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一昨日から降り始めた霧のような雨は、昼を過ぎたあたりから本降りになった。
「鬱陶しいなぁ……もう」
ルナマリアは唇を尖らせて呟いた。早めの夕食を終え、空になった食器をカウンターへ戻し、アカデミー寮内のカフェテリアを出た。
女子寮の方へ向かい、白く、明るい廊下を歩く。
「──レイ!」
男子寮への分岐で、こちらへ歩いてくるレイの姿を確認して、ルナマリアは思わず声を上げた。
レイは、少し迷惑そうに眉をひそめ、僅かに顔を傾けた。
「珍しいな」
ルナマリアの傍らへ歩み寄ったレイは、無表情のまま呟く。
「なにが?」
「三連休の初日に、お前が寮に残っていることが、だ」
「余計なお世話よ。レイは、今から外出?デート?」
「違う。家に帰るだけだ」
「ふーん。一人で?」
「当たり前だ」
「家、近いの?」
「まあ……」
「遊びに行っていい?」
「は?なぜだ」
「退屈だからに決まってるでしょ」
「別に、構わないが……」
「が──何よ?」
「が、やりたいことがあるから、あまり、相手はしてやれない」
「大丈夫よ、おとなしくしてるから。じゃあ、ちょっと待ってて。傘、持ってくる」
言うと、レイは、返事の代わりに深い溜息をついた。
早足で自室へ戻り、花柄の傘を掴む。ドアに鍵を掛け、レイを待たせている場所へ急いだ。
彼は壁に凭れかかり、律儀にルナマリアを待っていた。
「本当に待っていてくれるとは思わなかった」
「約束したからな……仕方がない。行くぞ」
レイとルナマリアは、寮のエントランスを抜けて傘を差し、外へ出た。
「少し、寒い」
ルナマリアは、はぁ、と息を吐く。かすかに白く煙った吐息が、鼻先でくるりとまわった。
「秋の長雨、か。こんなものまで再現しなくても良いものを……」
レイは、誰に聞かせるともなく呟いた。
「なあに?何か言っ──きゃあっ!」
レイは、濡れた石畳の上で足を滑らせたルナマリアの腰に手を伸ばし、崩れる身体を間一髪で支えた。
「そんな歩き難いもの、履いているからだ」
レイは腰に回した腕に力を込め、ルナマリアの身体をひょいと持ち上げて姿勢を安定させた。
「あ、ありがと」
ルナマリアは、横目でちらりとレイを見ながら、制服を着ていない彼の姿を見るのは初めてであることに気が付いた。
ジーンズに、黒いVネックのカットソー。そのシンプルないでたちが、レイの肌の色の白さと想像していたよりも厚い胸板を際立たせていた。
アカデミーでは、彼はスレンダーで小柄な方だった。しかし、軽々と自分の腰を支えた腕と、背中に触れた彼の身体の感触が、鍛えられたものであることにルナマリアは驚いていた。
大通りを抜け、住宅街へ入る。
「……ここって」
ルナマリアは、ぽかんと口を開け、きょろきょろと周囲を見回す。
広い敷地にゆったりと建つ大豪邸が連なる先には、高層の、『いかにもゴージャス』なマンション群が犇めき合うように建っている。政府の高級官僚やセレブリティたちの住居が建ち並ぶ、いわゆる高級住宅街だった。
レイの足は、その中でも、最高層のマンションへ向かっていた。自動扉を通り抜け、奥に設置されている端末を操作すると、傍らの重たそうな扉がゆっくりと開く。
ルナマリアは、あんぐりと口を開けて、彼の慣れた手つきを眺めていた。
「どうした?」
「レイって、お坊ちゃまだったんだ」
「違う。ここは、俺の親代わりの人の持ち物だ。好きに使わせて貰っている」
「え……。じゃあ、御両親は……」
「いない」
大理石が敷かれた、まるでホテルのロビーのようなエントランスを抜けて、エレベーターに乗る。
最上階のボタンを押し、レイとルナマリアは無言で肩を並べていた。
「着いたぞ」
エントランスと似たつくりの広いエレベーターホールを、レイの後ろを追いかけるように歩く。
門扉を開き、奥に見える重厚な扉まで敷き詰められた石畳と、その脇に綺麗な植栽がなされたアルコーブへ足を踏み入れた。
「ねえ。もしかして、このフロアー全部が、家?」
「そうだ」
レイは玄関の扉のロックを解除して、ルナマリアを中へ招き入れた。
「……うっ、そぉ……。なんで最上階にこんなに広い庭があるの?」
玄関から廊下にかけて、壁の片側は総ガラス張りになっていて、その向こうでは、紅葉を湛えた木々が、降りしきる雨に濡れ、時折吹く風に枝を揺らしていた。
