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足元のマットレスが沈み、シンの重さが近付いてくる。
レイは薄く目を開けて、口の端に溜まった唾液を舌の先で拭った。ほんの僅かな隙に、うたた寝をしてしまっていたようだ。レイはゆっくりと起き上がり、タオルの下で、まだ熱が燻っている股間を隠すように腰を引いた。
「始めようか。……膝立ちになってくれる?」
シンに言われるがままに、レイは、彼と向かい合い、マットレスの上に膝立ちになった。
シンは、傍らのロープを解き、二つ折りにしたそれの折り返しから二十五センチほど下に結び目を作り、出来上がった輪をレイの首に掛けた。
「……どうするんだ?」
鎖骨のあたりからウエストまでの間に、二つの結び目の瘤を、二十センチほどの間隔で作っていくシンの手元を覗きこみながら、レイは、問うた。
「上半身を、菱形の模様を作るように縛っていく……あと、手首と足首も縛りたいから、脚を思いきり広げてもいい?」
「……この、皎々とした明かりの下で、か?」
「眩しいなら、目隠ししてやるよ」
「そうじゃない。……明かりの下で見られるのが恥ずかしいと言っている」
「わかってる。でも、今日は譲らない」
そう言い切ったシンは、下を向いたレイの顔を覗き込み、睨むような視線を向けてくる。レイは、細く息を吐きながら、内心に舌打ちをした。その沈黙を了承と取ったのか、シンは嬉しそうに目を細め、口元を綻ばせた。
(この顔には、弱いな……)
レイは小刻みに首を縦に振り、シンの長めの前髪に触れ、梳き上げて、露わになった彼の額に唇を付けた。
レイの唇に、触れるだけのキスを返した後、シンは、ウエストの位置でもう一つ結び目を作り、二本のロープを左右二手に分けて、背後へ回していった。背後で交差させたロープを、きゅっときつく締められて、レイは、「あっ」と、微かな声を上げ、肩を震わせた。
交差させたロープを、また、前の方へ戻し、臍の前で結ばれた瘤と、そのすぐ上の結び目を繋ぐ二本の縦縄の真ん中にロープを通し、左右に引き分けて、肌の上に菱形の模様を作り出していく。
再び、後ろへ回したロープを締め上げられて、レイは、しだいに熱が籠もっていく吐息を、ゆっくりと体内へ押し戻した。
「こんなこと……どこで憶えてきたんだ?」
「内緒」
そう答えて笑ったシンは、レイの肌の上に浮かび上がっていく菱形へ向けた目を細め、「きれいだよ」と、レイに聞かせるともなしに呟く。
熱を帯びたシンの声が耳の奥にべったりと張り付き、体内で鳴り響く鼓動以外のすべての音が、綺麗に排除されていくのを、レイは感じていた。身じろぎするたびに、肌とロープの触れ合った部分が軋み、薄くひらいた唇の隙間から、微かな声が洩れる。
三つの菱形を作り終えたシンは、レイを正面から抱きしめるような体勢で、菱が崩れないように、レイの背後でロープをしっかりと結んだ。
きゅうきゅうと体を締め上げられるたびに、レイはぴくりと体を震わせ、腹の奥底から這い上がってくる熱く湿った息を飲み込む。ロープが触れて軋む部分から、今までに感じたことのない奇妙な熱が体内へ侵入し、体の中心で燻りはじめていた。
シンは、レイの背後に回り込み、背中で纏めたロープを引き上げ、首の輪っかに通したそれを、レイの首が絞まらない程度に強く引き下げて、背中で留めた。
「痛くない?」
シンの息が耳朶に絡み付いてくる。レイは肩を聳やかし、僅かに身を引いて、「ああ」と掠れ声で答え、頷いた。
「脚を投げ出して座ってくれる?」
