<br />
恋人と呼べるような甘い関係ではなく、セックスフレンドと呼べるほどに割り切れてもいなかった。<br />
親友の枠を踏み越えて、この先、一体どこへ向かえばいいのだろう？そんな不安を持てあまし、シンの背中にしがみついて、まるで八つ当たりをするかのように、男にしては白すぎる背中に爪を立てる。<br />
そんな、こちらの苛立ちを察したのかどうかは知らないが、カーペンタリアに転属が決まったシンがプラントを離れる前の日、彼はかしこまった様子で、<br />
『オレのパートナーになってください』<br />
と、告げた。<br />
敢えてパートナーという言葉を使ったシンの胸の内は定かではなかったけれど、おそらくは、男同士で、親友で、共に戦場を駆けてきた自分達に、恋人という言葉は甘すぎて、使うことを躊躇ったのだろうと理解して、彼の申し入れに、素直に首を縦に振った。<br />
レイの反応を見届けたシンは嬉しそうに笑い、<br />
『今更だけど、ハッキリさせておきたかったんだ』と、真っ直ぐな視線を向けて、言った。<br />
<br />
<br />
<br />
静かなブリッジに、本艦のオペレーターとカーペンタリアとの交信が響く。艦長席に腰を下ろしたレイは、その遣り取りにじっと耳を傾け、その完了と共に安堵の溜息をついた。<br />
下船許可が下り、速やかに艦を降りたレイと他のクルー達は、中立国首脳との会談に赴くプラント最高評議会議長とその後ろに控える護衛官達の背中を、敬礼で見送った。<br />
議長らの姿が建物の中に消えたその瞬間に、どこからともなく溜息が洩れ、レイは口元を綻ばせて溜息の主へ視線を送った。彼はばつが悪そうに笑い、そそくさと、艦内へ戻っていく。ドックの技術主任との打ち合わせを終えたレイも艦長室へ戻り、私物の入った小さなトランクを引いて、軍港近くに建つホテルへ足を向けた。<br />
会談が終わり、プラントへ戻る明後日まで、艦はドッグに入り、クルー達にも休暇が与えられる。<br />
シンと離ればなれになって、一年。<br />
久しぶりの休暇を、シンがいる場所で過ごすことに微かな喜びを感じながら、レイは、チェックインしたホテルの部屋で、カーペンタリアに到着した旨を、彼にメールで告げた。すぐに、シンから、軍務が終わった後に部屋へ迎えに行くという返信があり、『待っている』と返した。<br />
ベッドのヘッドボードに埋め込まれている、小さなデジタル時計をちらりと見る。午後四時半─シンがここにやってくるまで、あと三時間ほど待たなければならないだろう。<br />
「一眠りするか……」<br />
呟いたレイは、握っていた携帯電話をサイドボードの上へ置き、ブーツと軍服の上着を脱いで、ごろりとベッドに横たわる。 　艦長席に座り放しだったせいで軋んでいる腰を思い切り伸ばした後、ブランケットを抱きかかえるように横向きになったレイは、枕に頬を埋め、清潔なリネンの匂いを胸に満たした。<br />
<br />
<br />
<br />
暗闇の中、薄く目を開けたレイの心臓がびくりと跳ねる。<br />
慌てて上体を起こし、ヘッドボードのスイッチに触れ、部屋の明かりを灯して時計を確認すると、既に二十三時を回っていた。<br />
（寝過ごしたか……）<br />
忌々しい気持ちで舌打ちをしたレイは、サイドボードに手を伸ばして、手探りで携帯電話を掴み、着信履歴を確認する──五件。すべて、シンからの着信だった。<br />
リダイヤルして、受話口に耳に当てたレイは、祈るような気持ちで、無意識にコール音を数える。十五コール目に音声が切り替わり、留守番電話サービスセンターへ繋がった。<br />
レイは小さく息を吐き、電話を切った。<br />
おそらく、シンは、明日も仕事だろう。彼に無理をさせてしまうことになるが、明日の夜、また、時間を取って貰おうか……。今すぐに会って、顔を見ながら話がしたいというのが本音だけれど、仕方がない。<br />
レイがその旨を伝えるべくメールを打ち込んでいると、手の中の携帯電話が震え、着信を知らせる。<br />
「──もしもし……シン、か？」<br />
　通話ボタンを押し、電話を耳に当てたレイは、受話口の向こう側に、すべての意識を向け、耳をそばだてた。<br />
『うん、そう。……さっき、電話くれただろ？ごめんな……ちょっと買い物していて、出られなかったんだ』<br />
　久しぶりに耳元で響く、シンの声。移動しているのだろうか？彼のまわりに、雑踏のような音がまとわりついている。<br />
「いや、いい。それより……すまない……うたた寝をして、寝過ごしてしまった」<br />
『ん？いいよ、別に。疲れてたんだろ？』<br />
「……すまない」<br />
『いいって。……ねぇ、今からそっちに行ってもいい？久しぶりに、カオ見たいんだ。それから、……したい』<br />
「ああ、構わない。二五一〇号室だ……待っている」<br />
『了解。すぐに行く』<br />
「だが……」<br />
　明日は大丈夫か？と、レイが言いかけたところで、せっかちなシンは電話を切った。レイは溜息をつき、携帯電話をサイドテーブルの上に置く。<br />
　落ち着いたところで、自身の姿をかえりみて、もう少しまともな格好で彼を迎え入れた方が良いだろうと思い立ち、レイは、スラックスと軍支給のインナーウェアを脱ぎ、シャツとジーンズに素早く着替えた。<br />
　ゆったりとしたベッドの端に腰を下ろし、シンの到着を待つ─二十分後、コンコンと二回、ドアが鳴った。<br />
「はい」<br />
　歩み寄ったドアの傍で答えると、<br />
「オレ。シン・アスカ」<br />
　先ほど鼓膜を震わせた声が、ドアの向こう側から響いた。レイは、ノブに手を掛けてドアを開け、目の前に立つ普段着姿のシンの顔を見つめて、微かに笑う。<br />
　同じように顔を綻ばせたシンは、室内へするりと体を滑り込ませ、飼い主に飛びつく大型犬のような勢いで、レイの体をしっかりと抱いた。レイは背中に力を入れ、足を一歩だけ後ろへ引いて、背後に流れようとする二人分の体の重さを支えた。<br />
「久しぶり。会いたかった……レイ」<br />
　頬を擦り寄せたシンは、レイの耳元で囁く。彼の熱く湿った吐息が耳朶を掠め、レイは、くすぐったさから逃れるように肩を聳やかした。<br />
「……俺もだ……」<br />
　シンに聞こえるギリギリの音量で呟くと、<br />
「ん？なに？聞こえない」<br />
　彼は甘えたような声を上げ、レイの頬に唇の端を寄せた。<br />
「二度は言わない」<br />
「けち！」<br />
　含み笑いとともに呟いたシンは、触れ合っていた胸を離し、顔を僅かにずらして、レイの、同じ高さにある目を真っ直ぐに見つめた。<br />
「今度こそ、レイを追い越したと思ったんだけどなぁ」<br />
シンは、唇を尖らせてぼやく。額に、彼のおでこをぐりぐりと押し付けられて、レイは上目遣いに彼を窺い、「残念だったな」と、笑いを押し殺しながら呟いた。<br />
　シンの細い腰に手を回し、顎を上げて、硬めの髪の上から、彼の額に唇をつけた。その瞬間にぎゅっと閉じた彼の目が薄く開き、熱をおびつつある赤い瞳がレイの目に飛び込んできて、胸の奥を鷲づかみにする─来る、と、心臓が跳ねるのとほとんど同時に、シンは、レイの背中を強くかき抱き、噛み付くようなキスをして、薄く開いた唇の隙間から、半ば強引に舌を差し入れた。無遠慮に口内を侵しはじめるシンの熱いぬめりに己の舌を絡め、彼の首に腕を回して、胸から下を密着させた。<br />
　唾液で濡れた唇を擦り合わせ、アルコールの香りがするシンの舌をじっくりと味わった後、潤んだ響きとともに唇を離した。<br />
「飲んできたのか？」<br />
　互いの額と鼻先を寄せたまま、レイは問う。<br />
「うん。買い物に出る前に、ここのバーで時間つぶしに飲んでた。……勃ちには問題ないよ」<br />
　シンは、かすかなアルコールの匂いを吐き出しながら答えて、レイの腰を抱き寄せ、僅かに立ち上がりかけた下腹部を、レイのそこへ押し付けた。<br />
「下品だな……」<br />
「ごめん」<br />
　言葉を交わすたびに微かに触れ合う唇の感触が心地良い。<br />
　レイは、シンの腰から背中を撫で上げて、首の後ろに掛かる彼の襟髪にそっと指を絡めた。強い光を放つシンの瞳をとらえたまま、レイは僅かに顔をかたむけて、唇の端を上げると、レイの背後で、彼の握っていた紙袋がかさりと鳴り、<br />
「何を、買ってきたんだ？」<br />
　問うと、シンは不敵な笑みを浮かべて触れ合っていた体を離し、レイの手を取り、ベッドの傍らへ移動した。シンに促されるままにベッドの端に腰を下ろしたレイは、足元に膝を付き、紙袋の中に手を突っ込んだ彼の顔をぼんやりと眺める。<br />
　ローション、……細長い布きれ……ロープ！？<br />
　ベッドの上に並べられていく袋の中身を見たレイは、眉根を寄せて、シンを睨み付けた。<br />
「四時間待ったんだ。お仕置きぐらいさせろよ」<br />
　レイの目を真っ直ぐに捕らえて、シンは口の端を上げた。笑っていない目の奥に揺らめく薄暗い光。背筋を冷たいものが伝い落ちていく感覚に襲われて、レイは目を伏せた。<br />
「……だめ？」<br />
　シンは首をかたむけて、レイの顔を覗き込む。頬を隠す髪を梳き上げられ、レイはびくりと肩を震わせて顔を背け、シンから体を遠ざけた。<br />
「そうだよな……無茶言って、ごめん」<br />
　頭上から、優しい声が降り注ぐ。立ち上がったシンの顔を見上げたレイは、咄嗟に、遠ざかろうとする彼の手を掴んだ。<br />
「……その袋の中に……ほかに、何が入っているのかは知らないが……その……玩具のような物を俺の中に入れないで欲しい。……それだけは、嫌だ」<br />
　視線を泳がせて、レイは呟く。<br />
「そんなこと、しないよ。たとえ無機物でも、オレ以外のモノがレイの中に入るなんて嫌だからな。縛るだけだよ。あ……それから……そのまま、抱かせてくれる？」<br />
　恐る恐る視線を上げて、シンの目を探るように覗きこむと、先ほど、彼が一瞬だけ見せた、瞳の奥の薄暗い光はすっかり鳴りをひそめていた。いつまでたっても変わらない悪ガキのような笑みを浮かべた彼の顔を見つめて、レイはほっと息を吐く。<br />
「それならば……好きに…させてやる」<br />
　目を細めて、睨むような視線をシンへ向けて言うと、<br />
「サンキュ。……じゃあ、一緒にシャワー、浴びよっか」<br />
　シンは、掴んでいたレイの手を強く引っ張って立たせ、シャワールームへと促す。<br />
　二人で狭い脱衣所に入り、シンに背中を向けてシャツを脱ぐ。鏡越しにシンの様子を窺ったその瞬間に、互いの視線がぶつかり合い、レイは、びくりと肩を震わせた。<br />
「一緒にシャワーを浴びるのって、初めてだな」<br />
　言いながら、上半身裸になったシンは、レイの背後に立ち、露わになった肩先に軽く唇をあてた。<br />
「髪、洗う？」<br />
　シンの問いかけの真意を推し量ることが出来ずに、レイは首をかしげて、顔を横に振る。<br />
「じゃあ、濡れないようにしてやるよ」<br />
　ジーンズと下着を手早く脱ぎ捨てたシンは、洗面台に置かれているアメニティ・トレイから、小さなヘアバンドが入った袋をつまみ上げ、封を切った。レイは鏡越しに、ヘアバンドを口に咥えたシンの動きを観察する。シンは、レイの髪を両手で梳いて一つに纏め、咥えていたヘアバンドを手に取り、左手で掴んでいた髪を、つむじのあたりの高さでくるりと結わえた。<br />
「ずいぶん、手慣れているんだな」<br />
　まえに、幼い妹の髪をいじって遊んでいたから三つ編みとポニーテールは得意だという話を彼から聞いていたが、実際に、妙に慣れた手付きを目の当たりにして、胸の奥の方に小さな棘が刺さったような、微かな痛みを感じた……ような気がした。<br />
「マユに、嫉妬してる？」<br />
　シンは、レイと鏡越しに視線を合わせて笑い、露わになったレイの首の後ろにキスをして、シャワールームの扉の向こうに姿を消した。<br />
　レイも、ジーンズと下着を脱ぎ捨て、シンの後に続く。シャワーヘッドを手にしたシンは、サーモスタット付きのコックをひねり、ヘッドから迸る湯を床に流して、冷えた足元を温めた。<br />
湯気が立ちこめる狭いシャワールームの中でシンと向かい合って立ち、同じ高さにある彼の顔を見つめた。<br />
地上とプラントで離れて暮らすようになってから、はじめての逢瀬。彼の顔つきが、出発前の、まだ少年っぽさを残していたものから、妙に男臭い、見慣れないものへと、劇的な変化を遂げている。いつも傍にいられたならば、日々の緩やかな変化を感じ取ることが出来ただろうに……。<br />
