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花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ① ※R18※


シンは、戦争が終わってからずっと、失意の底にいた俺の傍にいてくれた──何も聞かずに、自身の足で立ち上がることが出来るようになるまで、ずっと。
初めて、シンとベッドを共にした夜のことは、耳朶に絡みつく生々しい息遣いと共に、鮮明に思い出すことが出来る。
どちらかが明確な欲望をもって誘ったわけではなかった。ふいに絡めた視線に熱が籠もり、互いに驚くほど自然にキスをして、成長半ばの痩せた体をまさぐり合った。
シンに示したほんの少しの抵抗は、『イメージトレーニングの賜物』の──と、後に彼が言っていた──優しいキスと愛撫によって解され、はじめての痛みとともに、彼と、硬く反り返った彼のものを受け入れた。
それ以来、シンの優しさと衝動に縋り付くように肌を重ね、共に白い軍服に袖を通した後も、二人で休日を合わせては一日中抱き合っていた。
恋人と呼べるような甘い関係ではなく、セックスフレンドと呼べるほどに割り切れてもいなかった。
親友の枠を踏み越えて、この先、一体どこへ向かえばいいのだろう?そんな不安を持てあまし、シンの背中にしがみついて、まるで八つ当たりをするかのように、男にしては白すぎる背中に爪を立てる。
そんな、こちらの苛立ちを察したのかどうかは知らないが、カーペンタリアに転属が決まったシンがプラントを離れる前の日、彼はかしこまった様子で、
『オレのパートナーになってください』
と、告げた。
敢えてパートナーという言葉を使ったシンの胸の内は定かではなかったけれど、おそらくは、男同士で、親友で、共に戦場を駆けてきた自分達に、恋人という言葉は甘すぎて、使うことを躊躇ったのだろうと理解して、彼の申し入れに、素直に首を縦に振った。
レイの反応を見届けたシンは嬉しそうに笑い、
『今更だけど、ハッキリさせておきたかったんだ』と、真っ直ぐな視線を向けて、言った。



静かなブリッジに、本艦のオペレーターとカーペンタリアとの交信が響く。艦長席に腰を下ろしたレイは、その遣り取りにじっと耳を傾け、その完了と共に安堵の溜息をついた。
下船許可が下り、速やかに艦を降りたレイと他のクルー達は、中立国首脳との会談に赴くプラント最高評議会議長とその後ろに控える護衛官達の背中を、敬礼で見送った。
議長らの姿が建物の中に消えたその瞬間に、どこからともなく溜息が洩れ、レイは口元を綻ばせて溜息の主へ視線を送った。彼はばつが悪そうに笑い、そそくさと、艦内へ戻っていく。ドックの技術主任との打ち合わせを終えたレイも艦長室へ戻り、私物の入った小さなトランクを引いて、軍港近くに建つホテルへ足を向けた。
会談が終わり、プラントへ戻る明後日まで、艦はドッグに入り、クルー達にも休暇が与えられる。
シンと離ればなれになって、一年。
久しぶりの休暇を、シンがいる場所で過ごすことに微かな喜びを感じながら、レイは、チェックインしたホテルの部屋で、カーペンタリアに到着した旨を、彼にメールで告げた。すぐに、シンから、軍務が終わった後に部屋へ迎えに行くという返信があり、『待っている』と返した。
ベッドのヘッドボードに埋め込まれている、小さなデジタル時計をちらりと見る。午後四時半─シンがここにやってくるまで、あと三時間ほど待たなければならないだろう。
「一眠りするか……」
呟いたレイは、握っていた携帯電話をサイドボードの上へ置き、ブーツと軍服の上着を脱いで、ごろりとベッドに横たわる。  艦長席に座り放しだったせいで軋んでいる腰を思い切り伸ばした後、ブランケットを抱きかかえるように横向きになったレイは、枕に頬を埋め、清潔なリネンの匂いを胸に満たした。



暗闇の中、薄く目を開けたレイの心臓がびくりと跳ねる。
慌てて上体を起こし、ヘッドボードのスイッチに触れ、部屋の明かりを灯して時計を確認すると、既に二十三時を回っていた。
(寝過ごしたか……)
忌々しい気持ちで舌打ちをしたレイは、サイドボードに手を伸ばして、手探りで携帯電話を掴み、着信履歴を確認する──五件。すべて、シンからの着信だった。
リダイヤルして、受話口に耳に当てたレイは、祈るような気持ちで、無意識にコール音を数える。十五コール目に音声が切り替わり、留守番電話サービスセンターへ繋がった。
レイは小さく息を吐き、電話を切った。