シンに促されるまま、レイは、腰に巻いたタオルが解けないよう慎重に、マットレスにお尻を付けて、両足を前へ投げ出した。
「脚……開いて」
耳元で響くシンの声に背中を震わせたレイは、はあっと息を吐いて、曲げた膝を抱き、徐々に脚を開いていく。
レイの斜め後ろに膝を付いたシンは、レイの腕を軽く引っ張り、両の手首と足首を、片方ずつ、丁寧に細い布きれを使って縛りつけた。
最後に残った布きれで視界を遮られたレイは、目を瞑り、背後にあるシンの気配に寄り掛かるように、体を後ろへ倒した。意識が遠のいていくような、ふわふわと浮き上がるような感覚に身をゆだね、シンの胸の温もりを背中で感じながら、レイは首をひねり、彼の顎に鼻先を擦り寄せた。
視覚を奪われたことで、残された感覚が、しだいに研ぎ澄まされてゆくのがわかる。レイは、知っているものよりも濃い、シンの肌の匂いを鼻腔に満たし、体内に充満する湿り気とともにゆっくりと吐き出した。
顎に触れたシンの手の動きに抗うことなく首と体をよじり、彼の胸に深く身をゆだねたレイの唇の端に柔らかいものがあたる。レイは、シンを誘うように、薄く開いた唇の隙間から舌の先を覗かせた。
「縄酔い……しちゃった?」
縄酔い?──聞き慣れない言葉に、レイは首をかしげた。
「体を縛っている縄の感触と、縛られている自分に、うっとりして感じちゃうことがあるんだって。それが、縄酔い……いつも襟ひとつ乱さないレイのこんな姿、見られるとは思わなかった」
シンが口を動かすたびに、柔らかな感触が微かに触れ合う。ぴちゃり、と濡れた音とともに彼の口内へと絡め取られた舌を、自分では、もう、押さえることの出来ない衝動のままに彼のぬめりへと絡め付け、唇の隙間から甘い息を吐く。
こちらの口内を思うさま弄んだ、愛しい温もりが遠ざかっていく。名残惜しさに、「あっ」と、吐息まじりの声を上げて、レイは、シンの首筋に額を擦り寄せた。
「凄く……感じてるんだな、レイ。……アソコ、どうなってるのか、見てみたい」
言いながら、頬に触れたシンの唇が、顎のラインをなぞり、首筋を這う。シンの腕に支えられた体がゆっくりと後ろに倒れ、冷えたシーツが背中に触れた。
緊縛され、横たわる体の脇を移動するシンの動きに合わせて、マットレスが沈み、軋む。
無理矢理開かれたまま閉じることさえままならない脚─腰に巻いたタオルの上から、股間の熱を確かめられて、レイは、「あっ」と小さな声を洩らした。
ふいに抱え上げられた腰が浮き、何が起こったのかを理解する前に、腰の下に枕が差し入れられる。腰骨の出っ張りに引っ掛けていたタオルの結び目が解け、天井からの皎々とした明かりの下に、恥ずかしい部分をさらけ出したレイは、熱が集中していく顔を背けて、下の唇をきゅっと噛みしめる。
「すっげぇ…いっぱい、先走りが洩れてる──」
感嘆の声を上げたシンは、レイの膝の裏に手を入れて、ぐっと前へ押した。膝が胸に寄せられ、シャワールームでの愛撫によって淫靡な色を点した蕾が天井を仰ぐ。
「──思ってた通り、すごく綺麗な色だな……。ずっと……レイのココ、明るいところで見てみたかったんだ。乳首も、アソコも……ココも、すっげぇ綺麗なピンク色……」
上を向いたお尻の割れ目に熱く湿った吐息がかかり、レイの背中がびくりと跳ねた。
「あ…っ……ぃや、だ……」
自分でも驚くほどに鼻にかかった甘ったるい声が、腹の底へ沈めてきた熱い吐息とともに溢れ出る。シンのぬめりがお尻の割れ目を這い、レイは、反らした背中を硬直させた。
「ん、っ……あ…あっ……はぁ…っ……」