レイは、ともに過ごすことが出来なかった時間を歯痒い気持ちで惜しみつつ、シンの胸に体を預け、彼の頬に唇の端を寄せた。<br />
　シンの背中に手を回し、しなやかな筋肉を指の先でなぞりながら、彼の成長を確かめる。また、少し逞しくなったようだ。<br />
シャワーヘッドから迸る湯のぬくもりが背中を包み、レイは、シンの耳元でそっと息を吐く。シンの耳朶に熱い息を吐きかけ、軽く歯を当てると、彼の背中がぴくりと震え、下半身のものが硬く立ち上がってくる。<br />
「……反応が早いな」<br />
　笑いを滲ませた声をシンの耳朶に絡み付けると、<br />
「わかってやってるくせに」<br />
　彼は囁いて、レイの耳の形をなぞるように、熱くぬめった舌を這わせた。<br />
「……は…っ」<br />
　弱い場所を集中的に責められて、薄く開いた唇の隙間から甘い声が洩れる。耳元で響く、しだいに荒くなっていく吐息と、狭いシャワールームに響く潤んだ水の音に、頭の芯がじんと痺れ、レイは背中を震わせた。<br />
「寒くない？」<br />
　耳元で問われて、レイは、小さく首を横に振る。<br />
「熱いくらいだ……」<br />
　掠れ声で答えて、レイは、密着していた体を僅かに離し、真っ直ぐにシンの顔を見つめ、彼の唇を自分のそれでそっと包み込んだ。<br />
　軽い音を立てて唇を解放し、シンの熱いぬめりを誘い出すように、舌の先で彼の唇のかたちをゆっくりとなぞっていく。上と下の唇の隙間から覗いたシンの舌の先に、再び唇を重ねることなく、舌先だけを絡み付けると、彼の体に触れていた自身のものがしだいに熱を持ち、首を擡げていった。僅かに腰の位置をずらし、すでに勃ち上がっている彼のものに、己の熱の塊を擦り付け、羞恥に頬を赤らめながら、誘うように、ゆるりと腰を揺らした。<br />
「……やばい」<br />
　顔を近付けたまま、シンは低く呻く。<br />
「何が、だ？」<br />
　離れていこうとするシンの唇を追いかけるように軽く触れ合わせながら問うと、<br />
「このまま、ここで、ヤっちゃいそうだ」<br />
　シンは、レイの唇に軽くキスをして、ゆっくりと体を離した。<br />
「楽しみは、あとに取っておこう」<br />
　そう言ったシンは、背中に回していた腕を解き、持っていたシャワーヘッドをレイに押し付けて、スポンジに落としたボディソープを泡立てる。<br />
泡だらけのシンの指が顎の先に触れ、レイは促されるままに、顔を上へ向けた。サクサクとした泡の感触が首筋を滑っていく。肩から腕、指の先まで丁寧に擦られて、レイは目を瞑り、微かに震える息をゆっくりと吐き出した。両の腕から胸元へ、そして、優しく体を擦りながら、少しずつ下のほうへ移動していくシンの手を、レイは、そっと両手で包み込む。<br />
「ここから先は、自分で洗う……」<br />
　薄く目を開けたレイは、どうした？と、問うような視線をこちらへ向けたシンを見つめて、彼の手からスポンジを奪い去ろうと、指に力をこめた。<br />
「遠慮しなくていいのに」<br />
　レイにスポンジを奪われたシンは、口の端を上げて、レイの体を壁際に押しやった。レイの手からシャワーヘッドを受け取り、壁のホルダーにそれを固定して、コックを捻り、シャワーを止めた。<br />
「あ……っ」<br />
　ポンプ式の容器から掌にたっぷりと取ったボディソープを、熱を燻らせた下腹部に擦り付けられて、レイはシンの肩を押し、腰を捩る。<br />
　シンは、勃ち上がったレイのものを握り、くちくちと、いやらしい音を響かせて、男をよがらせる絶妙な力加減で、手を上下に滑らせた。<br />
「シン、っ。……悪ふざけが過ぎるぞ。……っ、ああっ」<br />
　彼の責めから逃れようと身を引くが、背後の壁に阻まれて、体の動きを封じられてしまった。<br />
断続的に与えられる快楽に膝が震え、薄く開いた唇の隙間から甘い声と息を洩らしながら、レイは、シンの肩に頬を寄せ、体を預けた。頂点へ達する直前に、擦り上げていた手を止められて、レイは、悔し紛れに、彼の冷えた肩先に歯を立てる。<br />
「いてっ」<br />
　びくりと肩を震わせたシンは、レイの耳元でくすりと笑い、隙が出来たレイの手からスポンジを奪い返した。<br />
シンは、そっと体を離してレイの足元に膝を付き、顔を上げて、こちらへ視線を向ける。<br />
「レイ……足を──」<br />
　足首を軽く掴まれて、シンに促されるままに、彼の腿に足を乗せ、壁に背中を付けた。足の指とその間を一本ずつ丁寧に洗われて、レイは、くすぐったさに身をよじり、腰を引いた。足の甲、裏側、ふくらはぎへと、下から順に磨き上げられて、くすぐったさと気恥ずかしさが綯い交ぜになり、レイは細く息を吐き、シンの目の前にさらけ出したままの熱の塊に手を当てて、そっと隠す。<br />
スポンジを持ったシンの手が太腿の付け根まで到達し、もう片方の足も同じように撫で上げられて、レイは腰を引いたまま、お尻をきゅっと締めた。<br />
「レイ、次は、後ろ向いて」<br />
　抵抗する気力がすっかり失せてしまっていたレイは、シンに言われるままに後ろを向いて、壁に手を付いた。<br />
スポンジと泡の柔らかな感触が、ゆっくりと、首の後ろから背中を下り、お尻のふくらみを丸く包み込む。お尻の割れ目をなぞるように、ぐっと深く指を差し入れられて、レイは額をシャワールームの壁にくっつけ、震える息を吐き出した。<br />
　シンは、お尻の割れ目に浸入させた中指の腹を、レイの後ろの腔に当て、円を描くようにほぐし始める。<br />
「……ん、っ……ぁ…あっ」<br />
　思わず洩れ出た声が、狭いシャワールームの中に、妙に大きく響いた。こちらの反応を楽しんでいるようなシンの気配を背中に感じながら、レイは眉根を寄せて、「やめてくれ……」と、細い声で哀願する。<br />
「腰……動いてるのに？」<br />
笑いを滲ませた低い声でそう言われて、はじめて、言葉とは裏腹に、みだらに揺れている腰に気付き、レイは、羞恥に顔を赤らめた。<br />
後ろの腔を執拗に撫でられ、そこを中心として、波紋のように体全体に広がっていく快楽に背中を震わせて、上げてしまいそうになる甘い声を、唇に手の甲を当ててようやく噛み殺す。<br />
ぎゅっと目を閉じると、指を使って解された後の行為とそれに附随する痛みと悦楽が、この一年の間、シンを求めて止まなかった体に生々しくよみがえり、もうすでに熱を持っているレイのものが、触れただけで弾けてしまいそうなほどに大きく膨らみ、先端に透明な粘液を滲ませて、天井を仰いだ。<br />
「……終わり。先に出て、待ってて」<br />
　シンは、シャワーヘッドを握り、コックをひねって、泡まみれになったレイの体を丁寧に洗い流した。<br />
今、彼にされたのと同じことを仕返ししてやろうかと考えたが、そうしてしまったら、今度こそ、理性を失ったシンに、ここで犯される羽目になるだろう。先ほどシンが見せた、ベッド以外の場所で繋がることを嫌がってきた自分への気遣いを、自ら無に帰すことはない。<br />
深く息を吐き、シンと向かい合ったレイは、彼の口の端に唇を寄せ、シャワールームを出た。<br />
　濡れた体を拭き、タオルを腰に巻いてベッドルームへ戻る。髪を留めていた小さなヘアバンドをはずして、シーツの上に置かれたままのローションとともにサイドボードの上に置き、広いベッドの真ん中に横たわる。<br />
シンが持ち込んだロープの端を弄びながら、壁の向こうから洩れ聞こえてくる、微かな水の音に耳を傾け、レイは、そっと目を閉じた。<br />
<br />
<br />
【つづく】<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
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    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/32</id>
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    <published>2013-03-30T19:33:43+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:33:43+09:00</updated> 
    <category term="シンレイ" label="シンレイ" />
    <title>Smile lile a child.　－side shinn－④　※R18※</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
<br />
ベッドの隅に立て掛けていた杖がカラリと音を立てて倒れた。<br />
枯れた小枝を踏んだような響きが鼓膜に刺さり、シンはびくりと肩を震わせて、目を開けた。風に揺れるカーテンの隙間からは、夕方の、紫色に染まった空が覗いている。シンは両腕を突き出して、縮こまっていた体を思い切り伸ばし、隣のベッドへ視線を向けた。こちらを向いて目を閉じているレイの、無防備な寝顔。前よりも少しだけ痩せた頬に触れてみたいという衝動が、腹の奥の方で蠢く。その衝動に突き動かされるように上体を起こすと、乾きかけたコットンが、ぱらぱらと顔から剥がれ、腹の上に落ちた。それを払い退けたシンは、暖かな色調の、タイル貼りの床に足をつけて、そっと隣のベッドへ歩み寄る。マットレスに膝を乗せ、レイを起こさないよう慎重に、体の重さを彼の方へ移していった。<br />
顔にかかるプラチナブロンドを梳き上げ、露わになった頬に鼻先を寄せる。ローションとシャンプーの甘い香り、そして、レイの肌の匂いが鼻腔をくすぐり、顔に熱が集中していくのがわかった。<br />
（オレ、変態だ……）<br />
次第に強く、早く打つ鼓動を、どうか悟られませんようにと祈りながら、シンは、レイの、無防備に薄く開いた唇の端っこへ自分のそれをそっと押し当てた。<br />
顔を離してレイの様子を伺う。小さなうめき声とともにレイの顔が僅かに動き、乾いたコットンが頬から剥がれ、枕の上にぱらぱらと落ちていく。睫がふるりと震えて、鈍い光を宿した青い瞳がシンを捉えた。<br />
「……どうした？」<br />
柔らかそうな唇の隙間から、寝起きの掠れ声が洩れる。欲しい……レイの全部を暴いてやりたい─脳味噌の中の、理性を司る場所がスパークして、体の奥底から突き上げてくる衝動のままに、シンは、レイの肩を押さえこみ、唇を塞いだ。<br />
柔らかな唇を貪り、薄く開いたままの隙間に舌を差し入れて無理矢理にこじ開ける。レイの肌の匂いを鼻腔に満たしながら、口内を蹂躙し、奥に引っ込んでいた彼の舌を己の熱いぬめりで絡め取った。突然の出来事に、パニックに陥ったレイの手が、肩を引っ掻く。のし掛かる体を押し退けようと動いた彼の手に胸を叩かれ、シンはハッと我に返った。濡れた音を響かせて唇を離すと、レイは、大きく見開いていた目をすっと細め、<br />
「これが目的で、俺をバカンスへ誘ったのか？」<br />
荒い息を吐きながら、冷たく言い放った。<br />
「違う！」<br />
反射的に否定の声を上げたけれど、レイの上にのし掛かり、唇まで奪ってしまった後では、その言葉に説得力などなかった。<br />
「違うんだ、レイ。……本当に、こんなつもり、全然なくて……」<br />
レイの目が更に細められ、眉間に寄った皺が深さを増していく。頭の中が真っ白だ。どうしたら、この胸の中に渦巻いている感情を、上手く彼に伝えることが出来るだろう？<br />
いつも、感情的な態度を相手にぶつけ放しで、自分の気持ちを言葉にすることが得意ではないからと、言葉で伝える努力を放棄してきた。わかってくれないのなら、それでもいい─そんなふうに、目の前にいる相手を突き放して……。けれど、今、これまでの怠慢のツケが回ってきたみたいだ。本気で向き合いたい、理解して欲しい、受け入れて欲しいと渇望する人間を目の前にして、なにひとつ言葉が出てこない。このままでは、ようやく自分に弱さを見せてくれるようになったレイの信頼さえも失ってしまう。<br />
（イヤだ……）<br />
シンは、レイの上にのし掛かったまま、唾を飲み下して、乾きかけた喉を潤した。<br />
「……レイが…病院で、完全に意識を取り戻す少し前……一度、目を開けたの、憶えてる？」<br />
レイの顔の傍に両手をついたシンは、彼の目を真っ直ぐに見つめて問う。「いや……」と、彼が小さな声で返すのを聞いたシンは、「やっぱり」と、口の中で呟いて、細く息を吐いた。<br />