おそらく、シンは、明日も仕事だろう。彼に無理をさせてしまうことになるが、明日の夜、また、時間を取って貰おうか……。今すぐに会って、顔を見ながら話がしたいというのが本音だけれど、仕方がない。
レイがその旨を伝えるべくメールを打ち込んでいると、手の中の携帯電話が震え、着信を知らせる。
「──もしもし……シン、か?」
 通話ボタンを押し、電話を耳に当てたレイは、受話口の向こう側に、すべての意識を向け、耳をそばだてた。
『うん、そう。……さっき、電話くれただろ?ごめんな……ちょっと買い物していて、出られなかったんだ』
 久しぶりに耳元で響く、シンの声。移動しているのだろうか?彼のまわりに、雑踏のような音がまとわりついている。
「いや、いい。それより……すまない……うたた寝をして、寝過ごしてしまった」
『ん?いいよ、別に。疲れてたんだろ?』
「……すまない」
『いいって。……ねぇ、今からそっちに行ってもいい?久しぶりに、カオ見たいんだ。それから、……したい』
「ああ、構わない。二五一〇号室だ……待っている」
『了解。すぐに行く』
「だが……」
 明日は大丈夫か?と、レイが言いかけたところで、せっかちなシンは電話を切った。レイは溜息をつき、携帯電話をサイドテーブルの上に置く。
 落ち着いたところで、自身の姿をかえりみて、もう少しまともな格好で彼を迎え入れた方が良いだろうと思い立ち、レイは、スラックスと軍支給のインナーウェアを脱ぎ、シャツとジーンズに素早く着替えた。
 ゆったりとしたベッドの端に腰を下ろし、シンの到着を待つ─二十分後、コンコンと二回、ドアが鳴った。
「はい」
 歩み寄ったドアの傍で答えると、
「オレ。シン・アスカ」
 先ほど鼓膜を震わせた声が、ドアの向こう側から響いた。レイは、ノブに手を掛けてドアを開け、目の前に立つ普段着姿のシンの顔を見つめて、微かに笑う。
 同じように顔を綻ばせたシンは、室内へするりと体を滑り込ませ、飼い主に飛びつく大型犬のような勢いで、レイの体をしっかりと抱いた。レイは背中に力を入れ、足を一歩だけ後ろへ引いて、背後に流れようとする二人分の体の重さを支えた。
「久しぶり。会いたかった……レイ」
 頬を擦り寄せたシンは、レイの耳元で囁く。彼の熱く湿った吐息が耳朶を掠め、レイは、くすぐったさから逃れるように肩を聳やかした。
「……俺もだ……」
 シンに聞こえるギリギリの音量で呟くと、
「ん?なに?聞こえない」
 彼は甘えたような声を上げ、レイの頬に唇の端を寄せた。
「二度は言わない」
「けち!」
 含み笑いとともに呟いたシンは、触れ合っていた胸を離し、顔を僅かにずらして、レイの、同じ高さにある目を真っ直ぐに見つめた。
「今度こそ、レイを追い越したと思ったんだけどなぁ」
シンは、唇を尖らせてぼやく。額に、彼のおでこをぐりぐりと押し付けられて、レイは上目遣いに彼を窺い、「残念だったな」と、笑いを押し殺しながら呟いた。
 シンの細い腰に手を回し、顎を上げて、硬めの髪の上から、彼の額に唇をつけた。その瞬間にぎゅっと閉じた彼の目が薄く開き、熱をおびつつある赤い瞳がレイの目に飛び込んできて、胸の奥を鷲づかみにする─来る、と、心臓が跳ねるのとほとんど同時に、シンは、レイの背中を強くかき抱き、噛み付くようなキスをして、薄く開いた唇の隙間から、半ば強引に舌を差し入れた。無遠慮に口内を侵しはじめるシンの熱いぬめりに己の舌を絡め、彼の首に腕を回して、胸から下を密着させた。
 唾液で濡れた唇を擦り合わせ、アルコールの香りがするシンの舌をじっくりと味わった後、潤んだ響きとともに唇を離した。
「飲んできたのか?」
 互いの額と鼻先を寄せたまま、レイは問う。
「うん。買い物に出る前に、ここのバーで時間つぶしに飲んでた。……勃ちには問題ないよ」
 シンは、かすかなアルコールの匂いを吐き出しながら答えて、レイの腰を抱き寄せ、僅かに立ち上がりかけた下腹部を、レイのそこへ押し付けた。
「下品だな……」
「ごめん」
 言葉を交わすたびに微かに触れ合う唇の感触が心地良い。
 レイは、シンの腰から背中を撫で上げて、首の後ろに掛かる彼の襟髪にそっと指を絡めた。強い光を放つシンの瞳をとらえたまま、レイは僅かに顔をかたむけて、唇の端を上げると、レイの背後で、彼の握っていた紙袋がかさりと鳴り、
「何を、買ってきたんだ?」
 問うと、シンは不敵な笑みを浮かべて触れ合っていた体を離し、レイの手を取り、ベッドの傍らへ移動した。シンに促されるままにベッドの端に腰を下ろしたレイは、足元に膝を付き、紙袋の中に手を突っ込んだ彼の顔をぼんやりと眺める。
 ローション、……細長い布きれ……ロープ!?