後ろの腔を舐め回す放縦な舌の動きに翻弄され、淫らに揺れる、腰。
「もっと……」と言いかけたレイは、震える息を噛み殺し、口をつぐんだ。たとえ、この身を縛る縄の軋みに酔っていたとしても、そんなこと、口に出せるはずもない。
「レイのココ……ヒクヒクしてきた」
シンの指先が、ひくつく襞々を丸く押し広げるように撫でていく。眉根を寄せたレイは、顎を上げ、小刻みに息を吐き出しながらかぶりを振った。開き放しの唇の隙間から洩れ出る声はどこまでも甘く、艶やかだ。
「レイ……欲しい?オレが、欲しいんだろ?……ねぇ、言ってよ、レイ。……クダサイ…って。オレが欲しい、って……言えよ、レイ」
欲望を押し殺した低い声が、足元で響く。厚みのある舌で、ひくつく後ろの腔から蟻の門渡りを舐め上げられて、レイは、「ひっ……」と短い悲鳴を洩らした。シンは鼻先に垂れ下がった袋を口に含み、舌の先で転がす。くすぐったさに身を捩ったレイは、「欲しい」と口の中で呟き、シンの気配がする方へ顔を向けた。
「欲しい?」
目隠しの向こうで、シンが笑ったのがわかる。
「ああ……」
乾いた唇を潤すように舌でなぞり、小さく頷くと、シンは、「ふうん」と気のない返事をして、再び、足の間に顔を埋めた。
「……シン…?」
「何?」
「──て……」
「何?聞こえないよ、レイ」
「……れて。……入れて…くれ……シン。……焦らすな」
入れて──普段のセックスでは決して口にしない言葉──吐き出したその瞬間に、屈辱に打ち拉がれるどころか、体の芯がさらに熱を持ち、硬く膨れ上がっていくのを感じる。
レイは、シンが与える快楽と熱に熟んだ目を、目隠しの向こうへ向けて、彼のシルエットを探した。
高々と持ち上げられていた腰を枕の上へ降ろされて、レイはほっと息を吐いた。
右の手首と足首とを緊縛していた布きれが解かれ、自由に動かせるようになった手で、シンの気配を探し、指の先に触れた彼の肌を撫でる。互いの掌が重なり合い、指を祈りの形に絡めた。いつの間に、こんなに分厚い手になったのだろう? レイは、シンの手をぎゅっと握り、彼の体を引き寄せた。
シンは、レイに拘束されていない方の手で、左手首と左足首を緊縛している布きれを解いた。
顔の両脇のマットレスが沈み、シンの影で目の前が翳る。目隠しの布越しに、柔らかな感触が瞼の上に落ちてきて、レイはそっと目を閉じた。
「……お前は今、どんな顔をしている?」
軽い音を響かせながら、顔中にキスをするシンに、問う。
「どんなふうにレイをいじめてやろうかって…すごく……凶悪な顔をしてる、かもしれない」
「……見て…みたい……」
「だめだよ」
「……なぜ?」
「恥ずかしいから。……レイだって、何も見えない方が燃えるだろ?」
「……そんなことは……」
「嘘つき。……普段、『入れて』なんて絶対に言わないくせに」
絡め合っていた指の先にキスをして、体を起こしたシンは、解いた手をレイの足の間へ誘導した。
蓋を回し開けるような微かな響きが耳を掠めたその瞬間に、お尻の割れ目に冷たいローションをたっぷりと擦り付けられて、レイはびくりと体を震わせた。
「自分で広げてくれる?」
シンの言葉に、息を呑む。
「……いつも一人でやってること、オレに見せてよ」
「……そんなことは……しない」
「そうなのか?じゃあ、初めての経験だな。……きっと、クセになるよ」
シンは、レイの閉じかけていた太腿の内側に唇を付けながら膝に触れ、再び、脚を大きく開かせる。レイは細く息を吐き、ぎゅっと目を瞑って、躊躇いながら足の間へ手を伸ばした。