「あの時……目を覚ましたレイが、オレにしがみついて、泣きながら『ごめんなさい』って言ったんだ。誰かとオレを間違えているのは、すぐにわかった。誰とオレを間違えているのかとか、レイが誰に謝っていたのか、気になったけど……ただ、子供みたいに泣いているレイを守りたいって……支えたいって、思った」<br />
こちらの話にじっと耳を傾けていたレイの瞳の奥に宿っていた険の色が消え、かわりに、うっすらと潤み始めた瞳を隠すように、彼は目を伏せた。心臓のあたりが、ギュッと掴まれたみたいに痛む。シンは、掌で、レイの頬をそっと包み込むように撫で、肩口から腕を滑らせて、胸を押している手を掴んだ。<br />
「……守りたいって…支えたいって思ってただけなのに……。オレ、いつの間にか、レイのこと、こんな風に見てたんだ──」<br />
シンは目を伏せて、掴んでいたレイの手を、ハーフパンツの上からでもそうと分かるくらい張りつめた己のものへ押し当てる。彼の反応を確かめるのが恐くて、視線を上げることが出来なかった。<br />
「お前の気持ちは理解した。だが──」<br />
動揺を隠しきれていない、揺れた声が、俯いているシンの頭上から降り注ぐ。「だが─」その先に続くであろう言葉を、シンは目を伏せたまま、こめかみに銃を突きつけられた死刑囚のような面持ちで待った。<br />
「今の俺は……いや、今まで気付かなかっただけで、俺は、昔からずっと……弱い。ほかの誰かの温もりを知ってしまったなら、ひとりでは立てなくなるだろう。初めてお前に肩を借りた時、それを悟ってしまった。お前の優しさ、甘さに付けこんで、お前を雁字搦めにしてしまうかも知れない。ずっと俺の傍にいろと……ああ、もう、言ってしまったな」<br />
レイは自嘲気味に笑い、薄く開いた唇の隙間から細く息を吐いた。掴んでいたレイの手を解放し、視線を上げて彼の顔を見た。表に出ようとする感情に戸惑っているような、必死にそれを押し殺しているような、彼の表情─知らない顔だ、とシンは思った。<br />
「……フラれるかと思った」<br />
ほっと息を吐き、呟くと、<br />
「振るつもりだ。……ひとりで立てなくなってしまっては、困る」<br />
間髪入れずにレイは言い、彼はまた、目を伏せた。<br />
「爺さんになるまで、傍にいる」<br />
シンの言葉を聞いたレイは、ふんと鼻を鳴らす。<br />
「残念ながら俺は……」<br />
爺さんにはなれない─そう続いたであろう言葉を、シンは、レイの口を己の唇で塞いで封じ込めた。<br />
「爺さんになるまで傍にいたいと思ってる。その覚悟はある。その前にいなくなるって言うなら、他のヤツの一生分、オレに甘えろ！！オレを頼れ！！ぶぁぁぁぁぁ～か！！」<br />
濡れた音とともに唇を放し、シンは叫ぶ。メサイア攻防戦の前に聞かされたレイの秘密と、その時に悟った彼の中の絶望や葛藤を思い出し、気を抜くと彼の目も憚らず泣いてしまいそうだ。胸を押さえつけていたレイの手を払い退けて、シンは、彼の首筋に顔を埋めた。肩を引っ掻くレイの抵抗を無視して、首筋に纏わりついているプラチナブロンドごと、噛みつくような愛撫をする。舌に絡んでくる髪に構うことなく、レイの首筋を歯形が残るほどに強く噛み、脈打つ肌に吸い付いた。ちゅっちゅっと濡れた音を響かせながら顔を上へずらし、耳朶に舌を絡めると、レイは甲高い悲鳴を上げて、くすぐったそうに肩を聳やかし、身を捩った。同じ体格、似たような運動能力ではあったが、レイが左足にハンデを抱えている分、こちらの方に分があった。難なくレイの抵抗を押さえこみ、舌の先で彼の耳の形をなぞる。好きだ。欲しい。胸の中で呪文のように繰り返していた言葉が、知らず唇の隙間から洩れていることに気付いたのと、レイの抵抗が止んだのは、ほとんど同時だった。<br />
もう片方の耳も丁寧に愛撫した後、顔を離したシンは、レイの顔を覗きこむ。レイは薄く目を開けて、口元に、諦めの入り混じった曖昧な笑みを浮かべ、そっと視線を逸らした。<br />
シンは、鎖骨の窪みを唇と舌先でなぞり、淡い色を点す胸の尖端を口に含む。セックスに関しては、雑誌や映像から得た知識しかなかったけれど、<br />
（経験なんかなくても、何とか体は動くものなんだな……きっと、本能に刷り込まれているのだろう）<br />
と、妙に納得しながら、シンは、レイの胸の尖端を舌先で弄びながら甘噛みし、強く吸った。震える吐息が頭上から降り注ぐ。レイの両腕に、頭を包み込まれていることに気付いたシンは、頬を緩めて、僅かに顔を上げた。レイと視線を重ねて微かに笑うと、彼の熱い掌が頬に触れ、シンは顔をずらし、唇の端っこを撫でる親指の付け根に軽く歯を当てた。<br />
まだ衰えを知らない胸と腹の、鍛え上げられた証の翳りを唇と舌先でなぞる。ハーフパンツのゴムに指を引っ掛け、それを下着ごと一気にずり下ろして、レイの足からそれを引き抜いた。僅かに勃ち上がりかけたものが露わになり、レイは、慌ててシンの体を押し退けて、ブランケットで腰を覆った。<br />
「見ちゃだめ？」<br />
顔を上げて問いかけると、レイは顔を真っ赤にして、「当たり前だ！」と、声を荒げる。<br />
「同じものだろ？」<br />
口を尖らせるシンに、「うるさい」とだけ言い放ち、レイはふいっと顔を背けた。<br />
（男同士でするのって、やっぱ、後ろだよなぁ……。乾いてたら、痛いよなぁ……）<br />
シンは、ぼんやりと考えを巡らせながらハーフパンツを脱ぎ捨て、サイドテーブルに置いていたローションに手を伸ばす。ローションの蓋を回し開け、ぬるりとしてはいるが本来の使い道とは違う液体を指に馴染ませた。<br />
「後ろ……触るよ」<br />
顔を背けているレイからの返事はない。シンはブランケットの中に手を入れ、レイの、自由に動かない方の脚を撫でて支え、そっと開かせる。ローションを馴染ませた手で、レイの脚の間の割れ目をなぞると、彼は、「ひっ」と悲鳴に似た小さな声を上げ、掌で口を覆った。<br />
上目遣いにレイの様子を伺いながら、固く閉じている蕾を指の腹で丁寧にマッサージしていく。後ろの腔を弄ぶ指が乾かないようにローションを継ぎ足して、彼がふっと息を吐いたその瞬間、体内に中指を埋めた。<br />
「う…あっ……」<br />
突然の出来事に、レイは背中を震わせて、声を洩らす。シンは、レイの左足を肩に担ぎ、己の下腹部を彼の脚の間に寄せた。時間をかけて、丁寧に、丁寧に彼の後ろの腔をほぐしていく。指の抜き差しを繰り返し、口を押さえる手の隙間から洩れる声が、苦痛に似たものから甘い声に変わっていく頃、彼の蕾は、二本の指が挿入出来るくらいに柔らかくなっていた。<br />
レイの後ろの腔からゆっくりと指を引き抜いたシンは、そそり立つ己のものにローションを擦り付け、手探りで、先端を彼の入口へ押し当てた。<br />
「力、抜いて……」<br />
レイの強ばった腰をブランケット越しに撫で、シンは呟く。ゆっくりと腰を前へ進め、レイの後ろの腔を、ぎちぎちと、半ば無理矢理押し広げていった。苦しそうに頬を引き攣らせたレイは、目尻に涙を浮かべ、小刻みに息を吐く。<br />
（……キツイ）<br />
入口の抵抗の先に広がる、温かな空間─シンは背中を震わせながら、滅茶苦茶に腰を動かしてレイを犯したいという衝動をようやく抑えた。<br />
「全部、入った。……痛い？」<br />
慎重に腰を前へ進めていたシンは、結合した部分に下腹を擦り付け、レイの表情を伺う。<br />
「……気持ちが……悪い」<br />
レイは、荒い息とともに言葉を吐き出した。<br />
「そっか。ごめん……少し、我慢してくれる？」<br />
言って、シンは、後ろの腔を慣らすように腰をグラインドさせた。レイの熱さに包みこまれ、体の奥深い場所からどうしようもない愛おしさがこみ上げてくる。シンは、ゆるりと腰をゆらしながら、ブランケットの下で小さく縮こまりかけているレイのものを握り、掌と指を使って刺激を与えた。レイは、はあっと大きく息を吐き、腰を捩る。少しずつ荒くなっていくレイの呼吸を聞きながら、シンは、手の中で硬さを増した彼のものを扱き続けた。<br />
荒い息に、鼻にかかった甘い声が混ざりはじめ、勃ち上がったレイのものが射精寸前まで膨れ上がる。<br />
「もうすぐ、イくだろ？ブランケット……汚しちゃうから、どけるよ」<br />
レイの返事を待たずに、シンは、下腹部を覆っているブランケットを剥ぎ取り、淡い色をした彼のものを凝視した。担ぎ上げたレイの脚がずり落ちないよう慎重に左手を伸ばし、口を覆うレイの手をそっと引き剥がす。左手でレイの手をしっかりと握り、ピュアな色をしたものを扱く右手の速度を上げながら、先端から洩れ出ている先走りを指に絡めた。くちくちといやらしい音を響かせながら手を上下に滑らせると、薄く開いた唇の隙間から、<br />
「……あっ…、あっ……」<br />
と、控えめな声を洩らし、レイは、縋るようにシンの左手を握りしめた。<br />
（──来る）<br />
手の中で、レイのものが極限まで硬く、大きく膨らみ、それとほとんど同時に収縮した後ろの腔がシンのものの根元をきゅうきゅうと締め上げる。<br />
（……やばい……かも……）<br />
　シンはぎゅっと目を瞑り、息を詰めた。<br />
「ん…っ。……ぁあっ……」<br />
身を捩り、今までに聞いたことがないくらい甘い叫び声を上げたレイは、背中を反らして喉を震わせる。掌で彼の脈動を感じながら、薄く目を開けたシンは、先端から迸る白く濁った粘液が、レイの鍛え上げられた腹と胸に飛び散っていくさまを見下ろしていた。<br />
シンは、握っていたレイのものを解放して、人差し指の関節に付着した白濁液をぺろりと舐め、口内に広がっていく青い匂いを鼻から逃がす。<br />
レイに息つく暇を与えることなく、彼の両膝の後ろに手を入れて、脚をぐいっと胸の方へ押した。上を向き、露わになっていく結合部を追いかけるように膝立ちになったシンは、レイにのし掛かるような体勢をとり、ゆっくりと腰を引いて、レイの温もりに包まれていたものを先端のぎりぎりまで引き抜き、ゆっくりと体内へ戻す。力を失いかけた前のものと同じくらい淡い色を点した彼の後ろの腔は、ピュアな色とは裏腹に淫らな口を大きく開き、シンの欲望の塊を咥えこんでいた。<br />
「ねえ、レイ。……繋がってるの、見える？」<br />
　レイに見せつけるように、もう一度腰を引き、上目遣いに彼の反応を確かめながら、ゆっくりと抜き差しを繰り返した。顔を真っ赤に染めたレイは、眉根を寄せて、顔を背ける。<br />
「レイ……ごめんな」<br />
のぼせ上がってはいても、彼に嫌われても仕方のない行為に及んでいることは、ちゃんと理解している。シンは小さな声で詫びて、腰を揺らしながら、彼の膝に唇を寄せた。背けられていた顔がゆっくりとこちらを向く。その気配を視界の片隅に捉えたけれど、シンは気付かないふりをして、レイの両膝と内腿にキスを落とし続けた。<br />
こちらへ伸びてきたレイの手が、するりと頬を撫でていく。大きく開かせていたレイの両足を解放し、シンは、その手に導かれるように彼の体にのし掛かり、薄く開いた唇にかじりつき、強く吸い付いた。ねだるようにシンの上唇をなぞるレイの舌を絡め取り、互いの唾液で濡れた唇を擦り付けながら、熱いぬめりをじっくりと味わった。親友を相手に、何やってんだろ──一瞬だけ、変に冷静な思考が脳裏をよぎったけれど、それは腰のあたりをちりちりと焦がす快楽によって簡単に掻き消され、シンは夢中でレイの体を下から突き上げるように腰を進めた。<br />
「……ん…っ。……ふ、っ……」<br />
　レイの顔が僅かに揺れ、濡れた唇の隙間から息が洩れる。初めて男のものを咥えこんだ後ろの腔が引き攣れているのが分かる。しかし、彼が、「痛い」とも「苦しい」とも言わないことをいいことに、シンは、己の欲望のままに腰を動かし、彼の体内を抉った。首に縋り付いてきた両腕に抗うことなく、レイの顔に頬を擦り寄せ、夢中で耳朶にむしゃぶりつく。<br />
「……ん…っ、レイ……」<br />
繋がり合った部分から洩れるいやらしく潤んだ音と、ふたりぶんの体の重さを支えるベッドの軋みが、夕方の色に染まった室内に溶けて、消えていく。己の欲望を解消するためだけに動かしていた腰にレイの右脚が絡み付き、シンの律動に合わせて、彼の腰が揺れる。互いにタイミングを合わせて結合部を擦り付けると、自慰行為では得られないくらい強い快楽が、甘い痺れとなって脊髄を駆け抜けていった。レイの腕と右脚に力が籠もり、後ろの腔が再び、シンの熱の塊の根元をきゅうきゅうと締め付ける。<br />
「……気持ち、よく、なってきた……？」<br />