レイは、玄関扉の傍らに濡れた傘を立てた。靴を脱ぎすて、あたたかな色調のタイルの上を裸足で歩く。
ルナマリアも彼に倣い、後に続いた。
晴れていたならば溢れんばかりの光で満ちているであろう長い廊下を通り抜け、奥の扉を開ける。
広いリビングの、足元までの大きさの窓からも、空中庭園を眺めることができた。
部屋の真ん中にグランドピアノが据えられ、窓の傍らに、向かい合わせた6人掛けの大きな白いソファと、その間に、天板がガラスのローテーブルが置かれている。
「好きな所に座れ。コーヒーを入れてくる」
レイは、ローテーブルの上に散乱した楽譜を纏めて脇の方へ寄せ、リビングと繋がったキッチンに入り、コーヒーメーカーに豆と水をセットして、スイッチを入れた。
一旦、キッチンを離れて、バスタオルを手にしてリビングへ戻ったレイは、立ち尽くすルナマリアへ、それを投げる。
「ありがとう」
ルナマリアは、リビングを見渡すことができる方の柔らかな革のソファに身を沈めて、受け取ったタオルで、ミニワンピースから伸びた脚の水滴を丁寧に拭った。
レイは、グランドピアノの屋根を押し上げて開き、椅子に腰を下ろして、鍵盤の蓋を開けた。
彼は指を慣らすように、いちばん低い音を出す鍵盤からいちばん高いところまで、指を滑らせていく。 コーヒーの芳香が漂う室内に、途切れることなく、優しい音が響き渡った。
「すごい」
ルナマリアが感嘆の声を上げると、彼は、何のことはないと言いたそうな表情で肩を聳やかした。
「やりたいことって、ピアノ?」
「そうだ」
「レイに、こんな趣味があったなんて、知らなかった」
「言う必要もなかったからな」
「また、そんな突き放した言い方をする……」
ルナマリアは溜息まじりに呟きながら、テーブルの隅に寄せられた楽譜をぱらぱらと捲り、顔をしかめた。
「なに?この、繋がった音符……指、間に合うの?」
レイは、珍しく、可笑しくて仕方がないという感情を顔に出し、右手で口元を覆いながら、肩を震わせ、声を殺して笑っていた。
「なによ」
軽く睨むようにレイを見ると、彼は、口元に笑みを浮かべたまま、頭を軽く横に振った。
レイは、窓の外へ視線を移す。ルナマリアも、つられて、手入れの行き届いた庭園を見た。
寮を出たときよりも雨足は弱まっている。
レイは小さく息を吐き、鍵盤に触れた。
空から弱い光が降るような旋律が、リビングを満たしていく。こんな優しい音を奏でる彼の姿は、普段の仏頂面からは想像できなかった。表情も、どことなく柔らかい。
アカデミーで、このことを知っているのはおそらく自分だけだろう。ルナマリアは、胸元にそっと手をあてて、再び窓の外を見た。
細い、針のような雨が庭園の赤く色づいた葉を揺らす。
ルナマリアは、彼が奏でる特徴的なリズムを追いかけるように、人差し指で太腿を軽く叩いた。
「……ねぇ」
窓の外を眺めながら、レイを呼ぶ声に微かな喜びを滲ませた。
「何だ?」
「その曲、雨のリズムと同じ」
指先でリズムを刻み、窓の外を指差しながら、ピアノを弾くレイへ顔を向けた。
「正解だ」
レイの頬が緩み、唇の端が微かに上がる。
「え?」
「ショパンのプレリュード第15番。いわゆる『雨だれ』だ」
レイは、目を細めた。
「教会でひとり、恋人の帰りを待ち侘びる。雨が、降ってきた──」
普段の、他人を寄せ付けない、威圧的で冷たい彼の視線は、今はすっかり形をひそめ、ピアノから零れた音を追いかけるように宙を彷徨う。
「──雨は、次第に激しく降る。だが、恋人は帰らない」
優しい旋律に、少しずつ、薄暗い雲がかかっていく。
「不安、焦燥、懼れ。死の、足音……絶望」
転調し、感情が二度、爆発する。その後、再び流れる、優しい旋律。
「しかし、恋人は、何事もなかったかのように、彼の許へ戻る。……絶望の先には、弱い、光が射す」
さいごの一音を弾き終えたレイは、ふう、とひとつ息を吐いた。
「俺のなかの闇にも、光の射す日が来るだろうか」
「なぁに?」
「……何でもない」
レイは顔を背けて立ち上がり、キッチンへ向かった。銀色のトレーの上にコーヒーを注いだ白いマグカップを二つとシュガーポット、ティースプーンを載せてリビングへ戻り、ローテーブルの、ガラスの天板にそっと置いた。
「ありがとう」