 ベッドの上に並べられていく袋の中身を見たレイは、眉根を寄せて、シンを睨み付けた。
「四時間待ったんだ。お仕置きぐらいさせろよ」
 レイの目を真っ直ぐに捕らえて、シンは口の端を上げた。笑っていない目の奥に揺らめく薄暗い光。背筋を冷たいものが伝い落ちていく感覚に襲われて、レイは目を伏せた。
「……だめ?」
 シンは首をかたむけて、レイの顔を覗き込む。頬を隠す髪を梳き上げられ、レイはびくりと肩を震わせて顔を背け、シンから体を遠ざけた。
「そうだよな……無茶言って、ごめん」
 頭上から、優しい声が降り注ぐ。立ち上がったシンの顔を見上げたレイは、咄嗟に、遠ざかろうとする彼の手を掴んだ。
「……その袋の中に……ほかに、何が入っているのかは知らないが……その……玩具のような物を俺の中に入れないで欲しい。……それだけは、嫌だ」
 視線を泳がせて、レイは呟く。
「そんなこと、しないよ。たとえ無機物でも、オレ以外のモノがレイの中に入るなんて嫌だからな。縛るだけだよ。あ……それから……そのまま、抱かせてくれる?」
 恐る恐る視線を上げて、シンの目を探るように覗きこむと、先ほど、彼が一瞬だけ見せた、瞳の奥の薄暗い光はすっかり鳴りをひそめていた。いつまでたっても変わらない悪ガキのような笑みを浮かべた彼の顔を見つめて、レイはほっと息を吐く。
「それならば……好きに…させてやる」
 目を細めて、睨むような視線をシンへ向けて言うと、
「サンキュ。……じゃあ、一緒にシャワー、浴びよっか」
 シンは、掴んでいたレイの手を強く引っ張って立たせ、シャワールームへと促す。
 二人で狭い脱衣所に入り、シンに背中を向けてシャツを脱ぐ。鏡越しにシンの様子を窺ったその瞬間に、互いの視線がぶつかり合い、レイは、びくりと肩を震わせた。
「一緒にシャワーを浴びるのって、初めてだな」
 言いながら、上半身裸になったシンは、レイの背後に立ち、露わになった肩先に軽く唇をあてた。
「髪、洗う?」
 シンの問いかけの真意を推し量ることが出来ずに、レイは首をかしげて、顔を横に振る。
「じゃあ、濡れないようにしてやるよ」
 ジーンズと下着を手早く脱ぎ捨てたシンは、洗面台に置かれているアメニティ・トレイから、小さなヘアバンドが入った袋をつまみ上げ、封を切った。レイは鏡越しに、ヘアバンドを口に咥えたシンの動きを観察する。シンは、レイの髪を両手で梳いて一つに纏め、咥えていたヘアバンドを手に取り、左手で掴んでいた髪を、つむじのあたりの高さでくるりと結わえた。
「ずいぶん、手慣れているんだな」
 まえに、幼い妹の髪をいじって遊んでいたから三つ編みとポニーテールは得意だという話を彼から聞いていたが、実際に、妙に慣れた手付きを目の当たりにして、胸の奥の方に小さな棘が刺さったような、微かな痛みを感じた……ような気がした。
「マユに、嫉妬してる?」
 シンは、レイと鏡越しに視線を合わせて笑い、露わになったレイの首の後ろにキスをして、シャワールームの扉の向こうに姿を消した。
 レイも、ジーンズと下着を脱ぎ捨て、シンの後に続く。シャワーヘッドを手にしたシンは、サーモスタット付きのコックをひねり、ヘッドから迸る湯を床に流して、冷えた足元を温めた。
湯気が立ちこめる狭いシャワールームの中でシンと向かい合って立ち、同じ高さにある彼の顔を見つめた。
地上とプラントで離れて暮らすようになってから、はじめての逢瀬。彼の顔つきが、出発前の、まだ少年っぽさを残していたものから、妙に男臭い、見慣れないものへと、劇的な変化を遂げている。いつも傍にいられたならば、日々の緩やかな変化を感じ取ることが出来ただろうに……。