　レイの耳元で問うと、「……ああ……」と、泣いているような吐息が耳朶を掠め、シンの背中がさっと粟立つ。シンは、シーツとレイの背中との間に出来た隙間に両腕を差し入れ、汗ばんだ彼の体を強く抱き締めて、激しく揺さぶった。<br />
（もう少し……もう少しで──）<br />
頂点へ駆け上がっていく体を激しく震わせたその瞬間──<br />
「シン……」<br />
吐息混じりの微かな声が耳朶に絡み付き、シンは、レイの体内に熱い粘液を迸らせた。<br />
「あっ……ぁあっ」<br />
下腹を結合した部分に擦り付け、脈動とともに、腹の中で蠢いていた熱の固まりを放出する。体の奥から迫り上がってくる、とどまることを知らない欲望が、後から後から溢れ出し、シンはぎゅっと奥歯を噛み締めて下腹を震わせた。<br />
「……ごめ…、中に、出した……」<br />
ようやく全てを出し尽くし、荒い息とともに言葉を吐き出すと、レイは、返事の代わりに、シンの襟髪をそっと撫でた。まだ熱が引かない体を起こすと、互いの肌で擦れた白い粘液が、密着していた腹を繋ぎ、名残惜しそうに伸びて、ぷつりと切れた。<br />
「ごめんな……レイ」<br />
詫びながら、萎みかけた己のものをレイの体内から引き抜き、まだ先端から白いものが滲み出ている濡れそぼったそれと、彼の腹に散った粘液を丁寧に拭う。<br />
「合意の上でのことだ。……気にするな」<br />
返ってきた言葉に、シンはほっと息を吐き、<br />
「……ごめん。……ありがと」<br />
と、小さな声で呟いた。<br />
シンは裸のまま、レイの傍らに横たわり、風に揺れるカーテンの裾を目で追いかけている彼の端正な横顔を見つめた。ベッドルームを満たしている、夕方の色に染まった光に包まれて、普段よりも濃い金色に輝く髪をゆるく指に巻き付け、そっと唇を寄せる。<br />
（……やっぱ…気まずいな）<br />
　シンは、傍らに横たわるレイに気付かれないよう、そっと溜息をつき、<br />
「今日の晩飯……トマトソースの冷たいパスタでいい？」<br />
こちらから顔を背けたままの彼に問うと、彼は「任せる」と呟いて、小さく息を吐いた。<br />
「……うん。じゃあ、シャワー浴びて、すぐに準備するよ」<br />
そう言いながら起き上がろうとしたシンの腕に、温かいものが触れた。<br />
「どうした？」<br />
腕を掴むレイの手をそっと撫で、シンは問うように顔をかたむける。<br />
「……もう少しだけ、いいか？」<br />
こちらへ顔を向けたレイは、上体を起こしかけたシンの腕を引き、首筋に頬を寄せた。シンは、レイの柔らかな髪を撫で、彼の頬に唇の端っこをあてる。少しだけ顔を離し、互いの本心を探り合うように鼻のあたまを擦り寄せて、上目遣いにレイの機嫌を伺った。<br />
軽い音を響かせて、レイの唇と鼻のあたまに触れるだけのキスをする。レイはくすぐったそうに、きゅっと目を瞑り、唇の端を微かに上げた。<br />
もう一度、鼻のあたまにキスをすると見せかけて、彼の整った鼻にかじりつく。不意を突かれて眉根を寄せたレイに、仕返しとばかりに強く鼻を摘まれて、シンは顔を離し、レイの顔を見下ろした。<br />
目を伏せたレイの、面映さを滲ませた笑顔と、セピア色に染まった記憶の中で笑っている幼い面影とがうっすらと重なり、シンは、その懐かしさに目を細めた。<br />
<br />
<br />
了【しんとれいがなつにすきかってするほん（２００９／８　out）　寄稿】<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
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    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/31</id>
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    <published>2013-03-30T19:29:02+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:29:02+09:00</updated> 
    <category term="シンレイ" label="シンレイ" />
    <title>Smile lile a child.　－side shinn－③　※R18※</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[夢を見た──遠い昔の夢だった。<br />
<br />
大人たちに、子供だけで沖へ行くなと言われていたけれど、そんな言いつけを守っているヤツなんて誰もいなかった。救命胴衣代わりに浮き輪を持って、こっそりと沖へ向かい、カラフルな魚たちと一緒に珊瑚礁の上を泳ぎ回り、こっそりと浜辺へ戻る。<br />
沖から帰ってきたシンが、足ヒレを付けたまま浅瀬を歩いていると、波に浚われた小さな麦わら帽子が足元を横切っていった。岸の方へ視線を向けると、金髪の、見慣れない男の子が波打ち際で奇妙なダンスを踊っていた。波が引いた瞬間に前へ進み、再び押し寄せてくる波から必死の形相で逃げまどう。波が怖いのだろうか？<br />
沖の方へ流れていく麦わら帽子を掴み、男の子の方へ視線を向けると、彼は半分泣きべそだった顔を綻ばせて、こちらへ向かってぺこりと頭を下げた。<br />
シンは水中眼鏡を外し、波打ち際で待つ男の子の方へ歩み寄り、<br />
「これ、きみの？」<br />
と、問いかける。ちょっとだけ体を縮こまらせて、シンから目を逸らした彼は、視線を泳がせながら、<br />
「……うん。……あ…ありがとう」<br />
と、波に浚われてしまいそうなほど小さな声で言った。<br />
「旅行で、来たの？……海、こわい？」<br />
シンの問いかけに、彼は目を伏せたまま頷く。シンは、彼の、色白な頬に影を落としている、金色の長いまつげに目を奪われた。ふるふると震える睫の向こうに覗く、良く晴れた空の色を写し取ったかのように青い瞳。こんなにきれいな子供を見たのは、たぶん、初めてだった。<br />
「ひとりじゃ、つまんないだろ？いいもの見せてあげる」<br />
持っていた麦わら帽子を、彼が作ったらしい砂山に被せて、手を差し伸べる。頬を強ばらせ、差し伸べられた手を取るか否か、もじもじと迷う仕草を見せている彼の手を、痺れを切らしたシンは強引に掴み、引き寄せた。<br />
「僕──オレがついてるから、大丈夫」<br />
ばしゃばしゃと水しぶきを上げながら、へっぴり腰の男の子を引っ張って、太腿が浸かるくらいの深さまで歩いたシンは、立ち止まり、<br />
「海、入れたじゃん。怖くないだろ？」<br />
振り返って、にいっと笑った。<br />
彼は、海に浸かっている足元とシンの顔を交互に見遣り、繋いだ手にきゅっと力を籠めて、<br />
「うんっ」<br />
と、大きく頷き、はにかんだ笑顔をこちらへ向けた。<br />
<br />
<br />
【つづく】<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
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    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/30</id>
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    <published>2013-03-30T19:26:08+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:26:08+09:00</updated> 
    <category term="シンレイ" label="シンレイ" />
    <title>Smile lile a child.　－side shinn－②　※R18※</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[「準備、出来たぞ」<br />
レイの声にハッと我に返ったシンは、浮き輪を抱えて振り返る。鍛え上げられた上半身が視界に入ったその瞬間に、再び、腹の奥の方から奇妙なざわめきが突き上げてくるのを感じ、水着姿のレイから、そっと目を逸らした。遣り場を失くした視線を宙にさまよわせながら、レイの左側に立つ。彼の温もりが肩に触れたのを合図にゆっくりと歩き始め、リビングを出て、ビーチ・チェアーの脚元に置いていた足ヒレを抱え、海へ向かった。<br />
昼食後の腹ごなしにシンが作り上げた砂山の傍らに、レイは、握っていた杖を置く。ゴーグルと足ヒレを装着したシンは、体の右側をレイの肌に密着させて、腰を抱え上げるように後ろから手を回した。手助けを素直に受け入れて貰えたことに微かな喜びを感じながら、波を押し分けて沖へ進む。腰のあたりの深さまで浸かったところで、レイを浮き輪に掴まらせて、シンは勢い良く海底を蹴った。海面に寝転がり、目に染みる空の青色と、レイとを交互に見遣り、目的のポイントを目指した。<br />
しばらく無言で浮き輪に掴まっていたレイだったが、底に足が届かなくなったその瞬間に、ゴーグルを装着し、右手を軽く上げて、海中へと姿を消した。<br />
「レイ！？」<br />
シンは慌てて潜り、海中に沈んだレイの姿を探す。レイは珊瑚礁の上を、動く方の脚を器用に使って、魚のようにきれいなフォームで泳いでいた。シンは、穏やかに凪いでいる海面に浮き輪を残してレイの後を追う。海面を漂う浮き輪を拠点にして、ふたりは、時間を忘れて潜水と浮上を繰り返した。<br />
地球の重力から僅かに解放され、動かしやすくなった脚で水を蹴り、珊瑚礁群の隙間を縫うように泳いでいくレイの後ろ姿を眺めながら、シンは、セピア色の記憶の中にいる、海を怖がっていた少年は、今、どうしているのだろうかと、ぼんやりと考えを巡らせた。<br />
思い出してみれば、あの少年の外見の特徴はレイと同じだ─まさか、な……。脳裏をよぎった可能性を一笑に付して、シンは、先を泳いでいるはずのレイの姿を探した。<br />
（……レイ……？）<br />
意識を過去へと飛ばしている間に、彼の姿を見失ってしまった。シンは、一旦、海面に顔を出し、新鮮な空気を大きく吸い込んで再び潜水した。しばらくの間、色とりどりの魚たちと一緒に付近を回遊していると、珊瑚礁群から僅かに離れた海底に、右足を抱えてうずくまるレイの姿を見つけて、シンは強く水を蹴り、体を前進させた。近付いてくる気配に気付いて顔を上げたレイは、微かに口元を歪めて、ばつが悪そうに笑った。<br />
こちらへ伸びてきたレイの腕を掴み、海面に漂う浮き輪の影をめがけて共に浮上する。<br />
「大丈夫か？」<br />
海面に顔を出したその瞬間にレイは激しく咳込み、シンは、彼の背中をそっとさすった。問いかけに、ゴーグルを外したレイが小さく頷いたのを見届けたシンは、ほっと息を吐き、浮き輪に掴まって肩で息をする彼を半ば衝動的に抱き寄せ、胸と胸とを密着させた。激しく脈打つ互いの鼓動を重ね、濡れたプラチナブロンドに頬を寄せて、目を閉じる。やはり、あの日から、レイに対する自分の中の何かが、完全に変質してしまっている。病室のベッドの上で泣きじゃくるレイを抱き締めたその瞬間、胸に灯った小さな明かり。それは、ステラやルナマリアへ向けていたものに良く似ていたけれど……それよりも、もっと凶暴で邪な──<br />
「部屋に戻ろう」<br />
レイの呼吸が落ち着くのを待ってから、シンは浮き輪を引っ張りながら岸へ向かう。浅瀬で足ヒレとゴーグルを取り、レイに、それらと浮き輪を押し付けて、彼に背中を向け、しゃがみこんだ。<br />
「……何の真似だ？」<br />
「足、両方ともうまく動かないだろ。だから、おんぶ」<br />
シンの背中に、沈黙が圧し掛かる。<br />
「キツイ時には甘えてよ、レイ。オレが今までずっとレイに支えてもらってたみたいに、オレも、レイを支えたいんだ。もう、ひとりで抱え込むの、やめにしよう。オレ、頼りないかもしれないけど、頑張る、から」<br />
言うと、レイは小さく息を吐いて、シンの背中にそっと触れた。<br />
「……甘えさせて貰う」<br />
シンの首に、レイの腕が遠慮がちに纏わりつく。彼の冷えた肌が背中に密着し、耳のすぐ後ろに息遣いを感じたその瞬間に首筋がざあっと粟立ち、シンは思わず息を呑んだ。<br />
夕方が近付くにつれて、少しずつ、潮が満ちていく。波に浸食されて崩れかけた砂山へ歩み寄り、シンは、おぶっているレイを落とさないよう慎重に腰を屈め、濡れた杖を取り上げた。ふたり、無言のままコンドミニアムへ向かい、テラスのビーチ・チェアーにレイを座らせた。<br />