ルナマリアは、手前に置かれたマグカップに砂糖を2杯入れて、くるくるとスプーンを回してかき混ぜる。レイは、立ったままカップを取り、一口だけ啜って、テーブルの端にそれを置き、再び、ピアノの前に座った。
レイは、ルナマリアの存在を忘れてしまったかのように、ピアノに没頭する。
そんな彼を眺めながら、ルナマリアは、ソファの背もたれに深く身を沈めて、彼が奏でる優しい音楽に耳を傾けた。
本当に、別人みたい──ルナマリアはひそやかに笑い、目を閉じる。コーヒーで暖まった身体を、ピアノの音と共に、ふわふわと宙を漂う感覚にゆだねた。
遠くの方から、聞いたことのある曲が聞こえてくる。
どこで、聞いたんだっけ?──記憶の糸を手繰り寄せる途中で、音は少しずつ遠ざかり、真っ白な光の中へ消えていった。
目を開けると、すでに日が暮れていた。
ソファの肘掛けに頭を乗せて、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。
暗い部屋に、スタンドライトの橙色の光が淡く灯る。
ルナマリアは、掛けられていたブランケットを持ち上げ、ゆっくりと気だるい身体を起こした。
「今、何時?」
ピアノの前に座っているレイに、問う。
「9時半だ」
「え!?寮の門限──」
「過ぎたな。今日は、泊まっていけ」
無断外泊……、反省文と1週間の外出禁止……呟きながら、ルナマリアはソファの背に凭れ、天井を仰いだ。
「起こしてくれればよかったのに」
非難の眼差しをレイに向けると、
「お前の存在を、すっかり忘れていた」
彼は首の後ろを揉みほぐしながら、しれっとした表情で言った。
「じゃあ、誰がこのブランケットを掛けてくれたわけ?」
「さあな」
立ち上がったレイは、ローテーブルの上のマグカップを取り、冷えたコーヒーを一口啜った。
「ずっと、ピアノ弾いてたの?」
「ああ」
「夢の中で、聞いたことある曲が流れてきたんだけど、思い出せないのよねえ」
「そうか」
「レイ。あなたには、もっと会話を盛り上げようとか、そういう優しさはないわけ?」
ルナマリアのぼやきを、レイは静かに笑って受け流す。
「そういうのは、あまり得意ではない。お前は、解っていると思っていたが。……バスルームは、廊下に出て左。眠い時は、ゲストルームが5つあるから、好きな場所で寝てくれ」
言いながら、レイは、マグカップとシュガーポットをトレーに載せて、キッチンへ運んだ。
「たしかに、わかってはいたけどねぇ……。ふたりきりの時くらい、もうちょっと気の利いた会話をしてみたいじゃない」
ルナマリアは、はぁ、と息を吐き、ブランケットを畳んでソファの隅に置いた。
「レイ、バスルーム借りるわよ」
キッチンへ向かって声を張り上げる。
「好きに使え」
レイの声を背中で聞きながら、ルナマリアはリビングを出た。
長く、広い廊下を歩く。廊下に出て左──レイは簡単に言ったけれど、こう部屋が多くては皆目見当もつかない。ルナマリアは、ドアをひとつひとつ、そっと開けていく。
彼が言っていた、5つのゲストルームのドアをすべて開けた後、ようやく、バスルームに行き着いた。
「広くて、落ちつかない……」
シャワーを浴びながら、きょろきょろと、寒々しい空間を見渡す。
広くて、立派な家。でも、どこか冷たくて、寂しい。
そういえばレイは、休みの日の夜はいつも寮にはいなかった──ルナマリアは、ふと思い出し、ひとりでいるには広すぎる部屋でピアノに没頭する彼の姿を思い描き、溜息をついた。
シャワーを浴び、身支度を済ませたルナマリアは、タオルで濡れた髪を拭きながらリビングへ戻った。
「あれ?レイ?」
誰もいないリビングを抜けて、キッチンをそっと覗く。シンクの前に立ったレイは、グラスに注いだ水を、一気に飲み干した。
「薬?調子悪い?」
恐る恐る尋ねると、
「いや。ビタミン剤みたいなものだ。気にするな」
レイは、シンクの脇に置いたピルケースを、隠すように引出しの中へしまいこんだ。
彼は、空になったグラスを軽く濯いで水切り台に伏せ、ルナマリアの傍らを通り抜けて、ピアノの前に座る。
ルナマリアはそっと後を追い、湿ったタオルをローテーブルの上に置き、彼の背後に立った。
レイは、ひとつひとつの音を丁寧に鳴らしながら、譜面台に乗せた手書きの楽譜に、音符を書き込んでいく。
「この曲、レイが作ったの?」