レイは、ともに過ごすことが出来なかった時間を歯痒い気持ちで惜しみつつ、シンの胸に体を預け、彼の頬に唇の端を寄せた。
 シンの背中に手を回し、しなやかな筋肉を指の先でなぞりながら、彼の成長を確かめる。また、少し逞しくなったようだ。
シャワーヘッドから迸る湯のぬくもりが背中を包み、レイは、シンの耳元でそっと息を吐く。シンの耳朶に熱い息を吐きかけ、軽く歯を当てると、彼の背中がぴくりと震え、下半身のものが硬く立ち上がってくる。
「……反応が早いな」
 笑いを滲ませた声をシンの耳朶に絡み付けると、
「わかってやってるくせに」
 彼は囁いて、レイの耳の形をなぞるように、熱くぬめった舌を這わせた。
「……は…っ」
 弱い場所を集中的に責められて、薄く開いた唇の隙間から甘い声が洩れる。耳元で響く、しだいに荒くなっていく吐息と、狭いシャワールームに響く潤んだ水の音に、頭の芯がじんと痺れ、レイは背中を震わせた。
「寒くない?」
 耳元で問われて、レイは、小さく首を横に振る。
「熱いくらいだ……」
 掠れ声で答えて、レイは、密着していた体を僅かに離し、真っ直ぐにシンの顔を見つめ、彼の唇を自分のそれでそっと包み込んだ。
 軽い音を立てて唇を解放し、シンの熱いぬめりを誘い出すように、舌の先で彼の唇のかたちをゆっくりとなぞっていく。上と下の唇の隙間から覗いたシンの舌の先に、再び唇を重ねることなく、舌先だけを絡み付けると、彼の体に触れていた自身のものがしだいに熱を持ち、首を擡げていった。僅かに腰の位置をずらし、すでに勃ち上がっている彼のものに、己の熱の塊を擦り付け、羞恥に頬を赤らめながら、誘うように、ゆるりと腰を揺らした。
「……やばい」
 顔を近付けたまま、シンは低く呻く。
「何が、だ?」
 離れていこうとするシンの唇を追いかけるように軽く触れ合わせながら問うと、
「このまま、ここで、ヤっちゃいそうだ」
 シンは、レイの唇に軽くキスをして、ゆっくりと体を離した。
「楽しみは、あとに取っておこう」
 そう言ったシンは、背中に回していた腕を解き、持っていたシャワーヘッドをレイに押し付けて、スポンジに落としたボディソープを泡立てる。
泡だらけのシンの指が顎の先に触れ、レイは促されるままに、顔を上へ向けた。サクサクとした泡の感触が首筋を滑っていく。肩から腕、指の先まで丁寧に擦られて、レイは目を瞑り、微かに震える息をゆっくりと吐き出した。両の腕から胸元へ、そして、優しく体を擦りながら、少しずつ下のほうへ移動していくシンの手を、レイは、そっと両手で包み込む。
「ここから先は、自分で洗う……」
 薄く目を開けたレイは、どうした?と、問うような視線をこちらへ向けたシンを見つめて、彼の手からスポンジを奪い去ろうと、指に力をこめた。
「遠慮しなくていいのに」
 レイにスポンジを奪われたシンは、口の端を上げて、レイの体を壁際に押しやった。レイの手からシャワーヘッドを受け取り、壁のホルダーにそれを固定して、コックを捻り、シャワーを止めた。
「あ……っ」
 ポンプ式の容器から掌にたっぷりと取ったボディソープを、熱を燻らせた下腹部に擦り付けられて、レイはシンの肩を押し、腰を捩る。
 シンは、勃ち上がったレイのものを握り、くちくちと、いやらしい音を響かせて、男をよがらせる絶妙な力加減で、手を上下に滑らせた。
「シン、っ。……悪ふざけが過ぎるぞ。……っ、ああっ」
 彼の責めから逃れようと身を引くが、背後の壁に阻まれて、体の動きを封じられてしまった。