「足、伸ばしてよ」<br />
ビーチ・チェアーの肘掛けに杖を立て掛けたシンは、レイの足元に膝を付き、硬く引き攣れた彼の右脚を丁寧に揉み解していく。<br />
「……すまない」<br />
申し訳なさそうな顔をするレイに、シンは小さく頭を振り、「気にすんな」と返す。手の中にある、細いけれどまだ衰えを知らない筋肉の感触が妙に嬉しくて、シンは口元を綻ばせた。<br />
「珊瑚礁、きれいだったろ？」<br />
問うと、レイは頷いて、<br />
「ああ。忘れかけていた、遠い昔の記憶がよみがえった」<br />
と、言葉を返した。<br />
「見たことあったんだ？」<br />
「色々あって、すっかり忘れてしまっていたが、な」<br />
「へぇ。どこで？」<br />
「どこだったかは、忘れてしまったが……ここと同じ、海が綺麗な場所だった。初めて見る海と波が怖くて、波打ち際で一人遊んでいた俺を、同じ年くらいの地元の少年が沖まで連れ出してくれた。一人の時には恐ろしくてたまらなかった海が、その時だけは、とても楽しかったのを、思い出した」<br />
レイは、遠い昔に繋がる記憶の糸を、ゆっくりと丁寧に手繰り寄せる。脚を揉みほぐす手を休めて顔を上げたシンは、目を細めて空を仰ぐレイの顔をじっと見つめた。<br />
さっきまで、虫食い穴みたいに欠けていたパズルのピースが、ひとつずつ正しい場所へと寄り集まってくる。<br />
「どうした？」<br />
怪訝そうな目をこちらへ向けたレイに、シンは、<br />
「さっき、レイが言ってた『同じ年くらいの少年』って、もしかしたらオレかもしれない」<br />
言って、口の端を僅かに上げた。<br />
「オレの中にも、似たような思い出があるんだ─なあ、レイ。その時、麦わら帽子を波に持って行かれただろ？んで、初めての海で、波が怖くて拾いに行けなかった……違う？」<br />
「……正解だ。それを拾って、俺に珊瑚礁を見せてくれたのは──」<br />
「──やっぱり、オレだ」<br />
二人で顔を見合わせて、なんだか、とても不思議な気分になった。冷静沈着、常に仏頂面のレイと、遠い昔に逢った、人見知りでシャイな少年とが、頭の中で上手く結びつかなくて、シンは、こみ上げてくる笑いを口内で噛み殺した。<br />
「だが……アカデミーで再会した時、お前の顔を見ても、思い出しもしなかったな」<br />
「オレも、思い出さなかったけれど……オレの場合は、たぶん、オーブ侵攻の爆撃の記憶で、ここでの楽しかった思い出とか、全部、掻き消されてしまっていたのかもしれない。あの頃は、ここを憎むことで立っていられたようなもの……だったから」<br />
「楽しかった思い出が、つらい記憶に上書きされてしまった、か。……俺も、似たようなものだな。それに……」<br />
「それに？」<br />
「あの時の闊達な少年が、全身に、険と、自分自身さえも傷つける棘を纏って目の前に現れるとは思ってもみなかったから……同じ人物だと、認識出来なかったのだろう」<br />
「それを言うならレイだって。あーんな天使みたいに可愛かった子供が、すっげぇ無口で仏頂面になってるなんて思うもんかよ」<br />
「色々あったからな。……お互いに」<br />
「そうだな。……よし、終わりっ！シャワー浴びようか。後で背中にローションも塗ってやるよ」<br />
シンは、マッサージの仕上げに、レイの足首をくりくりと回した後、そっと砂の上に降ろした。<br />
「すまない」<br />
「気にすんなってば」<br />
また、申し訳なさそうな顔をするレイを笑い飛ばし、杖を支えにして立ち上がる彼をサポートしながら、テラスからリビングへ戻った。<br />
背伸びして借りたコンドミニアムは、リビング、ダイニング、キッチンと、ツインのベッドルームが二部屋、バスルームも二つ──二人きりで生活するには充分すぎる広さだった。メインのバスルームをレイに譲り、シンは、ベッドルームに付属した小さなバスルームへ向かい、手早くシャワーを浴びた。日差しが最も強い時間帯に泳いだせいか、焼けた背中がひりひりと痛む。何もかもが丈夫に出来ているコーディネイターの自分でさえ痛むのだから、レイの背中は、今夜、相当に酷い有り様になるかもしれない。もっと早い時間にレイを誘い出せばよかったと、シンは内心に舌打ちをした。<br />
水着からハーフパンツに着替えたシンは、上半身は裸のまま、備え付けのドレッサーに置いていた、日焼けの炎症を抑えるローションを取り、背中に塗りながら、レイがバスルームから出てくるのを待つ。ベッドの端に腰を降ろし、ローションをたっぷりと浸したコットンを、鼻の頭と頬に貼り付けている真っ最中にベッドルームの扉が開き、顔を覗かせたレイが、ぶっと吹き出すように笑った。<br />
「笑うなぁ！」<br />
叫ぶと、レイは肩を震わせながら「すまない」と詫びて、シンの隣に腰を降ろした。<br />
「Ｔシャツを脱いで、背中向けてくれる？」<br />
シンは、掌にたっぷりとローションを落とし、痛々しいほど赤く焼けたレイの背中に、丁寧にそれを伸ばしていく。やはり、夜には軽い火傷のような状態になりそうだ。シンは小さく溜息をつき、露わになったレイの背中をそっと撫でた。<br />
「背中は、終わり。今度はこっち向いて」<br />
素直にこちらを向いたレイの火照った頬と鼻の頭に、ローションでひたひたに湿らせたコットンを、どぎまぎしながら乗せていく。ぎゅっと目を閉じたレイは、唇の端を微かに上げて、「気持ちが良いな」と、シンに聞かせるでもなく呟いた。<br />
「だろ？昔、泳いだ後に、母さんと妹がやってたんだ。火照りが早く取れるんだってさ」<br />
「そうか……」<br />
気遣わしげな視線を、ちらりとこちらへ向けたレイは、薄く開いた唇の隙間からふうっと息を吐き、首のうしろを軽く揉みほぐした。<br />
「疲れた？」<br />
尋ねると、レイは視線を床に落として頷く。<br />
「晩飯まで、寝たらいい」<br />
「……そうさせて貰う」<br />
言って、レイは、動かない脚を引き摺るようにベッドの上を移動して横たわり、天井を仰いだ。蓋を閉めたローションをサイドテーブルに置いたシンも、隣のベッドに、ごろりと寝転がった。<br />
開け放たれた窓から流れ込む心地よい風に、白いレースのカーテンがふわりと舞い踊り、その隙間から、良く晴れた青い空が覗く。<br />
シンは、次第に遠くなっていく潮騒の響きに耳を傾けながら、少しずつ重さを増していく瞼をそっと閉じた。<br />
<br />
<br />
【つづく】<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
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    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/29</id>
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    <published>2013-03-30T19:24:18+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:24:18+09:00</updated> 
    <category term="シンレイ" label="シンレイ" />
    <title>Smile lile a child.　－side shinn－①　※R18※</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
（……まだ、きれいな姿で残っていたんだな）<br />
<br />
眼下に広がる珊瑚礁をゴーグル越しに眺めたシンは、僅かに頬を緩めた。<br />
　所々に墜とされた機体の残骸が残ってはいるものの、海の深くに横たわる世界は、この洋上で渦巻いた戦火がまるで夢であったかのような、穏やかな表情をこちらへ向けている。この美しい場所にそぐわない残骸も、時を経て朽ち果て、いずれ、魚たちの住処となるのだろう。<br />
肺に溜めた息を少しずつ吐きながら、ヒレを付けた足でゆるりと水を蹴ると、重力から解き放たれた体が、ほんの僅かな力で、ぐんと前進する。自分と、眼下を泳いでいる、南国特有のカラフルな魚たちとが同じものであるかのような錯覚に身を委ねながら、シンの胸をよぎった、ある既視感─遠い昔に、誰かと、同じ風景を見たことがある……かも知れない。シンは、故郷を発つ直前の鮮烈な記憶に上塗りされた、色褪せて、失われかけている記憶の断片に、慎重に手を伸ばした。<br />
──誰と？<br />
確か、同じ年くらいの男の子で、プラントからの旅行者だと言っていた。<br />
──名前は？<br />
聞くのを忘れていた。<br />
──顔は？<br />
良く憶えていない。けれど、陽の光の粒をきらきらと反射させていた薄い金色の髪と、良く晴れた空と同じ色の瞳だけは、妙に、印象に残っている。<br />
海中で息を吐ききったシンは、水面を目がけて体を浮上させた。海面に顔を出したその瞬間に、かつて、ここで出会った少年の大まかな輪郭が、酸素が足りずにぼんやりとしたあたまの中で霧散してしまい、シンは内心に舌打ちをした。<br />
ゴーグルを外して、遠く、岸の方を振り返る。長期滞在のために背伸びして借りたコンドミニアムからプライベートビーチを望むテラスに、レイの姿があった。彼は、目に眩しいオレンジ色のパラソルの下で、ビーチ・チェアーに腰を下ろし、バカンスに来てまでも小難しい本を読み耽る。<br />
良く晴れた空を見上げ、目を細めながら、再びゴーグルを装着して、シンは岸へ向かう。浅瀬で足ヒレとゴーグルを外し、砂浜を駈けて、レイの傍へ向かった。読書に夢中になっていたレイは、駆け寄ってくるシンの気配を察知して顔を上げ、膝の上に開いていた分厚い本を閉じ、ビーチ・チェアーの背もたれと彼の背中の間にそれを避難させた。<br />
シンは、レイのすぐ傍に立ち、水浴びをした後の大型犬よろしく頭と体を激しく振り、容易に逃げ出すことが出来ない彼に水飛沫を浴びせかける。シンが近付いてくることに気付いたその瞬間から、レイの眉間に寄っていた皺が更に深さを増し、レイは、怒りと呆れの入り混じった溜息をついた。<br />
「レイも、泳がないか？懐かしい場所が、まだ、きれいな姿で残っていたんだ」<br />
「……懐かしい？」<br />
すっと細めた目をこちらへ向けるレイに笑みを返し、シンは、彼へ手を差し伸べる。<br />
「ここがリゾート開発される前、オレ達の遊び場所だったって言ったろ？沖に、珊瑚礁のきれいな場所があるんだ。せっかくだから、レイにも見せたい」<br />
言うと、レイは目を伏せて、顔を小さく横に振った。<br />
「怖い？……大丈夫だよ、オレがついてる。浮き輪だってあるし、せっかくオーブまで来たんだから、一度は海に浸かっておけよ」<br />
小脇に抱えていた足ヒレをビーチ・チェアーの脚元に置き、レイの腕を掴んで強引に引っ張ると、彼は強張っていた頬を少しだけ緩め、<br />
「……そうだな。着替えてこよう」<br />
そう呟いて、ビーチ・チェアーの肘掛けに立て掛けていた杖を握り、慎重に立ち上がった。<br />
自由に動かない左脚の代わりに、握った杖を支えにして、テラスからリビングへ向かうレイの左側に回ると、同じ高さの肩に、彼の手がそっと触れる。シンは唇の端っこを微かに上げて、レイが歩くのと同じ速さで足を進めた。<br />
メサイアから瀕死の状態で発見された時、崩落した瓦礫に押し潰されてしまっていたレイの左脚。以前のように、自由に動かせるようになることは、二度とないだろう。医師によって、その現実を突き付けられた瞬間にも、彼は眉ひとつ動かさなかった。<br />
『オレがレイの足になる』<br />
普段と変わらない横顔を見つめながらそう伝えた時、『その必要はない』と、無表情で言い放ったレイがようやく許してくれた、「甘え」──冷えた肩に乗せられた手の温もりが、なんだか、妙にこそばゆい。<br />
リビングのソファにレイを座らせて、シンは、ベッドルームのクローゼットに押し込んでいたマリンショップの袋を取り出した。リビングへ戻り、水着とゴーグルのタグを切って、それらをレイへ手渡すと、<br />
「派手過ぎるだろう……」<br />
鮮やかな青と紫で描かれたハイビスカスのような図柄を目にしたレイが眉根を寄せて、ひとりごちる。<br />
「そう？……じゃ、オレのと交換する？」<br />