「ああ」
「すごい。これだけできたら、楽しいだろうなあ。……あ、私もね、ちっちゃな頃ピアノやってたんだけど、すぐに辞めちゃった。全然うまくならないから、面白くなくなって……」
レイは、後ろに立つルナマリアの方へ顔を向け、唇の端に微かな笑みを浮かべた。
「久しぶりに、弾いてみるか?」
「──え!?弾けないわよ。楽譜だって読めないのに」
「ただ音を出すだけでいい。俺が、アレンジしてやる」
言いながら、レイは腰を浮かせて、椅子の右側に一人分のスペースをつくった。
ルナマリアは空いたスペースにゆっくりと腰を下ろす。腕が触れ合い、彼の体温が流れ込んでくる。レイの身体は思っていた以上に熱くて、早まっていく鼓動を彼に悟られないように、ルナマリアは少しだけ身体を引いた。
「でも、こんな時間まで音を鳴らしてもいいの?下の階の人から、苦情、こない?」
「……下に住んでいた人は、先の戦争で死んだ。今は誰も住んでいない。だから……心配するな」
「知ってる人、だったの?」
「ああ……兄のような──自分の分身のような存在だった」
レイは、左手の人差し指を軽く鍵盤の上に落とす。ルナマリアは、寂しさを滲ませるその低い響きに寄り添わせるように、高い音を重ねた。
続けて、人差し指で適当に鍵盤を叩く。
レイは、その響きを包み込むように、分散した和音を奏でた。何度も繰り返すうちに、それはひとつの音楽に似たものとなり、静かな水面を震わせる波紋のように、次第に大きく広がっていった。
「いつも、こんなふうに女の子を口説いているの?」
左腕に、レイの身体の重さを感じながら、ルナマリアは意地悪な口調で聞く。
「女というものは、この程度で落ちるのか?──それは、良いことを教えてもらったな」
レイは、薄く開いた唇の隙間から、ふっと息を吐いて笑った。
ルナマリアは、鍵盤に触れる彼の左手と自分の右手を見くらべる。彼の手は、自分のものよりも一回り大きくて、厚みのある、間違いようのない男の人のものだった。
ルナマリアは、レイの、鍵盤の上を滑らかに動く、節が目立つ長い指を見つめて息を吐いた。
吐息は、自分でも驚くほどに熱を含んでいた。
夜の闇と、室内を照らすスタンドライトの柔らかな光の境目に、とろりとした琥珀色の雫が流れては溜まっていく。
ふいに、レイの手の動きが止まり、音が途切れた。
「これだけ身体が触れていると、さすがに、妙な気分になる」
レイの声に、僅かに熱が籠もっているのを耳のうしろで感じ、彼の身体に密着させた腕と腿が燃え上がるように熱くなる。
ルナマリアは、自分とほとんど同じ高さにある彼の顔を見た。間近で見る彼の顔には女性のもののような柔らかな丸さは少なく、むしろ、精悍な顔つきをしていた。
青い双眸に射竦められ、目を逸らすことも、俯くことさえも、できない。
レイは、ルナマリアの唇に、鍵盤に触れて冷えた中指の先をそっとあて、柔らかな感触を確かめるようにゆっくりとなぞり、その後、触れるだけのキスをした。
顔を離し、首を傾げてルナマリアの顔を覗き見る。彼は困ったように眉根を寄せて、唇の端に笑みを浮かべた。
レイの唇の隙間から、赤い舌先が覗く。ルナマリアは首を傾げ、彼を真似るようにそっと舌を出した。
レイはゆっくりと顔を近付け、無防備に晒されたルナマリアの舌先を軽くつつき、少しずつ深く絡め合いながら、ゆっくりと唇を重ねる。ルナマリアは目を閉じて、彼の服の裾を強く握った。
はじめは、呼吸するタイミングさえも掴めないほどにぎこちなかったけれど、レイの、ゆるやかなリードに合わせて舌を動かしていくうちに、彼の匂いや息遣いを感じることができるくらいに、気持ちを落ち着かせることができた。
鍵盤に触れていた右手でレイの肩のぬくもりに触れた。
もっと、もっと彼と深く繋がりたいという欲望が首を擡げ、支配されていく感覚に溺れてしまいそうになる。
「んっ……」
ふいに上顎を舐められ、思わず声を漏らした。ルナマリアの腰を抱くレイの右腕に力がこもる。
レイは、ルナマリアの口のなかを味わうように舐めながら、左手で頬から首筋を、すっと撫でた。
潤んだ音を立てて唇を離し、レイは、ひとつ息を吐く。彼は、ルナマリアの首筋に顔を埋め、濡れた唇を寄せた。熱い息が首筋を這い、服の隙間から胸元へ流れ込む。首を撫でていた彼の左手がゆっくりと下の方へ動き、胸のふくらみを包み込んだ。