ぬるりとしたお尻の割れ目を中指でなぞり、恐る恐る、後ろの腔の襞々に指の腹を這わせ、丸く撫でる。
シンと離れて暮らすようになってから、彼を想い、昂ぶっていく体を鎮めるために、硬くそそり立つ己のものを手で慰めることは今までに何度か経験していたが、後ろに指を這わせたことなど、一度もなかった。
レイは、下の唇を噛み、手に力をこめて、中指の先をつぷりと体内へ侵入させた。そっとかき回し、体温と同じ熱さになったローションを馴染ませるように、入口の内側を指の腹でそっとなぞると、えもいわれぬくすぐったさが、ぞくぞくと体の奥の方を震わせる。
慎重に中指の根元まで挿入し、腹側の内壁を擦り上げると、ふいに、小さなしこりのようなものに指先が触れ、その瞬間に、レイは顎を上げ、「あっ」と、掠れた甘い声を上げた。
(……そういうこと…だったのか……)
体内のしこりを指の腹で撫でながら、レイは、唇の端を微かに上げた。指を使って責めるときも、欲望の塊を挿入したあとも、シンは、寸分違わず同じ場所を擦り上げてくる。そのことがずっと不思議で仕方がなかったのだが、自身の体内に初めて触れて、彼は、この『しるし』を頼りに責めていたのだとようやく理解することが出来た。
レイは、熱く湿った息を小刻みに吐き出しながら、体内に埋めた中指の抜き差しを繰り返す。自身に与え続けていたくすぐったさが、しだいに快楽へと変わり、太腿の内側から足先までがじんと痺れ、徐々に膝が閉じていった。
「あぁ…っ……」
ぴったりと閉じた両膝の、裏側に手を差し入れられたレイは、声を上げ、大きく開かれた脚の間にシンの視線を感じて、腰を捩った。身じろぎするたびに、上半身を拘束するロープが軋み、レイは、また、掠れた声を洩らす。
シンに見られている─そう意識するだけで、鼓動が早くなり、腹の奥からせり上がってくる息は熱と湿り気を帯びていく。
(シン……)
口の中で呟いたレイは、右の中指を体内へ埋めたまま、左手を伸ばし、膝の裏に差し入れられたシンの手を強く握った。
(……シン)
柔らかくて温かい粘膜を擦り上げていた中指を体内からそっと抜き、お尻の割れ目を濡らすローションを馴染ませた人差し指と中指の二本の指先で、もう充分に解れている襞々を、シンに見せつけるように、丸く撫でた。薄く開いた唇の隙間から細く息を吐き、二本の指を体内へ埋めて、ゆっくりと抜き差しをすると、しんとした室内に、濡れた皮膚と粘膜とが擦れ合ういやらしい水音が微かに響いては溶けていく。
「……シン──」
口の中で呟くだけだった彼の名前が、切ない響きを伴って唇の隙間から溢れ出る。
「…っ……あっ……シン……シ、ン……」
レイは目一杯脚を開き、記憶の中の、後ろの腔を出入りする熱い塊の感触を繰り返し反芻しながら、自身の、最も感じる場所を擦り上げ、腰をくねらせた。
「ぁ…あっ。……ん、ぁっ……は…っ」
肉体は拘束されているのに、心だけは、どんどん自由になっていく。このまま続けていたら、指の動きだけで頂点へ達してしまうかもしれない。けれど、それだけでは、きっと、物足りない。
「──シ、ン……来て、くれ……頼む…から……もう、焦らす…な……」
欲しい──シンのものが、欲しくて堪らない。
「あ…っ……シ、ン……、シ…ン」
シンの熱を求めてひくつく後ろの腔の入口に、体内に埋めている指の二番目の関節を滅茶苦茶に擦りつけて、甘ったるい声を上げ、体を震わせながら、彼の手をさらに強い力で握った。
【つづく】
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