マリンショップの袋から取り出した大きな浮き輪に、フットポンプで空気を送り込みながら言葉を返すと、シンが身に着けている水着の、手の中にあるものと似たり寄ったりの珍妙な図柄を凝視したレイは、<br />
「……これでいい」<br />
と呟いて、Ｔシャツとハーフパンツを脱ぎ捨てた。色白な背中と、無防備に晒け出されたお尻が視界に入り、シンは思わず目を逸らす。<br />
（バッカじゃねぇの、オレ。……自分と同じモノだろ。同じモノに心臓バクバクさせて、どうするんだ……）<br />
心臓が耳元に移動してきたみたいに、やけにうるさく鳴る鼓動。それを振り払うように頭を揺らし、フットポンプを踏むリズムを早めた。背後から聞こえてくる衣擦れの音が、あたまの中に、大きく響く。アカデミーで出会ってからずっと、同じ部屋で生活してきたけれど、レイの存在を、こんな風に、変に意識したことなど、断じて、なかった。<br />
やっぱり、『あの日』から、何かがおかしい。<br />
シンは、ぱんぱんに膨らませた浮き輪の固さを確かめながら、ひとつ溜息をついた。<br />
<br />
<br />
あの日──<br />
崩壊したメサイアから瀕死の姿で救出され、昏睡状態だったレイが七日ぶりに目を覚ました、あの日。ベッドに横たわるレイの両腕がこちらへ伸び、彼と再び言葉を交わすことが出来る喜びに打ち震えていたシンの背中に絡み付いた。<br />
「……ごめんなさい」<br />
怪我人とは思えない程の強い力で抱き締められ、涙混じりの声と熱く湿った吐息が耳朶を掠めて、生ぬるい雫が首筋を濡らす。強い人間だと信じて疑わなかったレイの、弱々しく震える声に心臓が大きく跳ね、背中にしがみついてくる体を、シンは、彼のそれよりも大きな力で抱き返した。<br />
ごめんなさい──そう繰り返しながら泣きじゃくるレイの背中を、シンは戸惑いつつも、子供をあやすように撫でさすりながら、今までに彼に対して抱いたことのない感情が、腹の底の深い部分から沸き上がってくるのを感じていた。それは、かつて、ステラやルナマリアに向けていたものと良く似ているような気がした。<br />
駆けつけた医療スタッフによってすぐに鎮静剤が打たれ、少しずつ力が抜けていく彼の体を、シンは抱き締め続けた。<br />
「レイはオレが守るから」<br />
彼の耳元で、馬鹿みたいにそう繰り返しながら。<br />
その後、再び目を覚ましたレイは、しがみついて泣きじゃくっていたことなど、憶えてはいないようだった。<br />
ごめんなさい──この言葉を、自分に言っているのではないということは、直感的にわかっていた。しかし、レイが、誰に向けて詫びていたのか、自分の向こう側に誰を見ていたのか、皆目見当がつかなかった。<br />
<br />
戦後処理が一段落つき、一人で過ごすには長過ぎる休暇を与えられた。塞ぎこみがちなレイのリハビリを兼ねて、退院に合わせてバカンスを計画し、ほとんど無理矢理、彼をオーブまで連れ出した。<br />
本当は、どこか別の南の国へ行くつもりだった。けれど、知らない土地で戸惑い、体を自由に動かすことが出来ないレイに不便な思いをさせるよりも、ある程度、勝手が分かっていた方がいいと思ったから、旅行先をオーブに決めた。<br />
オーブに滞在して、四日。レイは、日がな一日、波の音を聞きながらテラスで読書に耽り、シンは海に潜る。アカデミーの寮やミネルバで過ごしていたのと同じように、互いに干渉し過ぎることなく、穏やかな共同生活を送っていた。<br />
<br />
【つづく】<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
  </entry>
  <entry>
    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/28</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://shinnreylog.blog.shinobi.jp/%E3%82%B7%E3%83%B3%EF%BC%86%E3%83%AC%E3%82%A4/albireo%E3%80%80%E2%91%A2" />
    <published>2013-03-30T19:16:59+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:16:59+09:00</updated> 
    <category term="シン＆レイ" label="シン＆レイ" />
    <title>Albireo　③</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
「シン……そこに、いるのか？」<br />
深い吐息と共に覚醒したレイは、手を伸ばし、ベッドの端に腰を下ろしたシンの太腿に触れた。<br />
「……いるよ」<br />
　シンは答えて、まだ震えが止まらない手を、彼のものにそっと重ねる。<br />
「手の震えが、止まらないんだ。……さっきから、ずっと……」<br />
　涙を滲ませた声で、シンは呟く。<br />
「オレ、レイを殺そうとした……」<br />
「気に病むな。お前を追いつめてしまったのは、俺だ。お前は、何も悪くない……悪くないんだ、シン」<br />
　レイは、小刻みに震えているシンの手を、手首を返し、下から強く握り返す。<br />
「シン。顔を、見せてくれ」<br />
　レイは、シンの太腿に乗せた手を支えにして、まだ自由に動かすことの出来ない身体を慎重に起こし、シンの鼻先に顔を近付け、眉根を寄せた。<br />
「……目が、真っ赤だ」<br />
「赤い目は、生まれつきだよ」<br />
「そういう意味じゃない」<br />
「……わかってる」<br />
「頬も、酷く腫れている。……すまなかった……本当に」<br />
　レイは、シンの肩に額を乗せて、詫びる。シンは口元に微かな笑みを浮かべて、顔を小さく横に振った。<br />
「いいんだ。オレは、大丈夫。……明日、ルナに、レイに殴られたって報告しなきゃ」<br />
「……そんなことをしたら、ルナマリアに、要らない心配を掛けてしまう」<br />
「大丈夫。きっとルナは、喜んでくれる──殴り合いが出来るくらい、レイが元気になった、って」<br />
　シンは、レイに掴まれていない方の手を彼の背中へ回して、痩せてしまった身体を強く抱きしめ、柔らかなプラチナブロンドに頬を擦り寄せる。<br />
「本当はここに来たいけど、今は何も出来ることがないから、レイが立ち直るまで待ってるって言ってた。……ルナも、心配してるんだぞ」<br />
「そうか……それは、すまないことをした……」<br />
　涙声で呟いたレイは、シンに寄り掛かったまま、細く息を吐いた。<br />
<br />
しばらくの沈黙の後、レイは何かを決意したように顔を上げた。薄く開かれた口から漏れる吐息が震えている。こちらへ真っすぐに向けられた瞳が躊躇うように揺れ、潤んでいくそれを隠すように、彼は再び、目を伏せた。<br />
「何か、話したいこと……あるのか？」<br />
　俯くレイの髪を優しく撫で、シンは問いかける。<br />
掴まれていた手に力がこもり、シンは、レイの手を同じ強さで握り返した。<br />
「俺は……議長を撃ってしまった」<br />
　レイは、今にも泣き出しそうな声で呟く。<br />
「──え？」<br />
　シンは眉をひそめて、レイに触れていた手を離し、項垂れた彼の顔を覗きこむ。<br />
「どう、して……？」<br />
　レイの肩に触れて、ようやく声を絞り出すと、彼は力なく顔を横に振り、唇の隙間から嗚咽を漏らした。<br />
「……俺は……俺は、議長が望む、誰も争うことのない世界を作り上げる手助けをして…死んでいければ良いと思っていた。それが、俺の望みでもある、と……それなのに……」<br />
　レイの頬を流れ、顎を伝い落ちた熱い雫が、繋いだ手を濡らす。<br />
「キラ・ヤマトと対峙して……彼が発した、たった一言で……今まで、心の奥底に沈めていた闇が、俺の前に現われて……一気に、飲み込まれてしまった。……撃破されて、それでも……議長を守るためにメサイアへ向かったはずなのに……頭が真っ白になって……俺は、衝動的に引き金を──」<br />
　レイがまばたきをするたびに、大粒の涙が零れる。シンは、強いと信じて疑わなかったレイが、脆く泣き崩れる姿を目の当たりにして、動揺する気持ちを、ようやく胸の奥に押し込め、彼の顔を真っすぐに見つめた。<br />
「──お前には、訳の分からない話だな。……すまない」<br />
　震える声で言って、レイは呼吸を整えようと、はあっ、と大きく息を吐いた。<br />
「いいよ、ワケ分からなくても。もう、いいから……抱えてたもの、全部吐き出しちゃえよ。心は軽くならないかもしれないけど、気持ちの整理はつくと思うんだ」<br />
　言いながら、シンはレイの頭のうしろに触れ、そっと抱き寄せる。レイは抗うことなくシンの肩に頬を寄せ、繋いでいない方の手で、上着の裾をぎゅっと握った。<br />
「……ずっと……心に引っ掛かっていたことがあった」<br />
「なに？」<br />
「ヤキンドゥーエで、俺と同じ痛みを知るひとが死んだ時、議長は、俺に言った。……『──だが、君もラウだ』と。……その時、俺は……俺は、あの人の代わりなのだと…そう、思ってしまった。彼のように、強く在らなくてはならない……ラウのように──ラウ…に……ならな…ければ……」<br />
　声を詰まらせてすすり泣くレイの形の良い頭を、シンは黙ったまま優しく撫でる。<br />
「言って、欲しかった。……本当は…ギルに……他の誰でもない……俺は俺だと……言って……。勝手に、絶望して……俺は……俺を育て、導いてくれた人に、なんて、酷いことを……」<br />
　レイは、くぅ、と小さく喉を鳴らして、嗚咽を噛み殺す。<br />
「それでも……議長は、レイを守ってくれた」<br />
　レイの目から止めどなく零れ落ちる温かな雫が、シンの肩をしっとりと濡らしていく。<br />
「意識を失くしていて、知らなかったかもしれないけど、レイの身体は、議長と艦長に守られていたんだ。オレも見たから、間違いないよ」<br />
　シンは、繋いでいた手を解き、小刻みに震えているレイの背中に回して、撫でさすった。<br />
「……かすかに、憶えている。爆発の音が近付いてきて、床が大きく揺れた。艦長が、俺を庇うように抱きしめてくれて……大きな爆発が来ると覚悟した瞬間に、議長が俺達の盾になるのを、艦長の肩越しに見た……それは、俺が都合良く……勝手に作り上げた幻なのだと思っていた……」<br />
　ごめんなさい──レイはしゃくり上げながら、何度も、何度も詫びる。<br />
　レイの濡れた頬に顔を寄せ、髪と背中を優しく撫でていくうちに、少しずつ、彼は落ち着きを取り戻していった。<br />
「とりあえず、横になろうか。……泣き疲れたら、そのまま寝ちゃえばいい」<br />
　シンは、唇の端っこを上げ、明るめの声色で言って、レイの背中を軽く叩く。<br />
　レイは、シンの上着の裾を握ったまま、手の甲で目元を擦り、小さく頷いた。身体を離そうとすると、彼に掴まれている裾が伸び、シンを繋ぎ止める。離す気配のない彼の手を眺めながら、子供みたいだ、と、シンは彼に悟られないようにひっそりと笑った。<br />
　人差し指の先でその手を軽くつつくと、レイは慌てて、繋ぎ止めていたシンを解放し、目を伏せて、ばつが悪そうに口元を歪めた。<br />
　壁際に身体を寄せたレイが、手前に作ってくれた身体の半分のスペースに潜りこみ、狭いベッドの上で、寄り添うように横たわる。<br />
「そういえば、ずっと同じ部屋だったけど、こんなふうに、一緒に寝るのって初めてだな」<br />
「……そうだな」<br />
　枕に顔を半分だけ埋めたレイは、涙声で答えて、小さく頷く。<br />
「なんだか、変な気分だ」<br />
　呟いて、シンは、レイの額に顔を寄せ、目を閉じた。<br />
レイは、他人の知らないところで、ずいぶんと無理をしていたんだな──シンは、そっと溜息をつく。<br />
レイが、彼の『正体』を話してくれた時には、こんな葛藤があったなんて、微塵も感じさせなかった。生まれた時から背負わされていた運命を、すべて受け入れて、達観しているような声色と態度に驚いたけれど……本当は、違った。レイは、ずっと、泣いていたのだ。どう足掻いても変えることの出来ない重い宿命を抱えて、彼の中の、彼自身さえも気付かないほど深い場所で、たったひとりで、ひっそりと──。<br />