「……続きをしても、構わないか?」
聞かれて、ルナマリアは小さく頷く。
レイは、ルナマリアに触れていた身体を離し、鍵盤の蓋を丁寧に閉めて、ゆっくりと立ち上がった。
「来い」
差しのべられた手を取り、ルナマリアは彼を追いかけるように廊下を歩いた。
長い廊下の、突き当たりのドアを開ける。庭園を照らす青味を帯びた常夜灯の光が、薄いレースのカーテンから漏れ、室内の輪郭をぼんやりと浮立たせていた。
レイは、ルナマリアを中へ促し、ドアを閉めた。サイドテーブルに置かれたランプを点け、ダブルベッドの上に散乱した楽譜を纏めて、傍らの本棚にしまいこむ。
「不安か?」
ベッドの傍らに佇むルナマリアに、レイは問う。
「ううん。少し、緊張してるだけ」
ルナマリアは、首を小さく横に振った。
「そうか」
レイは、ゆっくりとこちらへ歩み寄る。背後にあるランプのせいで顔が暗く翳り、彼の表情を窺い知ることはできない。
レイは、ルナマリアの背後にそっと回りこむ。
後ろから強く抱き竦められ、ルナマリアは身を固くした。彼の柔らかい髪が首に触れて、くすぐったい。
レイは、ワンピースのファスナーを下ろし、手をするりと服の中へ滑り込ませて、肩に触れる。 直に肌を撫でられて、ルナマリアは目を瞑り、吐息を漏らした。
衣服が擦れる響きとともに、着ていたワンピースが足元に広がる。
首の付け根に温かい息がかかり、柔らかな感触が、背中の、真ん中のくぼみに落ちてきて、ルナマリアは背中を微かに震わせた。
レイは、背中に唇を這わせながら、ブラジャーのホックを外した。
支えを失った胸のふくらみが重く揺れ、肩紐が、曲げた肘に引っ掛かる。ルナマリアは、肘に垂れ下がった肩紐からそっと腕を抜き、床にまるく広がったワンピースの傍らに、外した下着を置いた。
「──やっ」
突然、身体が宙に浮き、ルナマリアは思わず声を上げた。レイに抱きかかえられて、ベッドへ移動する。
「……重かったでしょ」
ベッドに横たえられ、胸元を両腕で抱くように隠しながら、ベッドの端に膝をついたレイをちらりと見た。
「ああ」
「嘘でも、否定してよ」
ルナマリアは、眉ひとつ動かすことなく即座に答えたレイの腕を軽く叩く。
「嘘は嫌いだ」
言いながら、ふくれ面のルナマリアと視線を合わせたレイの頬が緩む。
レイは、ルナマリアのウエストのくびれを掌で優しく撫で、下着に手をかけて、少しづつ引き下ろしていった。身に着けていたものすべてを脱がされたルナマリアは、膝を立てて、恥ずかしい部分を隠すように身体を捩る。
「レイは、脱いでくれないの?」
黒いカットソーの袖を引っ張りながら、問う。
「壁の方を向いていてくれ」
「それ……ずるい」
レイは、ルナマリアの肩を押し、足元に丸まっていたブランケットを身体に掛ける。ルナマリアはブランケットを胸元まで引き上げ、彼に背中を向けて、目を閉じた。
後ろで、衣擦れと、ベルトを外す金属音がへんに大きく響く。音が途切れた後、ベッドの端が沈み、レイの重さが近づいてくるのを感じた。
「ルナマリア」
低い声で名前を呼ばれ、びくりと肩がはねた。レイはブランケットをそっと捲り、横向きに寝るルナマリアの背中に胸をつけ、耳の先に軽く歯をあてる。
ルナマリアはぎゅっと目を瞑り、レイの腕の中で身体を回転させて、彼の裸の胸に額をつけた。
額から、彼の鼓動が伝わってくる。ルナマリアは薄く目を開けて、恐る恐る、彼の顔を見上げた。
頬に掛かる色素の薄い髪に、ランプの、橙色の優しい光の粒が纏いつき、揺れている。
ルナマリアは、レイの髪を梳くように撫で、露わになった頬のかたちを指先でそっとなぞる。
レイは、ルナマリアの手首を軽く掴み、掌に唇をつけた。彼の吐息が手のなかに溜まり、徐々に、掌が熱く湿っていく。
ふいに、親指を口に含まれ、指の形を舌でなぞられて、ルナマリアは小さな悲鳴を上げた。
レイは、潤んだ音を響かせながら、爪の一枚一枚を舌先で丁寧に磨きあげ、指の付け根をくすぐるように舐める。
「くすぐったいか?」
レイは、ルナマリアの手首を引き上げるように力を込め、腕の内側に唇を這わせながら、問いかける。
「……なんだか、へんな感じ」
普段、人に触れられることの少ない部分に刺激を受けて、答える声が少しだけ震えた。
レイは、ルナマリアの胸元を隠していたブランケットを脇の方へ寄せ、露わになった裸体を上から眺めて、目を細めた。