断続的に与えられる快楽に膝が震え、薄く開いた唇の隙間から甘い声と息を洩らしながら、レイは、シンの肩に頬を寄せ、体を預けた。頂点へ達する直前に、擦り上げていた手を止められて、レイは、悔し紛れに、彼の冷えた肩先に歯を立てる。
「いてっ」
 びくりと肩を震わせたシンは、レイの耳元でくすりと笑い、隙が出来たレイの手からスポンジを奪い返した。
シンは、そっと体を離してレイの足元に膝を付き、顔を上げて、こちらへ視線を向ける。
「レイ……足を──」
 足首を軽く掴まれて、シンに促されるままに、彼の腿に足を乗せ、壁に背中を付けた。足の指とその間を一本ずつ丁寧に洗われて、レイは、くすぐったさに身をよじり、腰を引いた。足の甲、裏側、ふくらはぎへと、下から順に磨き上げられて、くすぐったさと気恥ずかしさが綯い交ぜになり、レイは細く息を吐き、シンの目の前にさらけ出したままの熱の塊に手を当てて、そっと隠す。
スポンジを持ったシンの手が太腿の付け根まで到達し、もう片方の足も同じように撫で上げられて、レイは腰を引いたまま、お尻をきゅっと締めた。
「レイ、次は、後ろ向いて」
 抵抗する気力がすっかり失せてしまっていたレイは、シンに言われるままに後ろを向いて、壁に手を付いた。
スポンジと泡の柔らかな感触が、ゆっくりと、首の後ろから背中を下り、お尻のふくらみを丸く包み込む。お尻の割れ目をなぞるように、ぐっと深く指を差し入れられて、レイは額をシャワールームの壁にくっつけ、震える息を吐き出した。
 シンは、お尻の割れ目に浸入させた中指の腹を、レイの後ろの腔に当て、円を描くようにほぐし始める。
「……ん、っ……ぁ…あっ」
 思わず洩れ出た声が、狭いシャワールームの中に、妙に大きく響いた。こちらの反応を楽しんでいるようなシンの気配を背中に感じながら、レイは眉根を寄せて、「やめてくれ……」と、細い声で哀願する。
「腰……動いてるのに?」
笑いを滲ませた低い声でそう言われて、はじめて、言葉とは裏腹に、みだらに揺れている腰に気付き、レイは、羞恥に顔を赤らめた。
後ろの腔を執拗に撫でられ、そこを中心として、波紋のように体全体に広がっていく快楽に背中を震わせて、上げてしまいそうになる甘い声を、唇に手の甲を当ててようやく噛み殺す。
ぎゅっと目を閉じると、指を使って解された後の行為とそれに附随する痛みと悦楽が、この一年の間、シンを求めて止まなかった体に生々しくよみがえり、もうすでに熱を持っているレイのものが、触れただけで弾けてしまいそうなほどに大きく膨らみ、先端に透明な粘液を滲ませて、天井を仰いだ。
「……終わり。先に出て、待ってて」
 シンは、シャワーヘッドを握り、コックをひねって、泡まみれになったレイの体を丁寧に洗い流した。
今、彼にされたのと同じことを仕返ししてやろうかと考えたが、そうしてしまったら、今度こそ、理性を失ったシンに、ここで犯される羽目になるだろう。先ほどシンが見せた、ベッド以外の場所で繋がることを嫌がってきた自分への気遣いを、自ら無に帰すことはない。
深く息を吐き、シンと向かい合ったレイは、彼の口の端に唇を寄せ、シャワールームを出た。
 濡れた体を拭き、タオルを腰に巻いてベッドルームへ戻る。髪を留めていた小さなヘアバンドをはずして、シーツの上に置かれたままのローションとともにサイドボードの上に置き、広いベッドの真ん中に横たわる。
シンが持ち込んだロープの端を弄びながら、壁の向こうから洩れ聞こえてくる、微かな水の音に耳を傾け、レイは、そっと目を閉じた。


【つづく】


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