「なぜ、泣いている？」<br />
　目頭に、レイの指先が触れる。<br />
「もらい泣き……した」<br />
　シンは薄く目を開けて、垂れてくる鼻水を啜り上げ、微かに笑った。<br />
「レイは、オレが守るから」<br />
　言うと、<br />
「俺は、お前に守ってもらうほど弱くはない」<br />
　レイは、シンを軽く睨み、低い声で呟いた。<br />
「確かに、オレより強いもんな。……戦争中、オレが弱ってる時に、レイはオレを支えてくれた。だから、レイが弱ってる時は、オレがお前を守る。これから先、ずっと、オレもレイも一人じゃないって、言いたかったんだ」<br />
「……だが、俺にはあまり、時間が……」<br />
「ちゃんとわかってるよ。でも今は、レイが無事だったことだけを喜びたいんだ。……停戦したのに……いくら待ってもレイは戻ってこなかった。オレは、戦後処理の混乱に乗じて……今は、剥奪されたけど……フェイスの権限を振りかざして、メサイアの調査隊へ強引に潜り込んだんだ。……司令室で、議長と艦長とレイを見つけた時には、オレ……頭をぶん殴られたみたいにクラクラして……レイだけだったけど、生きてるって確認した時、嬉しかった…すごく。……だから、今は、それ以上は言わないでくれよ」<br />
　シンは手を伸ばし、レイの頬に張りついた髪を梳き上げて、後ろへ流す。レイは頷き、まばたきをするたびに零れ落ちる涙を、手の甲で、乱暴に拭い去った。<br />
「涙、止まらないな。タオル持ってこようか？」<br />
　レイは、上体を起こそうとするシンの肘を掴み、顔を横に振った。行かないで欲しいと縋りつかれているようで、シンは、思わず、顔を綻ばせた。<br />
「レイは、本当は泣き虫だったんだな。全然、気付かなかった……けど、夜が明けたら『いつもの』レイに戻るよなぁ……あーあ、惜しいなぁ」<br />
　からかうように言ったシンを一瞥したレイは、拗ねたように顔をそむけ、寝返りをうって、シンに背中を向けた。<br />
　シンは、背後から、彼の温もりをしっかりと抱きしめて、目を閉じた。目頭から熱い雫が零れ落ち、枕を濡らす。<br />
シンは、彼に悟られないよう、薄く開いた唇の隙間から、こみ上げてくる苦い息をそっと解放し、レイの肩に顔を埋めて、彼の匂いを鼻腔に満たした。<br />
<br />
<br />
<br />
　夜明け前、ふと目を開けると、腕の中にいたはずのレイの姿はなかった。<br />
「──レイ？」<br />
　彼が眠っていた場所を探ると、まだ、ほんのりと、温もりが残っている。<br />
　シンはゆっくりと起き上がり、部屋を出た。廊下の突き当たりのドアを開けると、ダイニングテーブルの上に据えた情報端末の前に、目を真っ赤に腫らしたレイが座っていた。<br />
「おはよう……眠れなかったのか？」<br />
「いや。完全に、目が覚めてしまっただけだ」<br />
　レイはぎこちなく笑い、キーボードを叩く手を止めて、こちらへ顔を向ける。シンは、レイの傍らに立ち、手を伸ばして、薄い色の睫毛についた水滴を、指先で掬い取った。<br />
「また、泣いた？」<br />
「少し、な」<br />
「なんで？」<br />
「……メールボックスに、メッセージが届いていた……議長から、俺宛てのメッセージを託されていた人がいたらしい。メールには、議長が亡くなったら、代わりに、俺に送信するように言われていたと書いてあった」<br />
　レイは、潤んだ目を伏せて、細く息を吐いた。<br />
「議長は、なんて？」<br />
「……生きろ、と……」<br />
「そっか……」<br />
　シンは頷いて、シンクの方をちらりと見た。水を滴らせたグラスが、水切りに伏せられている。その傍らのビニル袋の中身は、おそらく、昨夜、シンクの中に投げつけた食器の破片だろう。<br />
「グラスと、割れた食器……片付けてくれたのか。……ごめん……ありがとう」<br />
「いや……。悪かったのは俺だ。謝らないでくれ」<br />
　レイは顔を横に振り、呟く。<br />
「お前が起きたなら、少し、部屋に籠りたい。報告書と、連絡を取らなければならない場所がある」<br />
「ああ。でも……あまり、根を詰めるなよ」<br />
「分かっている」<br />
「腹減ったら、冷凍庫の中に食えそうなものがあるから……」<br />
　頷き、電源を落とした情報端末を小脇に抱えて、部屋へ向かうレイを追いかけるように、シンも、自室へ戻った。<br />
　身支度を済ませて、レイの部屋の前に立ち、軽くドアを叩く。短い返事の後にドアが開き、隙間から覗いたレイの顔を見たシンは、安堵の溜息を漏らした。まだ、完全に元通りという訳にはいかないけれど、もう、心配する必要はない。<br />
「行ってくるよ」<br />
「……気をつけて」<br />
　背後にレイの気配を感じながら、シンは、玄関のドアを開けた。<br />
　ドアから手を離すその瞬間に振り返り、レイを見る。ドアの傍らに立ち、面映ゆそうに笑って軽く右手を上げるレイに、シンは微笑みを返して、ドアを閉めた。<br />
<br />
　それから三日間、レイは部屋に籠もり、作業を続けた。ほとんど顔を合わせないことは、以前と変わらなかったけれど、ベッドの上に置かれた、きれいに畳んである洗濯物や、シンクの脇の水切りに伏せられた食器を見て、シンは胸の前で拳を握り、「よし！」と、小さな歓喜の声を上げる。<br />
「明日、買い出しに行かなきゃな」<br />
　空っぽになった冷凍庫を眺めながら、シンは、にんまりと笑った。<br />
<br />
　買い物袋を提げたまま、玄関のドアを開けると、部屋の奥から押し寄せてきた旨そうな匂いに、空っぽの胃がきゅっと縮んだ。晩飯の匂いに出迎えられたのは、オーブにいたとき以来だ──シンは足早に廊下を歩き、突き当たりのドアを開けた。<br />
「お帰り」<br />
　フライパンとフライ返しを握ったレイがこちらへ顔を向けた。<br />
「た……ただいま。何やってんだ？」<br />
「料理、だが」<br />
「ええ…っと。これは、ハンバーグ……だよな」<br />
皿に盛り付けられた黒い物体を見て、頬を引き攣らせながら問いかけると、レイは大真面目な表情で頷いた。<br />
「着替えてこい」<br />
「うん」（……匂いは良かったんだけどなぁ）<br />
　シンは首を傾げながら、持っていた買い物袋をレイに預けて、自室へ向かった。<br />
　着替えを済ませてダイニングへ戻り、レイの対面の椅子を引き、腰を下ろして、ハンバーグらしき物体と対峙する。<br />
「い、いただきます」<br />
　正面から、レイの鋭い視線を感じながら、シンは、恐る恐る、皿の上の『物体Ｘ』にフォークを突き刺し、口へ入れた。<br />
「……う…ぐ。……すっげぇ固いけど、旨いよ。……うん、旨い……」<br />
「無理は、するな」<br />
「いや、ホントに……見た目はアレだけど、味はいいよ」<br />
「それは、褒めているのか？」<br />
「もちろん！」<br />
　大袈裟に頷くと、レイは眉根を寄せて、「次は見てろよ」と、小さく呟いた。<br />
　黙々と『物体Ｘ』を口へ運ぶレイをちらりと見ながら、そういえば、アカデミーやミネルバの食堂のような賑やかな場所以外で、二人きりで食事をするのは初めてだということに気が付いた。再び、同じ時間を共有し、これから先、新たな『初めて』を積み上げていくことが出来る喜びが、じんわりと胸の中に広がっていく。<br />
「俺の顔に、何か付いているか？」<br />
　強い光を放つ空色の瞳をこちらへ向けられて、シンは笑いながら、顔を小さく横に振った。<br />
「また、レイと飯を食うことができて、嬉しいなって思ってた」<br />
　言うと、レイも微かに笑い、頷いた。<br />
「ああ、そうだ。軍服を、クリーニングに出してくれていたのだな。ありがとう」<br />
「ん……。レイがいつでも復帰できるようにな。ズボラなオレにしては、上出来だろ？」<br />
「お前が、こんなに面倒見の良い奴だとは思っていなかったから、正直、驚いた」<br />
「意外？……オレ、一応、『お兄ちゃん』だったんだけどな」<br />
「そうだったな。……今朝、報告書を提出して、軍へ復帰する意向も伝えた。あとは、出頭命令が下るのを待つだけだ」<br />
「え？……その件は、あの人が……」<br />
「お前は、ちゃんと責任を果たしたのだろう？<br />
俺だけが、逃げる訳にはいかない」<br />
「大丈夫か？」<br />
「心配するな」<br />
「うん」<br />
「それから……もしも、ここに戻ってくることが出来たなら、その後、三日ほど留守にする」<br />
「なんで？」<br />
「俺に、議長からのメッセージを代理送信してくれた人の所へ行ってくる。その人は、かつて、議長の助手をしていた人で、今は遺伝子欠陥の治療法を研究している……水面下で、俺が飲んでいる薬を作ってくれていた。薬の受け取りと、少し、治療を受けたい。……議長と艦長が守ってくれたこの身体を、少しでも長く持たせたいから……」<br />
　言って、レイは、しだいに潤んでいく瞳を隠すように伏せて、今にも泣き出しそうに口元を歪めた。<br />
「わかった。オレ、ここで、レイが帰るのを待ってる」<br />
「ありがとう」<br />
　目尻に浮かんだ涙の粒を素早く拭い、レイは視線を上げて、シンの顔をじっと見た。「なに？」と、問うように首を傾げると、<br />
「また、同じ部屋で生活する日が来るなんて、思ってもみなかった」<br />
　レイは目を細めて、笑った。<br />
「じゃあ……あらためて、よろしく」<br />
　握っていたフォークを皿の上に置き、レイへ手を差し出す。<br />
「こちらこそ」<br />
　言いながら、レイは、その手を強く掴んだ。シンは、レイの力以上の強さで、彼の手を握り返す。挑発されて、レイの口の端が僅かに上がった。<br />
「う……っ」<br />
更に強い力で手を握られて、指の付け根が鈍く鳴り、シンは顔を顰める。<br />
「シン……」<br />
「なに？」<br />
「痛い」<br />
「オレも」<br />
「離せ」<br />
「やだ」<br />
「なぜ？」<br />
「負けるのは嫌だから」<br />
「馬鹿か」<br />
「お互い様だろ？」<br />
しばらくの間、不毛な攻防戦を繰り広げた後、視線を合わせ、ふたり、ほとんど同時に吹き出すように笑った。<br />
<br />
<br />
了【Vanilla（２００８／９／２８ out）寄稿】<br />
<br />
<br />
]]> 
    </content>
    <author>
            <name>藤</name>
        </author>
  </entry>
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    <id>shinnreylog.blog.shinobi.jp://entry/27</id>
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    <published>2013-03-30T19:12:52+09:00</published> 
    <updated>2013-03-30T19:12:52+09:00</updated> 
    <category term="シン＆レイ" label="シン＆レイ" />
    <title>Albireo　②</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<br />
　朝、温めた食事をトレーにのせてレイの部屋へ運び、机の上に置く。夕方、家に帰った後に、手を付けていない状態で残されたトレーをキッチンへ戻し、容器に詰め替えて冷凍庫に入れ、保存する。夜に、今日こそは食わせてやると、皿とスプーンを持ったままレイの傍らで粘るけれど、結局、ベッドの上で膝を抱き、顔を伏せて、固く縮こまったままの彼に根負けしてしまい、机の上にトレーを置いて、部屋を出る。<br />
毎日、同じことを繰り返しているうちに、冷凍庫に眠っている、一口も食べて貰えなかったシチューのストックが、少しずつ増えていった。<br />
　何をしていても、どこにいても、レイのことが気になって仕方がない。<br />
シンは、ベンダーにコインを入れて、コーヒーの釦を押した。狭い取り出し口に手を突っ込み、冷えた缶を乱暴な手付きで取り出す。<br />
「ずいぶん、追い詰められた顔をしてるわね」<br />