背中をシーツに押し付けられて、縮こまっていた身体が大きく開く。唇で触れる位置を少しづつずらしながら、二の腕の内側の薄い皮膚を音を立てて吸われ、そのくすぐったさに、ルナマリアは身体を強張らせた。
レイの、プラチナブロンドの毛先が肌に触れ、熱く湿った吐息がかかる。柔らかな唇が皮膚を軽く吸い、舌が、まるで別の生き物のようにルナマリアの表面を這っていく。
指先から、肩へ。爪先から、脚の付け根へ。それはゆっくりと繰り返され、レイの静かな愛撫によって研ぎ澄まされたルナマリアの肌は、彼の毛先が触れただけで、ざわりと粟立った。
両腕と両脚を愛撫されただけで、ルナマリアの秘所は、すでに、十分に潤っていた。
肝心なところへは決して触れてくれないもどかしさに、ルナマリアは腰をくねらせて、耐える。
脚の間の温かな滴りが、腿を擦り合わせるたびにぬめり、お尻の方へ流れていく。
「……あ…」
ルナマリアはたまらず声を漏らした。
レイは、触れるか触れないかの軽やかさで、胸のふくらみに舌を寄せる。
ルナマリアの肌の表面がざわめき立ち、淡い色を点した先端が、つんと上を向く。レイは、硬く閉じた蕾を口に含み、ざらりとした舌の表で円を描くように刺激を与えた。
「はぁ……んっ…」
先端を中心にして、甘い痺れがさざ波のように広がっていく。
レイは、口のなかの蕾に軽く歯をあてながら、反対側のふくらみを厚みのある手で押し潰すように揉み、薄い桃色の突起を親指で転がす。
ルナマリアは、レイの頭を抱き、身を捩った。
「……あ」
レイの下腹部が太腿に触れ、ルナマリアは腰を引いた。
「気持ち悪いか?」
レイは、逃げた腰を撫でながら問う。
「違うの……少し、びっくりしただけ」
ルナマリアは身体を密着させて、レイの、熱を持つ下腹部にそっと太腿を添わせた。
彼の熱くて硬いものが自分のなかに侵入するさまを思い描いただけで、お腹の奥のほうが、きゅっと縮む。
レイは、ルナマリアの腰の柔らかな曲線を掌で優しく撫でながら、腹部に唇を這わせ、臍のかたちを舌先でなぞる。
軽い音を立てて唇を離し、レイは、ゆっくりと上体を起こした。
ルナマリアの両膝を持ち上げ、膝の裏に手を入れて、脚を大きく開かせる。
「綺麗な色をしている」
レイは、濡れた秘所に顔を近づけて、呟いた。
「……誰にも触られたことがないから……当たり前でしょ」
「俺がお前の初めての男、か──それは、光栄だな」
レイは、ルナマリアの濡れた秘所を優しく割り開き、花びらを一枚ずつ口に含んで丁寧に舐め上げる。
まだ男を知らない花唇の入口を舌先でまるくなぞり、なかへ舌を差し入れた。
「……んっ…あぁっ……」
舌先で中を擦られるはじめての感覚に、ルナマリアの身体が過剰に反応する。
レイは、花びらをそっと捲り上げ、奥に隠れていた芽を、親指の腹で押し潰すように撫でた。
下のほうから、いやらしい水の音が聞こえてくる。ルナマリアは、大きく開いた脚の間をちらりと見た。反応を確かめるように、レイの青い双眸がこちらへ向けられ、視線が重なる直前に、ルナマリアはぎゅっと目を瞑り、顔を背けた。
「あぁ……んっ」
十分に弄ばれて敏感になった芽が、熱くて柔らかな感触に包まれ、内腿から爪先に甘い痺れが走った。レイは、舌の表と裏を使って弾けてしまいそうな芽を転がし、時折強く吸い付いて、軽く歯を立てる。
「あっ…あんっ。……は…ぁん」
身体の真ん中に、小さな火が灯る。それは少しずつ周囲に燃え広がり、ルナマリアの身体を震わせた。
絶えず押し寄せてくる快楽の波に飲み込まれ、溺れてしまう──ルナマリアは、早く、短く呼吸しながら、昂っていく身体を捩った。
「はっ……ぁあああ、んっ……あぁっ」
切羽詰まっていく声に合わせるように、レイは、舌の動きを速めていく。ルナマリアは大きく脚を開き、更なる悦楽をねだるように腰を浮かせて、レイが与えてくれる熱と痺れを貪るように味わった。
背中が弓なりに反り、花唇の入口がぎゅっと閉じて、中が痙攣するようにひくつく。
レイは、潤んだ音を立てて、ぐっしょりと濡れた芽から唇を離した。
「こんなところまで、濡らしているのか」
レイは、弛緩したルナマリアのお尻を軽く持ち上げ、ゆっくりとその割れ目を舌でなぞった。
「いやっ……だめ…」