　隣のベンダーで買い物を済ませたルナマリアが、こちらを見て、微かに笑う。<br />
「たった四日しか経ってないのに……そんなに酷いカオしてる？」<br />
「少しだけ……レイは、まだ塞ぎこんでいるのね」<br />
　シンは、ルナマリアの言葉に小さく頷き、傍らのベンチに腰を下ろして、缶の蓋を開けた。ルナマリアは、シンの前に立ったまま、缶に口を付けて喉を潤す。<br />
「レイ、さ……メシを食わないんだ。無理矢理にでも食わせようとしたけど、顔を上げてくれない。それで……時々、声を荒げてしまいそうになる。オレ……最悪だ」<br />
　呟いて、シンは、甘みの少ないコーヒーを胃の中へ流し込む。濃い液体が溜まった部分に、妙な重苦しさを感じて、軽く腹をさすった。<br />
「でも、薬は飲んでいるみたいだから……生きるのを諦めている訳ではないんだろうけど……」<br />
「薬？」<br />
「えっ？あ……ああ、えーっと……病院で貰った薬。火傷の……かな？……ほら、バイキン…とか、入ったらやばい、だろ？」<br />
　慌てて取り繕うシンの様子を見て、ルナマリアは首を傾げたが、すぐに、何かを思い出したような表情で顔を上げ、壁掛けの時計に視線を向けた。<br />
「あ、もう行かなくちゃ。……私に出来ることがあったら、いつでも言ってね。本当は、シン達の家に行って、手伝いたいけど……今は、レイが自力で立ち直るのを待つしかないのよね……」<br />
「うん……」<br />
「シンも、思い詰めちゃだめよ。はっきり言って、あまり強くないんだから」<br />
「そうかな？」<br />
「そうよ。だから、無理しないで」<br />
　そう言ったルナマリアは、顔を傾けて、明るい笑顔をこちらに向けた。<br />
「ん……」<br />
　シンは頷き、彼女につられて微かに笑った。<br />
　ルナマリアの背中を見送りながら、唇の端にそっと触れる。退院したレイと生活を共にするようになってから、まったく笑っていないことに気付いたシンは、薄く開いた唇の隙間から細く息を吐いた。<br />
<br />
「ただいま」<br />
　口の中で呟いて、自室へ入り、ベッドの上に軍服を脱ぎ捨てた。長袖のＴシャツとハーフパンツに着替え、レイの部屋の前に立つ。<br />
「レイ、入るよ」<br />
　声を掛け、ドアを開けた。レイは、朝に見た姿のまま、固く縮こまっている。手つかずのシチューを乗せたトレーを回収し、シンは、無言のまま部屋を出た。<br />
しんと静まり返った廊下を歩き、突き当たりのドアを開けて、照明のスイッチに手探りで触れる。リビングとダイニングとキッチンがひと繋がりになっている広い空間が、妙に寒々しい。<br />
　キッチンに入ったシンは、先ほど回収してきた皿を電子レンジに入れ、温めなおした。<br />
「──熱っ」<br />
　舌打ちをしながら、熱を持った皿を慎重に取り出し、四人掛けの小さなダイニングテーブルの椅子を引き、腰を下ろした。テレビのない静かな部屋に、皿とスプーンのぶつかり合う冷たい音だけが響く。シンは、味気ない食事を、無理矢理、胃の中へ流し込んだ。<br />
　空にした皿をシンクに置き、冷凍庫の中から、一人分の量のシチューを詰めた容器を取り出し、電子レンジの中へ入れた。温まった中身を深皿に移してトレーに乗せ、レイの部屋へ向かう。<br />
「レイ、今日こそ食ってもらうぞ。これ以上何も食わなかったら、本当に体を壊してしまうからな」<br />
　低い声で呟いたシンは、トレーを左手で持ち、右手でレイの腕を掴んだ。<br />
「おい。顔、上げろよ──レイッ！」<br />
　語気を強めて、彼の腕を力一杯引いたその瞬間に、シンの手を振り払おうと動いたレイの腕がトレーに当たり、「あっ」と声を上げる間もなく、床に落ちた。皿の割れる鋭い響きが、耳の奥を突き刺す。かあっと頭に血が昇り、レイへ向けて振り上げた拳を、シンはようやく、己の太腿に叩きつけた。<br />
　キッチンへ戻り、雑巾を手にして、再び、レイの部屋へ入る。床にこぼれたシチューを丁寧に拭き取り、皿の破片を拾って、トレーに乗せた。腹の奥から湧き上がってくる熱くて苦いものが息を震わせ、眼底を焦がす。<br />
「もう……勝手にしろよ」<br />
　吐き捨てるように言い、シンはトレーを抱えて、大股で部屋を出ていく。ドアの傍らで立ち止まり、ちらりとレイを見た。シンの手を振り払った腕をベッドの上に力なく投げ出したまま、小さく丸まって、すべてのものを拒絶しているレイの姿を一瞥し、シンは、音が鳴るほど強く奥歯を噛みしめ、力一杯ドアを蹴った。大きな音と共にドアが閉まり、周囲の薄い壁をびりびりと震わせた。<br />
　腹の中で渦巻く、どす黒いものを逃がすように、浅く息を吐きながらキッチンへ入り、抱えていたトレーをシンクの中へ叩きつける。トレーの下敷きになった皿が砕けて、飛び散った音の棘が鼓膜に刺さり、抜けない。<br />
「──くそっ」<br />
　シンは、血が滲むほど強く唇を噛み、キッチンベースの扉を思い切り蹴り上げた。<br />
<br />
<br />
　午前二時。隣の部屋から断続的に聞こえてくる、乾いた咳で目を覚ました。<br />
（……知るもんか）<br />
　シンはブランケットの中へ潜りこみ、身体を丸めた。咳はしだいに激しくなっていく。なにか、重たいものが床に落下したような気配を察知し、耳をそばだてた。壁の向こうから、喘息の発作のような、気管支を抜ける風の音が漏れ聞こえて、シンは跳ね起き、レイの部屋へ走った。<br />
「レイ！どうした？」<br />
　乱暴にドアを開け、手探りで照明を点ける。シンは、ベッドの下で蹲るレイの傍へ駆け寄り、背中をさすった。<br />
「薬──薬は？……まさか、もう、ないのか？」<br />
　肩を揺さぶるシンを遠ざけようとしたレイは、息苦しさに喘ぎながら、腕を大きく振り回した。<br />
「──っ！」<br />
　レイの肘が頬に当たり、身体が後ろへよろめく。傍らにあったゴミ箱を巻き込みながら、シンは、床に尻餅をついた。<br />
「痛って……ぇ」<br />
　口の端と内側の粘膜が切れ、口内に血の味が広がっていく。蹲り、胸を押さえて荒い息を吐き出しているレイを睨みつけ、シンは、ゆっくりと身体を起こした。一緒に倒れてしまったゴミ箱に手を伸ばして起こしかけたその時、底の方で固い音が鳴った。まさか──ゴミ箱をひっくり返したシンは、落下したピルケースを強く掴み、その手を床に叩きつけた。<br />
「……なんで？」<br />
　ずっと堪えていたものが溢れて、視界を滲ませていく。<br />
「議長と艦長が命懸けで守ってくれた身体なのに……なんでこんなことするんだ！」<br />
　叫びながら、蹲るレイの身体を力ずくで起こし、彼の頬を思いきり引っ叩いた。無抵抗のまま吹き飛ばされたレイは床に倒れ込み、激しく肩を上下させながら、縋るように、堅い床を爪で引っ掻く。<br />
「死にたい……のか？……本当に……」<br />
　掠れた声で呟いたシンは、軽くなってしまった彼の身体を抱えて、仰向けに寝かせた。レイの傍らに膝をつき、薄く開いた青い目を見つめて、叩かれて赤くなった彼の頬を、まだ痺れの残る掌でそっと撫でる。<br />
「大切な人を失って、それでも生きていかなきゃならないなんて、キツイよな……」<br />
　零れ落ちそうになる涙を手の甲で拭い、呟く。<br />
「オレがいない時に、死のうと思えば、死ねたはずなのに……レイは『生きたがり』だったから、自分ではやれなかったんだろ？……どんな命でも、生きられるのなら生きたい──あれは、自分のことでもあったんだよな」<br />
　握りしめていたピルケースをレイの胸に置き、小刻みに震える彼の手を掴んで、その上に乗せた。<br />
「……もう、いいのか？」<br />
　レイの瞳を真っすぐに見つめて問うと、彼は、息苦しさに顔を歪めながら小さく頷いた。<br />
「そっか。……自分でやれないなら……オレが、終わらせてやるよ」<br />
　言いながら、シンは、レイの身体を跨いで馬乗りになり、首に手を掛ける。<br />
「……すぐに、追いかけるから……」<br />
　レイの微かな脈動が、手の中にある。大切な友達が死んでいく感覚を受け止めて、泣き叫びながら自身をも殺す。これが、戦争だったとはいえ、数多の命を奪った者にふさわしい末路なのかもしれない。<br />
「……だめ…だ。お前…は……」<br />
　レイの喉から、ひゅるひゅると音を立てて風が抜けた。<br />
「レイを死なせて、オレだけが生きていけるワケないだろ？……重過ぎて、背負えないよ」<br />
　呟いて、シンは微かに笑う。<br />
「……すぐに、終わるから……」<br />
　シンは、レイの首を包みこんだ両手に力を入れて、少しずつ、身体の重さをそちらへ移していく。<br />
　躊躇うな──シンは、きつく唇を噛みしめた。躊躇ってしまったら、レイを、長く苦しめることになる。<br />
顎を上へ向け、喘ぐように呼吸しようとするレイの顔を、シンは食い入るように見つめた。力をこめた手の中にある強い脈動──シンは、掌で、彼の命の叫びを聞いた。身体はこんなにも生きたいと訴えているのに……。強く噛んだ唇の隙間から、嗚咽が漏れる。溢れ出た涙がレイの頬にぽたぽたと零れ落ち、薄く目を開けたレイは、震える指先で、シンの手の甲を軽く引っ掻いた。<br />
「……シン。……薬…飲む……。水、を……」<br />
　レイは呻き声と共に、ようやく言葉を吐き出す。<br />
「水……」<br />
　手の力を弛め、激しく咳込むレイをその場に残して、シンは走ってキッチンへ向かった。<br />
　グラスに水を汲んで部屋へ戻り、床に横たわるレイの首の下に腕を差し入れて、抱き起こす。<br />
「何錠？」<br />
グラスを床に置き、手が震えているレイの代わりに薬を取り出して舌の上に乗せてやり、グラスの縁を彼の下唇に当てた。グラスを慎重に傾けて、水を口に含ませる。時折、噎せながら、中の水をすべて飲み干したレイは、シンの首に両腕を回し、首筋に顔を埋めた。シンは、空になったグラスを足元に置き、縋り付くレイの身体を抱いて、背中をさする。<br />
「横になった方がいいよな？」<br />
　シンは、レイの脇の下と膝の後ろに腕を入れ、「よっ」という掛け声と共に彼の身体を抱き上げて、ベッドに横たえた。足元に丸まっていたブランケットをレイの身体に掛け、照明を落とそうと、彼に背中を向けたその時、<br />
「──シ、ン」<br />
　呼ばれて、シンは振り返る。「どうした？」と、問うように顔を傾けると、<br />
「……今は…ここ、に……いて、欲しい」<br />
　レイは、荒い息を整えながら、声を絞り出した。<br />
「うん。ドアを閉めて、電気を消してくるだけだよ。出てけって言われても、傍にいるつもりだったから、大丈夫。どこへも行かない」<br />
　シンは、こわばった頬をほんの少しだけ弛めて、ドアの方を指差す。レイは、乾いた咳をしながら、小さく頷いた。<br />
　ドアを閉め、照明を落として、ベッドに横たわるレイの方へ向き直った。ベッドの向こうの窓に下がるカーテンの隙間から、青白い光が零れている。シンは、レイを踏まないようにベッドの上に膝をつき、手前のカーテンを引いた。奥の、薄いレースのカーテン越しに、窓から差しこむ月の明かりが、室内の輪郭をぼんやりと浮き立たせる。<br />
シンは、ベッドの端に腰を下ろし、人工の、ほの青い光の中に横たわるレイの身体の膨らみに視線を這わせた。うつ伏せに寝て、枕に顔を埋め、まだ苦しそうに、荒く呼吸しているレイの背中を、ブランケット越しに優しく撫でさする。<br />
しばらくして、レイは深く息を吐き、強張っていた身体を弛緩させた。薬が効いてきたのだろう。<br />
シンは、レイの柔らかい髪を撫で、そっと首筋に触れる。レイのぬくもりと、生きている証を探り当て、すっかり落ち着いた彼の呼吸を聞きながら、震える手で口を塞いで咽び泣いた。溢れ出る熱い雫が掌に溜まり、腕を伝い落ちて、上着の袖とハーフパンツの太腿を濡らしていく。<br />
「レイ……」<br />
　シンは両手で顔を覆い、背中を丸めて、かちかちと鳴る奥歯をぐっと噛みしめた。<br />
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【つづく】<br />
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            <name>藤</name>
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