秘めやかな場所を放縦な動きで掻き回していく、熱くぬめる舌から逃れるように、ルナマリアは身を捩った。逃げようとすることによって足は余計に大きく開き、レイは、目の前に曝け出された排泄する部分を、音を立てながら舌で弄った。
「いや……いやっ、お願い……やめて…」
他人には決して触れさせない、恥ずかしい場所を犯されて、ルナマリアは涙声で哀願する。
「……すまない。調子に、乗り過ぎた」
レイは顔を離し、濡れて光る口元を手の甲で拭った。
レイは中指を口に含み、十分に湿らせてから、ルナマリアの閉じた花唇のなかへゆっくりと埋めた。
空いた手で下腹を優しく撫でながら、抜き差しを繰り返す。
中を擦るように探られた後、入口を2本の指でつつかれて、ルナマリアは身を固くした。
「──や、っ」
レイの中指と人差し指が、狭い入口を大きく広げていく。引っ張られるような痛みを感じ、ルナマリアは小さな悲鳴を上げた。
「痛むか?」
「……すこし」
「そうか……」
レイはルナマリアのなかから指を引き抜き、考えを巡らせるように目を伏せて、湿った指先をぺろりと舐めた。
「大丈夫よ。レイ……来て」
ルナマリアは、開いた脚の間に手を滑り込ませ、人差し指と中指で花びらを押し分けて、濡れた花唇を開いて見せた。
「煽るな。こう見えて、ギリギリなんだ」
言いながら、レイは、秘所をかきまわすような仕草で彼を誘うルナマリアの手を強く掴み、動きを封じた。
「レイの余裕ないところ、見てみたい」
「──断る」
レイはゆっくりとベッドの上を移動して、サイドテーブルへ手を伸ばした。引出しの中から、四角い、小さな包みを取り出し、封を切る。
「準備、いいのね」
ルナマリアの言葉に、レイは口元を歪めた。
「自分の遺伝子を残したくない……だけだ」
「……よく、わからない」
「解らなくていい」
ルナマリアは、後ろを向いて避妊具を装着するレイの背中を、そっと撫でた。
レイは、ルナマリアの閉じた脚に触れ、膝の裏を持ち上げるようにして開かせる。
「入れるぞ」
「……ん」
レイの熱い塊が入口に押し当てられ、ルナマリアのなかへ侵入してくる。大きく広がった入口の粘膜が引き攣れ、ぷつりと切れたような感じがした。
「狭いな。痛むだろう?」
レイは、慣らすように、ゆっくりと腰を動かす。
「痛い、けど……入口のほうだけ。中は……あ……なんだか、溶けそう」
ルナマリアはそっと目を閉じ、はあ、と熱い息を吐いた。
「我慢できなくなったら、言ってくれ──聞こえないフリをするかも知れないが、な」
レイは、ルナマリアの胸の横に両手を付き、身体を支えて、腰を進める。ルナマリアは、返事をするかわりに、彼の腕を強く掴んだ。
「はぁ……あっ…ぅんっ…あぁん」
レイのものが奥へ到達するたびに、甘い声が漏れる。
「奥が良いなら、もっと、膝を胸に近づけるように脚を開いてみろ」
レイに言われるまま、ルナマリアは、ゆっくりと膝を胸元に引き寄せた。
「……ふ、ぁっ…んっ……レ、イ……あっ…ぁあ、ん」
行き止まりの部分に、レイの先端が強く擦りつけられて、彼の腕を掴む手に、更に力が籠もる。レイは抜き差しを繰り返しながら、徐々に身体を沈め、ルナマリアの首筋に唇を寄せた。
「はぁ…っ……レイ……。レ、イ……」
ルナマリアは、レイの首に縋りつくように両腕を回した。うっすらと汗ばんだ胸を密着させ、彼の腰に、高く上げた脚を絡める。
「ルナマリア──もっと……、もっと、名前を呼んでくれないか?」
レイは、荒くなっていく息を飲み込みながら、耳元で囁く。
「……うん」
ルナマリアは彼の柔らかい髪を撫で、頬を寄せた。
レイの動きに合わせてベッドが軋む。揺さぶられて、背中がシーツに擦れる微かな響きが、ふたりきりの、琥珀色に染まる空間に溶けて、消えていく。
「ぁあっ……レイ……レ…イ。……もっと、乱暴にしても…いい、よ」
ルナマリアは内腿に力を込めて、レイの腰を締め付ける。
「お前がそう望むなら、遠慮なくやらせてもらう」
レイはゆるりと顔を上げ、鼻先を、ルナマリアの鼻のあたまに寄せて、呟いた。
口元に掛かる髪を払いのけることなく唇を押し付けられて、縺れ合う舌に毛先が絡み付き、柔らかいところをちくちくと刺激する。
レイは、ルナマリアの太腿の裏を撫で上げ、少しずつ、身体の重さを移動していく。ルナマリアの身体を折るように曲げ、上から叩きつけるように腰を打ちつけて、花唇を深く抉った。
「……んっ……ふぅっ…」
息苦しさに、ルナマリアは軽く首を横に振る。絡めた舌を解くと、透明な糸がお互いの舌先を繋ぎ、ぷつりと切れた。
ルナマリアの上で一定のリズムを刻みながら、レイは、苦しそうに眉根を寄せて、薄く開いた唇の隙間から、浅く呼吸する。
花唇の入口が擦れて、痛い。けれども、レイが与えてくれる甘い痺れを貪り、高いところへ駆け上がっていく彼の身体を強く抱きしめているうちに、その痛みさえも愛おしく感じる。
「すまない……先に、いく」
レイは呻き声とともに言葉を吐きだす。
ルナマリアの上で、レイの身体の昂ぶりが、頂へ向けて加速しはじめた。腰を使う速さが増し、繋がった部分から、いやらしい水の音が断続的に漏れ聞こえてくる。
一緒に、連れてって──ルナマリアは、汗ばんだレイの身体を抱く腕に力を込め、膝を胸に寄せて、彼が打ちつける硬くて熱い楔を最奥へ誘う。
深いところを強く抉られて、お腹の奥がじんと痺れ、ルナマリアは悲鳴に似た声を上げた。
「うぁ…っ……は、ぁあっ…」
レイは低く呻き、下腹部を、花唇の入口に強く擦りつけた。
「あぁ…んっ……レイ……」
先端をいちばん奥で受けとめ、ルナマリアは背中を弓なりに逸らした。
レイのものが中で大きく膨らみ、びくんと脈打つ。ルナマリアは身体の力を抜いて、目を閉じた。花唇がゆるやかに収縮して、脈動し、苦しそうに熱を吐き出すレイのものを優しく包み込む。
レイは、気だるそうに上体を起こし、上から、ぼんやりとルナマリアの顔を眺めた。ルナマリアは薄く目を開けて、手を伸ばし、レイの頬をそっと撫でた。
レイは、ルナマリアの中から、力の抜けた彼のものを慎重に引き抜き、再び身体を沈めて、触れるだけのキスをした。
後始末を済ませて、レイは、ブランケットを胸元まで引き上げて縮こまって寝るルナマリアに、寄り添うように横たわる。
ルナマリアはブランケットの端を上げ、レイを中へ招き入れた。
「シャワー、浴びるか?」
レイの問いかけに、ルナマリアは首を小さく横に振る。
「もう少し、このまま……」
ルナマリアは、レイの胸元に額を寄せた。立ち上ってくる、彼のからだの匂いが鼻腔をくすぐる。
レイは、ルナマリアの髪を梳くように撫で、抱く手に力を込めた。
ルナマリアは目を閉じて、心地良い温もりの中で彼の心臓の鼓動を感じながら、大きく息を吐いた。
いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。
目を開けると、こちらを向いて眠っているレイの端正な顔が目に飛び込んできて、心臓がはねた。
「目を閉じていると、優しい顔なのになぁ。もったいないよ」
ルナマリアは、眠るレイの頬に掌をあて、そっと撫でる。
俺のなかの闇にも、光の射す日が来るだろうか──ルナマリアは、レイの言葉をふと思い出し、反芻した。
「……レイの中の、闇」
それは、誰にも語られることなくひっそりと彼のなかに息づく。今までも……たぶん、この先も。
彼は、彼の中の闇を、他の誰かと共有することは望まない。だから、これ以上、踏み込むことはできない。
「大丈夫、レイ。あなたは、強い」
ルナマリアは、レイの額に唇を寄せた。
眠っていたはずのレイの頬が緩み、彼はいつものように、薄く開いた唇の隙間から、ふっと息を吐いて笑った。
「しっかり聞こえていたんだな」
レイは、頬に触れていたルナマリアの手を包み込むように握り、目を開けた。
視線を合わせながら、彼の手は、ルナマリアの腕から脇腹を滑るようにすすみ、腰を強く抱いた。
求められるままに脚を絡め、腹部を密着させて、唇を重ねる。レイはゆっくりとルナマリアに覆い被さり、喉の奥まで探るような深いキスをした。
ルナマリアは、レイの熱くぬめる舌を吸いながら、彼の背中を強く抱き締める。
「……ぁん」
レイは潤んだ音を立てて唇を離し、ルナマリアの耳朶に軽く歯をあてた。背中に痺れが走り、腰が引き攣る。
風が吹き、空中庭園の木々が音を立てて揺れた。
深く、甘い吐息を絡めながら、ふたりの身体は静かに覚醒していく。
一昨日から降り続いた雨は、明け方近くに、ようやく止んだ。
了[2008/02/02]
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